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5つ星のうち 5.0
発想トレーニング本 上級編, 2003/12/11
おもちゃ箱の中身はえてして乱雑だ。だがその乱雑さゆえに様々な可能性や組み合わせが秘められているともいえる。本書は29もの思考法が入ったおもちゃ箱である。あまりに乱雑なおもちゃ箱では大人の頭には少々辛いので、ある程度の筋道や系統立てが必要と思われるが、その点本書は全く心配には及ばない。おもちゃ箱にあるような、秘められた可能性を驚くほどシステマチックに具現させる思考法を紹介している。各々の思考法にはユニークな名称が付いており、その解説通りの手順を踏めば、ばっちりいいアイデアが浮んでくる仕組みになっている。最後は無意識の領域へ語り掛け、そこからアイデアを汲み出す方途まで示している。ここまでくると眉につばを付けたくなる方も多いだろうが、要は融通無碍な組み合わせの妙を追求し体験することである。書中、著者は書くことの大切さを再三強調している。書かなくては見えてこないし、頭も働いてくれないという。原書と比較し、割愛した章もあるが、内容は盛りだくさん。読みやすさでは、原書より良くまとまっている珍しい訳本である。私は本書の思考法をチャートにして利用している。悪筆が辛いが、書いている。アイデアを整理するだけで十分なところで、意外な発見があるのが嬉しい。ちなみに原著のタイトルは "THINKERTOYS"で、割愛された二つの章には、グループで考えるためのブレインストーミングや、エドワード・デボノ発案のPMI(Plus Minus Interesting)などが紹介されている。
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12 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
封建社会に生きた女たちの物語, 2003/10/30
武家の女たちを描いた短編集である。力強くも美しい、まさにその通りの日本の女たちである。聡明な女が自らの幸せを投げ打って、自分の人生を他者に捧げるとき、利己主義に首まで浸かっている現代人は、その背後にあるカラクリをなんとか暴こうと躍起になる。しかし本書に登場する封建社会に生きた女たちにそうしたカラクリを探し求めたところで、結局は己の先々の不幸を予感しつつも納得し、時には甘受し、自らの意志で人生を切り開いていくという決死の覚悟を見せつけられるだけである。彼女たちの力強い志と夫への信頼と愛情、家族への深慮は、下衆の勘ぐりなど全く受けつけない迫力をもっている。これを「時代小説」として、過去の遺物と片づけるのは簡単だろう。しかしこの女たちの物語に涙する男女もいることを思えば、時代を超えて訴えかけてくる理があるに違いない。聡明な女は信頼に足る男にしか付き従わないということが、ごく当たり前に書かかれているところにも凄味を感じる。本書の女たちは、その信頼関係に命をかけたといっても過言ではない。読後は目を真っ赤に腫らしながらも襟を正した次第である。
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5つ星のうち 5.0
論理思考の次に, 2003/10/13
水平思考の発案者エドワード・デボーノの名著"Six Thinking Hats"の邦訳。 思考法のパイオニアであるデボーノ博士の集大成的著作である。 以前『デボノ博士の「6色ハット」発想法』というタイトルで 訳書が出ていたが、この思考法は会議で使うのが最も効果的と みたのか、本書では『会議が変わる』となっている。 6つの色帽子はそれぞれデータや創造性、感情などを意味し、 各色の帽子をかぶったときにはその帽子の思考をする。 感情さえも思考に含めてしまうところはほんとうに画期的だ。 このパワフルな思考法は無論、会議だけでなく、問題解決の手段として 一人で利用することもできる。 博士によれば、従来の論理思考は「車の左前輪のようなもの」だという。 左前輪は車を走らせるうえで不可欠なパーツに違いないが、 車のすべてではない。左!前輪だけで車が走るのではないからだ。 つまり論理思考だけでは不十分だというわけである。 本書では6つの帽子の使い方、博士の提唱する水平思考の わかりやすい説明も述べられているので、はじめて氏の著作に 触れる方も安心して読めるだろう。私自身、原書、訳書の計3冊を読んだが、 そのたびに新しい刺激を受け、論理思考だけが思考法のすべてではないことを痛感させられる。 頭にいい刺激が欲しい方必読の一書である。
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5つ星のうち 4.0
予想をはるかに超えた効果, 2003/10/5
グループで物事をすすめるとき、プランや成果を数値化 することになんら違和感はない。むしろ当然のことである。 しかし自分の行動をすべて数値化・定量化し、プランを立て、達成度を知ることは 存外できていない。数字を使うことには絶大な効果があるだろうことは わかるのだが、少々難しいイメージもあり、億劫になりがちだ。 本書は、数字を使って具体的に考えるためのアイデアが 様々紹介されている。コンサルティングに携わる著者の 「気分」や「雰囲気」、「質」までも数値化して感覚を研ぎ澄ますという 熱意には感動すら覚える。響くところは読者それぞれだと思うが、 自分のスケジュールやプランを見直す大きなきっかけにはなるだろう。 わたしも私家版の日毎チェックリストを作成利用してきたが、 そのレベルたるや著者の言う最低の「第一段階」だった。 つまり文章のみで数字が全くないチェックリストで、 その効果が感じられないものだった。著者自身もこの段階からはじめて 最終「第七段階」までチェックリストの改良を重ねたという。 わたしのリストも今ではチェック項目すべてに数字が入っている。 すると、頭の中で計算がはじまり、何をどうすればよいかが「見えて」くるので 無駄な行動が無くなってきた。それが心地よい。 本書は数字で考える人生術といってもいい好著である。
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5つ星のうち 5.0
まいった, 2003/9/21
合気道を曲がりなりにも修行して、 得たものはといえば、気の実態もわからずに 武道修行をやめたみじめな自分自身だった。 もう20年も前の話になる。 気が「ki」と英訳されて外国人の指導にも 使われていると知ったときは、なんとも複雑な 気持ちになったものである。昔は呼吸力という言葉を使って、 その本質が一層ぼやけたままで教授されていたように思う。 そんな苦い経験が完全に忘れ去られようとしたとき、 本書に出会った。はっきり言って衝撃だった。 著者が気の要諦をたった4つの箇条書き、4行で言い表していたのである。 正直言って口惜しかった。その説明が明快であっただけに 口惜しさは倍増した。「そうだったのか」と今更ながらに 納得したのである。著者が不世出の??術家だったから本書が 世に出たと言えばそれまでだが、その根底に徹底した合理性が あるのは何人も否定できないだろう。何事も「理法」からは 逃れられないのである。もしわたしが再び合気道修行を始めるとするなら、 迷わず著者の門を叩くに違いない。『気の確立』を併読されれば 感銘も尚深くなるだろう。
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5つ星のうち 5.0
誇張ではない実用性, 2003/9/15
「実用本」と呼ばれる本の中には、変な理屈で読者をケムに巻いたり、 ひとりよがりな体験談や宣伝に終始して使い物にならないものもあるが、 本書は違う。速く書けるワザをしっかり伝授してくれる。 本書の目玉はいわゆる「中根式」の速記にあるのではなく、 タイトル通り「スピードメモ法」と呼ばれる速書き法にある。 「ツキイチクン」の6文字及び拗音・促音等を省略する いくつかのルールだけで本当に数倍速の筆記を可能にする。 その速さたるや「3倍」どころではない。 スピードメモ法は速記とは違い、仮名・漢字・数字を使うのでとっつきやすく、 また規則を知らない人には記号のように見えるので、秘密のメモにも適している。 実際私もあらゆる場面でこのメモ法の恩恵を受けた。ちょっとした 逐次通訳に使えるのは興味深い発見だった。他のメモ法(マンダラ、マインドマップ等) と組み合わせれば、自分の思考の速さやスタイルにあった発展的メモ法が可能になる。 余力のある方は本書の後半で紹介されている「中根式」の文字一覧を覚えても有益だろう。 尚、同著者による『速書き健康術』という本でも同じ速書き法が紹介されているので、 そちらもお薦めである。
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5つ星のうち 5.0
質問術再考, 2003/9/6
巧みな質問術は人生を変える。これは疑いのないことだ。 聞き方ひとつで信じられないような情報を得ることもあれば、とんでもない災難を被ることもある。裁判などの重大な状況では質問術の巧拙が人の運命をも左右しかねない。最近ようやく和書でも「質問術」に関する本をちらほら目にするようになった。遅きに失した感はあるが、無いよりはマシである。しかし総じて内容は薄い。良書が待たれるが、待つ時間の無い方には本書がお薦めである。論理的思考法を基本にした問題分析や議論の組み立て方をはじめ、的確な質問をするための手法が紹介されている。なかでも「VALUE」に関する章を設けて論点を明確に把握する足がかりを示しているのがいい。この価値観の衝突や価値判断という視点を持たずして、いい質問が思い浮かぶはずも無く、空疎な質問を浴びせたところで、何らの意味も付加価値も生まれない。啓蒙書のレベルでこうした視座を示せるところはさすが「洋書」というべきか。内容は少々アカデミックだが、よくまとまっていて読みやすい。「質問」の本というよりは、よい質問をするための思考訓練書と考えたほうがいいかもしれない。しかしこのような思考訓練を経ずに、即興的な鋭い質問などは望むべくも無いだろう。辛辣な質問に「このやろー!」とすごむ政治家や、いい結果を出せなかったアスリートに説教をするテレビレポーター、政治家に愚にもつかない質問をして答えをはぐらかされるインタビューアーなどを見るにつけ、我が国における質疑応答の現状を思い知らされるが、せめて公共の電波にスガタカタチや声が乗る人々くらいは本書を参考に質問の仕方を研究していただきたいものである。
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5つ星のうち 5.0
アニーの変貌, 2003/8/11
アニーはソロデビュー作の『DIVA』で母になった。計り知れない深さと温かみを持つ彼女の歌声が哀しみを歌った。その時、アニーは艶やかな色を身にまとった美しい女性だった。そしてソロ3作目の本作で、アニーは一人の人間になった。虚飾を剥ぎ取った真っ白なメイクで、中性的なオーラを放つ彼女は年齢さえも超越してしまった。「人生の本質的な問題に向き合う、成熟した一人の女性」として自らを表現したアニーの、伸びやかな歌声と力強いビート、ままならない現実に苦しみながらも前を見据える歌詞は聴く人を勇気づけてくれるだろう。アニーのファンなら、そして『DIVA』を聴いてのっぴきならない感情に向き合った人なら、このアルバムの歌もまた心の奥底に響き渡るに違いない。
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10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
小作品の魅力, 2003/8/6
天衣無縫なメロディーが美しいアルバム。 ダンサブルな VERY や NIGHTLIFE とは好対照のアルバムといえるだろう。 クールで淡い歌声と無機質な音の重なりで描き出される深い叙情性は魔法としかいいようがない。 ペットショップボーイズにとっては無機質な音も、打ち込みドラムの音も、感性を表現するための 手だてでしかないのかもしれない。しかしその情感はあまりに繊細だ。 このアルバムでは重い現実と自己との相克が歌われている。 少し疲れた夜に Being boring に歌われる、時の移ろいに身も心もゆだね、 To face the truth の恋の追憶にひたれば、ふと我を忘れて遠くを見詰めてしまうだろう。 My October symphony の厳かな美しさには言葉を失ってしまうかもしれない。 小作品だからこそいいのだとつぶやいてしまいそうな、そんな一枚。
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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
タカをくくるとバチが当たる一書, 2003/7/28
いわゆる恋愛論である。「どうせ恋愛論なんて・・・」 などとタカをくくってかかるとかなり痛い目にあう一書である。 何しろ執筆陣がそうそうたるメンバーである。 ハナから森瑶子のエッセイが登場、私などはこれだけで腹一杯になってしまうほど。 倉橋由美子の「六つの手紙」では、華麗なまでの憎まれ口で男の愚鈍さを鋭く抉り、 全身全霊をこめて愛する男への思いを綴る。この激しい落差は男を恐怖に陥れるに違いなく、 そこに描かれる男と女の行き違いは、ため息さえも出ないほどに絶望的だ。 瀬戸内寂聴が綴るのは本当の自由を知る女にとっての愛と孤独。 伊藤整は「愛」という言葉に隠された欺瞞をあぶり出す。坂口安吾は 「人の魂は、何物によっても満たし得ないものである」と言いつ!つ 一見至極真っ当な恋愛論を展開している。 と、まるで暗闇のジェットコースターにでも乗せられたような ドキドキいっぱいのエッセイが詰まった一書である。読ませる内容だけに、 値段が下がるほどお買い得になると申し上げておきたい。
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