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京セラ セラブリッドフライパン26cm CFC-26-BK
京セラ セラブリッドフライパン26cm CFC-26-BK
価格: ¥ 3,946

1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0 実用性は標準的。趣味性はちょっぴり残念。, 2013/5/17
Amazon Vine 先取りプログラム™ メンバーによるカスタマーレビュー (詳しくはこちら)
京セラ製のハイテクフライパンを試用させていただいた。本シリーズ「セラブリッド」は調理面をセラミック層で覆うことにより、ノンスティック(焦げ付き防止)効果と高い熱伝導性、そして耐久性を兼ね備えた「次世代のフライパン」とのこと。他にも「アルミ素材による軽量化」や「IH対応」など多くの特長を有している。

■製品の成り立ちについて:
パン本体はアルミ合金製で、分厚い底面にはIHの電磁誘導に反応するステンレス鋼鈑が鋳込まれている。外装は底面の放射状パターン(熱伝導効率を高める工夫)も含め、全面ベージュ系のメタリックカラー仕上げ。

このページに記載のない寸法は、調理面(底面)のサイズが直径20センチ、把手の樹脂グリップ部は長さ15センチ。重量は実測で960グラムだった。
調理面を覆うセラミック層の厚みは公式サイトにも記載が無いが、シリーズ他機種では「30マイクロメートル」とある。おそらく本品も同様だろう。1ミリの1/30以下という極薄層だが、金属へらが使える点など、セラミックならではの高硬度が使いやすさに結びついている。

■実際に使ってみると:
調理面底部の平面性はよく保たれており、調理油などが偏って溜まることはない。「セラブリッド」の初期製品ではこの面でやや問題があったようだが、それを改善するために本品では鋳造方式を変更したらしい。

樹脂で覆われたグリップ部には持ちやすいカーブが与えられ、またグリップ断面の楕円形状も掌に馴染みやすい。底面から側壁につながる部分のカーブもスムーズ、重量バランスも適切で、深底の形状と相まって「あおり調理」はやり易い。

この種のパンに期待される「焦げ付きにくさ」はもちろん優秀。ただし「下ろしたて」のノンスティック加工品に少量の油を併用した場合、ここで大きな差はまず出ない。問題はこの初期性能がいつまで持続するか。これは今後の推移を見守りたい。

■他のフライパンと比較して:
拙宅ではフライパンをサイズと素材違いで計5種使っている。このうちノンスティック加工品は3種類。ティファールの最上級機種(フランス製でアルミ製、数年前に製造終了)とビタクラフトの「カンザス」(米国製でステンレスとアルミの多層構造)、それに近所のスーパーで購入したノーブランド品(中国製でアルミ製)である。

価格を除外して比較すると、ノンスティックの耐久性に大きな差は無い。拙宅では調理時の温度に気をつけていること、調理へらなどは木製またはナイロン製に限定していること、そして調理前後の急激な温度変化を避けているため、数年程度では違いが出ないのだと思う。たぶん本品も同様だろう。

実用面で差がつくのは収納性で、ティファールとビタクラフトは底面外装のカーブが滑らかなため重ねて収納できる。この点で本品はノーブランド品同様に「切り立った角が下のフライパンにダメージを与える可能性がある」。ここはIHとの兼ね合いで難しいところだが、出来れば改善をお願いしたい。

そうした違いは別として、趣味の道具としての「つくり込み」に注目すると、本品はやや面白味というか、魅力に欠ける。これは外見がちょっと無骨であることに加え、パンと把手をリベット接合にしていることが大きいと感じている。
調理面に突き出たリベットの頭は、調理カスが溜まりやすいだけでなく、見た目があまりよろしくない。アルミ合金は溶接コストが高いため、この方式で済ませる機種が多いのだが、本品と価格同等のティファールはアルミ製でもきちんと溶接で仕上げている。

たかだか三つのリベットの頭、しかし趣味の料理人には見過ごせない「痘痕(アバタ)」かもしれない。そんなところで印象を落とすのは、損だと思う。

Asor
Asor
Graciela Iturbide著
エディション: ハードカバー
価格: ¥ 5,829

5つ星のうち 5.0 心象ロードムーヴィーへの誘い。, 2013/5/11
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
レビュー対象商品: Asor (ハードカバー)
ミステリアスで魅力的な写真集。作者のグラシエラ・イトゥルビデ(1942-)はメキシコの女流写真家で、日本での知名度は高くないが本国および欧米では高い評価を得ている。これまでに数多くの作品集を出版しており、本作は独STEIDL(シュタイデル)社からの二冊目。ちなみに一冊目は2008年度のハッセルブラッド・アウォード受賞作品を収めたGraciela Iturbide: The Hasselblad Award 2008である。

収録作は全115点。見開きの右ページに1点ずつ掲載(例外あり)されており、すべてスクエアフォーマットのモノクロ作品が、ロードムーヴィーのような趣きで並ぶ。それぞれの作品がいつどこで撮られたかは不明(本書は表紙と扉、それに奥付を除き一切の文字が記載されない)、場所を知る手がかりもほとんど無いが、数点は中部イタリアの「怪物公園」ボマルツォ庭園で撮られている。

そうした掲載作品の大半は、実は他の作品集に収録済。それらと対照すれば1990年から2005年の作品群ということが分かる。つまり本書はイトゥルビデの懐古集なのだが、たんに過去の作品を並べただけではなく、写真の配置や並び順にストーリー性が感じられるところがミソ。それは表紙の壁に穿たれた穴(ステレオ写真のようにも見えるが立体視はできない)に明らかで、これはマジカルでミステリアスな心象ツアーへの扉なのである。

掲載作のもうひとつの特徴は、人の姿がほとんど見えないこと。イトゥルビデは人物写真の名手でもあり、これまでの作品集でもそれが大きな比重を占めていた。本書はそれを排除することで、この作家の別の面を見せている。どちらが表でどちらが裏か、それは写真における現実と虚構を読み解く試みのように無意味なものなのだが、読者を徒労に誘う仕掛けは見事なものである。

なお本書は印刷も素晴らしい。すべての作品は三色刷りで印画紙のトーンを注意深く再現しており、さらにマットな用紙は全面黒刷りという凝ったもの。黒地の厚紙にマット系印画紙を貼り付けたような仕上がりは、手作りのポートフォリオにごく近い。この優れた印刷効果は本書の価値をさらに高めていると言えるだろう。

また本書にはマニュエル・ロッチャ・イトゥルビデ(作者の息子の音楽家)制作によるCDが付属。ノイズと電子音とアコースティック楽器による演奏をミックスした作品で、これを写真と絡めてどう捉えるかは微妙なところだが、視覚も聴覚も一切の説明がなく「ただ提示される」ところが面白い。深夜にページをめくる際のBGに使えば、かなりディープな世界に浸れるはずだ。

TASCAM DSPミキサー搭載 96kHz対応 USB2.0 Audio Interface US-322
TASCAM DSPミキサー搭載 96kHz対応 USB2.0 Audio Interface US-322
出品者:イケベ楽器店
価格: ¥ 11,799

4 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 分かりやすい機能とクールなデザイン。DTM入門機として推奨。, 2013/5/6
Amazon Vine 先取りプログラム™ メンバーによるカスタマーレビュー (詳しくはこちら)
TASCAM製のDSPミキサを試用させていただいた。使用環境は「MacBook Pro 2.53GHz Core 2 Duo (Mid 2009)」、メモリ 8GB、MacOS 10.6.8。DAWソフトは「Logic Pro 9.1.8」を使用している。これまでのDTMワーク(主にエレベとアコギを録音)には「M-AUDIO Fast Track」を常用しており、以下のレビューもその機種との比較で記した。

■ミキサ機能:
宴会場やイベント会場などの常設品と同様の感覚で使える、常識的だが直感的に分かりやすいミキサー機能を搭載。DTM初心者も含め、万人に使いやすい機種と感じた。
特に印象が良かったのがマイク入力。XLR接続ではコンデンサマイクに電源供給が可能で、これは昔のミキサなら中級機以上の機能だ。しかも本機の電源はUSB供給できわめてシンプル。
搭載エフェクトとしては、Hall、Room、Live、Studio、Plateの5種類のプリセットを積んだリバーブが充実。反面コンプ、ノイズサプレッサ、ディエッサ、エキサイタ、EQにはプリセットがない。またEQはLow、Mid、Highの3バンドでちょっと淋しい。
なお楽器用の不平衡入力については、MusicMan StingRayのような高出力ベースを繋ぐとヘッドルームのマージンがぎりぎりという印象。特殊な例かもしれないが、ここはもう少し余裕が欲しい。

■Logic Proでの録音:
メーカーは本機のサイトで「低レイテンシー」を謳っている。常用機よりも数年進んだ製品ということで、多重録音時のモニタリング向上に期待したのだが、これは意外にも「僅差でM-AUDIOが勝る」結果となった。あるいは使用環境による差だろうか。
このタイムラグ問題は「録音済みのトラック全体を前にずらす」ことで同期は可能だが、手間を要するところでもある。いずれにせよデフォルトでの使用はやや違和感を伴うので、この点は今後の改良に期待したい。

■添付ソフトについて:
本機には市販のDTMソフトのお試し版である「Cubase LE」がバンドルされている。LEヴァージョンでも豊富な機能が提供されるが、MacOSの場合は工場出荷時にGarageBandという汎用性の高いソフトが搭載されていることもあり、私の環境では特に有用性を感じなかった。おそらくWindowsユーザーには便利に使えると思う。

■音質について:
マイクプリアンプはS/Nも充分以上に確保されており、きわめてクリア。ただし録音した音は「万人に分かりやすい高音質」に味付けされている印象があり、やや硬質で高音域が若干強調されているように感じた(あくまでもFast Trackとの比較において)。
この印象はパソコンの音楽再生においても同様。本機はUSB-DAC/ヘッドフォンアンプ的に使うこともできるのだが、ホールエコーの消え際などの再現でデジタル的なクリアさが少々耳につく。アナログ的な音の感触を求めるなら、やはり専用のオーディオ機器を使うべきだろう。

■操作性について:
大型のヴォリュームノブを筐体トップに配置。このデザインによる操作面の優位性は確かに感じられ、微妙な音量調整が楽にできる。ただしフィーリング面にはまだ改良の余地があり、ノブの回転トルクが軽すぎること、ノブ自体の高さが足りず側面が平滑なことなど、見た目と操作感にギャップを感じるのが残念なところ。
価格を考えれば無理もない気もするが、TASCAMの母体は伝統あるオーディオメーカーTEACなのだから、こうした部分にもっと気を遣って欲しかった。

■まとめ:
いろいろ苦言も記したが、(価格も含めて)全体にはとてもよく出来た製品と思う。機能面ではヘビーな多重録音ユーザにはちょっと物足りない部分もあるものの(主に入出力チャネルの数)、自宅でギターやヴォーカルを重ね録りする「ライトな宅録ユーザ」には必要充分、しかも操作が分かりやすい。
独特のクールなデザインも(LEDの発色がちょっと派手で気恥ずかしくはあるが)操作ノブの配置などはよく練られており、またこの製品ならではの主張もある。ただデスクトップでの使用を前提とすると、ケーブル類の動きによって機器が移動しやすいのはちょっと問題と思う。このデザインを活かすなら、底面にスリップ防止処理をするなどの工夫が欲しい。これはこの種のDTM関連製品全般にいえるところなのだが。

Audrey the 60s
Audrey the 60s
David Wills著
エディション: ハードカバー
価格: ¥ 3,905

1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 飛び切りにお洒落で可憐で都会的な彼女に、また逢える。, 2013/5/4
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
レビュー対象商品: Audrey the 60s (ハードカバー)
今なお世界中で愛される女優、オードリー・ヘプバーン。本書は彼女の活動歴の「後ろ半分」にあたる60年代を写真で綴った豪華本である。編集者デヴィッド・ウィルスとデザイナーのステファン・シュミットはMarilyn Monroe: Metamorphosisで組んだコンビ。分厚いダストカバーの内側はいかにもヘプバーンらしい水色の布貼り。

内容はヘプバーンの映画作品から「ティファニーで朝食を」「噂の二人」「シャレード」「パリで一緒に」「マイフェアレディ」「おしゃれ泥棒」「いつも二人で」「暗くなるまで待って」の7本について、オフィシャルなスチールフォトや撮影シーン、オフショットなどを中心に掲載。これまで未発表だった写真も多く含まれる。キャプションは巻末にごく簡素なものが載るだけだが、余白部分には本人や関係者のコメントが掲載されている。

それ以外の要素として、「ファッション 1962-66」のページが独立して設けられ、ヴォーグなどのグラビアを飾ったヘプバーンにお目にかかれる。服や小物はもちろんジバンシーが中心、写真家もセシル・ビートンやウィリアム・クライン、バート・スターンなど超一流ぞろいで、写真のクオリティも流石に高い。

個々の映画作品の扱いについては、「ティファニー」にもっとも多くのページが割かれており、「おしゃれ泥棒」がこれに次ぐ。逆にあっさりしているのが「噂の二人」や「暗くなるまで」。このことに象徴されるように、本書にはお洒落で可憐で都会的なヘプバーンの魅力が、目一杯に詰まっている。
編集デザインもそれに合わせてポップでカラフルなもので、この女優のファンならば満足度の高い一冊といえるはずだ。日本の映画雑誌を手に楽屋で微笑むヘプバーンが可愛い。

ただ個人的には、あの大きく目を見開いた表情の向こうに、どこか淋しさを感じてしまう。それも60年代のヘプバーンの魅力ではあるのだが、果たしてそれは虚像だったのか。それを知りたくて本書を手にしたものの、結局答えは得られなかった。
たぶん60年代という時代の社会背景なども含めて眺めれば、もっと違うヘプバーン像が浮かんできたのではと思うのだが、それは本書の狙いから外れるのだろう。謎は永遠に謎のまま。それでいいのだと思う。すべての「オードリーファン」にお勧めしたい、これは素敵なファンブックである。

Porsche Design
Porsche Design
価格: ¥ 12,361

1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 削り出しのインダストリアル・デザインを読み解く快感。, 2013/4/21
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
レビュー対象商品: Porsche Design (ハードカバー)
ポルシェデザイン40周年を祝う大型書籍。まず装丁がいい。ロゴの型押し入りハードカバーに(このページの写真では白く見えるが)黒塗りの天地小口で外装は黒一色。他に紙製のスリップケースも付属する。本文ページの印刷も上質で、特にメタリック印刷は見事。ちなみに印刷製本はイタリアのPrinter Trentoが担当している。

しばしば誤解されがちではあるが、PD=ポルシェデザイン社は同名の自動車メーカーのデザイン部門ではなく、またクルマ単体のデザインも行っていない。ただし両社は2003年に資本関係を結び、現在はグループ企業の関係となっている。PDの創設者はポルシェ一族の出自であり(初代911のデザインチームの一員であった由)、この統合は自然の成り行きともいえる。

本書はその40年の歴史を俯瞰する構成になっており、冒頭50ページはPDの歴史とデザイン哲学、そしてスタジオの紹介などに割かれている。この部分はテキスト主体だがレアな写真も数多く掲載。
残り500ページは作品紹介で、その数およそ200点。PDの名を世界に知らしめた名作「ポルシェデザインウォッチ」やサングラスをはじめ、情報家電やスポーツウェア、キッチン用品、ステイショナリー、果ては航空機や列車、クルーザーそして建築物のような大型物件まで網羅する。
主要な作品はデザインコンセプトの解説付き。日本企業からの依頼品はコンタックスRTS(1976)やコンタックスT(1984)、富士フイルムFinePix4800(2001)などが並ぶ。

それぞれの作品を眺め、改めて感心するのが「デザインの統一感」。PDの造形は「無垢の金属塊から削り出したような」重厚な質感が特徴的だが、近年の作品ではより有機的なラインも採り入れている。そうした造形がややもすると没個性的になるのに対し、PD作品には制作年代や商品ジャンルを超えた、確固たるアイデンティティが感じられる。おそらくこれは同社のデザイン哲学の奥底に、バウハウスの血が流れているためだろう。
オーストリア銀行の依頼品「豚の貯金箱」やベーゼンドルファー社のグランドピアノなど、ドイツ表現主義と合理主義の優れて現代的な解釈が看て取れる。

個人的な感想として、デザインワークの裏側(没案を含めたプロダクト開発のストーリー)がもう少し見えればとも思うのだが、それは本書の狙いから外れることになるのだろう。PD作品に特有の重厚な一体感は、デザイナー個々の造形力ではなく、鍛造部品のような組織力によってつくられる。それを知るには最高の書籍である。
なおこのページには「原語:ドイツ語」とあるが、本文テキストはすべて独語/英語併記。その点で入手をためらっている方は、どうぞご安心を。

Andre Kertesz: The Early Years
Andre Kertesz: The Early Years
Andr Kertsz著
エディション: ハードカバー
価格: ¥ 1,775

1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 まさに「才気煥発」、ケルテスの超初期作品集。, 2013/4/19
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
20世紀を代表する写真家のひとり、アンドレ・ケルテス(1894-1985)。今もさまざまな形で復刻される彼の作品から、初期のブダペスト時代のものを集めたのが本書である。
2005年10-11月、NYCシルヴァースタイン・ギャラリーで開催された同名展のカタログを兼ねての出版。濃紺の布貼りハードカバー上製本+表紙は特殊印刷。

内容はロバート・グルボ(晩年のケルテスのキュレーターを務め、懐古集の編纂も行っている)によるエッセイを冒頭に置き、残りの132ページに作品66点を掲載。見開きの右ページに作品を、左にキャプション(題名および撮影年)を配するレイアウトは全ページ共通。

判型が一辺132ミリ(本文ページは128ミリ)の正方形と、たいへんコンパクトな書籍だが、手にするとこの数字以上に小さく感じる。なにしろ片ページに置かれた写真が小さく、ほとんど「封筒に貼られた切手」のような印象だ。
もちろんこの写真サイズには意味があり、晩年のケルテスが密着プリントで保管していた作品を、できる限り忠実に複製した結果である。フィルム画面と印画紙と印刷サイズが等倍のため、ディテールの鑑賞にはルーペが必要だが、4倍程度に拡大しても精細感は充分。

ちなみに掲載作品のいくつかは他の書籍でも観ることができる。それらはより大きなサイズに拡大されており、ただし画質面には難があった。鑑賞サイズの問題は微妙だが、作品が密着プリントでしか現存しない場合、本書のように原寸で見せるやり方もひとつの見識だろう。

キャプションに記されている撮影年は1912年から21年(幅を持たせてあるもの、または撮影年不詳のものも多い)。ブダペスト市内および近郊で撮影された作品群は、当初ややバラつきがあるものの、次第に彼独自の作風に収斂していく。あのシュールで絶妙のバランス感覚が、この最初期の作品群にも確かに息づいているのは驚きだ。

評伝によればケルテスが初めて自分のカメラを買ったのが18歳の、また職業写真家になる決心をしたのが25歳の頃という。つまり本書では写真表現に目覚め、覚醒していく若き天才の視線を追うことができる。ハンガリーは20世紀前半に多くの優れた写真家を輩出したことで知られるが、ケルテスの才能が傑出していることは、この密着プリント(トーン操作などの暗室技法を使えない)で明らかである。

本書にはもうひとつ愉しみがあり、それはケルテスが使っていたカメラを、作品サイズから類推できることだ。写真技術が未成熟な時代ゆえ、規格外も多々あるものの、アトム判やセミ判、ブローニー判などのロールフィルムに加え、シートフィルムの使用も確認できる(当然ながらライカ判は1枚もない)。すべて自前ではないと思うが、彼がどんな機種で撮っていたかを想像するのも楽しい。古い印画紙のトーンを伝える印刷も秀逸だ。

なお手元に届いた品はこのページの画像と異なり、半透明(トレーシングペーパー?)のダストジャケットは付属していなかった。裏表紙にISBNコードとバーコード付きのシールが直接貼られていたので、そういう仕様も流通しているようだ。

Yo-Yo Ma Plays Concertos Sonatas & Su
Yo-Yo Ma Plays Concertos Sonatas & Su
価格: ¥ 2,127

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5つ星のうち 4.0 パッケージは紙製、音楽は純金製。, 2013/4/15
レビュー対象商品: Yo-Yo Ma Plays Concertos Sonatas & Su (CD)
ヨーヨー・マ(馬友友)の膨大な作品群から、人気の高いクラシック曲を選りすぐってまとめたボックスセット。長年のファンとしては複雑な気分だが、これから聴き始める人には嬉しいセット化だろう。

全8枚のCDの収録内容はこのページの画像(2枚目)にある通り。CD1からCD5は協奏曲主体で、残る3枚は室内楽。ほぼ作曲年代順に並べてられている。録音時期は1979年から2003年までと幅広いが、おおむね80年代の録音が中心。新しい音源を出し惜しみしているわけではなく、この天才チェリストはソロデビューからほぼ10年の間に、主だった協奏曲録音をこなしてしまったのだ。

録音の新旧に拠らず演奏は聴き応え充分。どの楽曲でもこのチェリストの完成された技巧としなやかな美音、そして大河のようなスケール感を堪能できる。クラシック録音が潤沢な資金に支えられた時代ゆえ、共演者の顔ぶれも豪華そのもの。協奏曲ではハイドンの作品が初レコーディングにして決定的な名演、また後半の室内楽も秀演ぞろいだ。

それぞれの盤の収録時間も長めで、かなりお得なセットなのだが、ちょっと気になるのは初出盤のジャケット写真や解説がいっさい付属しないこと。元々ヨーヨー・マの初期作品はアナログ/デジタルの端境期にリリースされたため、後年の再発CDでは再編集盤(LP2枚の内容を1枚に収めるなど)が多くなり、この音楽家の録音史が見えにくくなっている。
これを初出時の状態に戻し、年代順にまとめた90枚組の限定ボックス「Yo-Yo Ma 30 Years Outside the Box」も出ているが、誰もが手を出せるものではない。

その内容を大幅に簡略化して、純クラシック作品(それも聴き応えのある協奏曲中心)をまとめた本ボックスは、ヨーヨー・マ入門に最適の内容といえる。それだけに「中身が市販のどのCDから採られているか」の情報は付けておいて欲しかった。紙ジャケ復刻のようなコストをかけずとも、簡単なリーフレット1枚で事足りるのだが。

というわけで、中身の充実ぶりに対しパッケージの簡素さが目立つセット化ではあるが、この価格でこの内容は多くの人にとって魅力だろう。ここから買い足していく方には、まず「バッハの無伴奏チェロ組曲」全曲盤(この箱に入っているのは1982年録音盤の半分のみ。他に90年代の再演盤もある)の入手をお勧めしたい。

エムズスタイル ホワイトスクエアープレートS ペアセット 2枚 50 MS-90050
エムズスタイル ホワイトスクエアープレートS ペアセット 2枚 50 MS-90050
価格: ¥ 1,134

2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 2.0 品質管理が甘い。, 2013/4/13
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
写真の通り、真四角で真っ白の皿。この種のプレートは大中小の3サイズで揃えると便利なので、手持ちの2種(別のメーカー品)の中間サイズとしてオーダー。届いた品のうち1枚の表面にクレーター状の凹凸(直径5ミリ〜8ミリほど)が3個あった。「手づくりの風合い」などとは別種の、文字どおりのアバタである。
製造のどの工程で生じたのか不明だが、国産品であれば出荷前の検品で間違いなくハネられるはず。そこで見落とされても流通段階での検品に引っかかるだろう。

凹凸の無い方の皿はちゃんとしており、価格相応の品質はある。今回は返品の手間を惜しんでそのまま使うことにしたが、大小の皿と数を合わせるための追加オーダーは止めておいた。拙宅ではエムズスタイルの皿(国産品)をいくつか使っており、それらは価格以上の品質が保たれていたので、こういうことで信用を落とすのは損だと思う。
「海外生産品だから云々」ということは言いたくない。要は管理体制の問題なので、生産現場や流通過程でのチェックをきちんとして欲しい。

Quebrado
Quebrado
価格: ¥ 690

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5つ星のうち 4.0 アスナール・ミュージックの集大成的アルバム。, 2013/4/13
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
レビュー対象商品: Quebrado (CD)
2008年発表のスタジオ作。間にサントラやダビッド・レボンとの双頭ライヴ盤などを挟みつつ、流れとしては05年のライヴAznar Canta a Brasilに続く作品である。母国アルゼンチンでは多くの賞を受け、アスナールの諸作中でも商業的にもっとも成功したアルバムといえる。全24曲、デュレーション=51分17秒+48分38秒。

内容はCD1が自作中心の新作集。緩いクラブサウンド風からアコースティックなナンバーまで、現代アルゼンチンのポップ/ロックシーンの動向を伺わせる作品が並ぶ。
CD2は中南米/欧米アーティスト作品のカヴァー集。前記のAznar Canta a Brasilがブラジル音楽に特化したカヴァー集であったのに対し、こちらはさらに視野を広げた「もうひとつのルーツミュージックを巡る旅」的な趣きになっている。

日本におけるアスナールの聴き手は、おそらくPMG=パットメセニーグループで彼を認識した人が多いはず。特にライヴの傑作モア・トラヴェルズでさまざまな楽器を駆使しながら、あの「天使の歌声」を披露した青年の姿はなかなか鮮烈だった。
その青年も五十路に入り、最近は口髭をたくわえようになった(あまり似合わないと思う)。だが彼の音楽性はデビューの頃からあまり変わっていない。

いわゆる「アルゼンチン音響派」の草分けとも目されるアスナールだが、その音楽のコアの部分には常に「若者のナイーヴな魂」が失われずにある。近作でもその部分は昔のままで、どの楽曲にも瑞々しいタッチが息づいている。反面で大人の男の色気などは希薄で、そこに彼の強みと弱みがあるように思う。

演奏は小編成のバンドが基本で、アスナール自身は歌とベース、ギターそしてキーボードなどを担当。ベースプレイは例によって達者だが、本作ではあまりソロを弾いていない。また1曲のみだが弦楽アンサンブルにパブロ・アグリ(ピアソラの名パートナーだったアントニオ・アグリの息子)がヴァイオリンで参加している。

個人的にはもう少し突き抜け感や「聴きにくさ」が欲しいところだが、本作の聴きやすい音づくりは多くのリスナーにアピールするはずで、それが母国での高評価につながったのだろう。これからアスナールを聴く人にも、安心して勧められる作品といえる。

なおカヴァー集にはビートルズ関連が充実しており、レノン作「ジェラスガイ」「ラヴ」、マッカートニー作「ジャンク」、ハリソン作「イズントイットアピティ」が披露される。またストーンズの「アンジー」やスティングの「フラジャイル」なども聴きもので、特に後者でのベースプレイはなかなか渋い(歌はスティングの圧勝だが)。

Death & the Maiden
Death & the Maiden
価格: ¥ 1,279

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5つ星のうち 5.0 冷えきった肉体に抱きすくめられる快感。, 2013/4/12
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
レビュー対象商品: Death & the Maiden (CD)
世界屈指の実力を持つアンサンブル、タカーチ弦楽四重奏団によるシューベルト集。同楽団の数多ある名演のなかでも、これは傑出した作品といえる。2006年5月、英ブランドン・ヒルの聖ジョージ教会にてセッション録音。全2曲8トラック、総収録時間69分07秒。
なお本盤はハイペリオン・レーベル30周年を記念する限定シリーズ「Hyperion 30」の1枚。オリジナル盤との違いはジャケット等の意匠のみで、ブックレットの内容も同一。

収録作品は弦楽四重奏曲第14番 D810「死と乙女」および同第13番 D807「ロザムンデ」。いずれも1824年に、つまり作曲家の晩年に書かれた作品である。両作品にはこの時期のシューベルトの心情がよく反映されているといわれ、特に第14番は全編を覆う沈痛な響きが印象的。おそらく彼の作品中でもっとも暗い曲だろう。

シューベルトを主要レパートリーに据えるタカーチはこの2曲を収めたCDを93年にリリースしており、本作はそれから14年を経た再演となる。93年盤とは第1ヴァイオリンとヴィオラの顔ぶれが替わり、こちらの布陣ではそれぞれ米国人奏者が加入。
楽団名の由来ともなったガボール・タカーチ=ナジの不在はちょっぴり淋しいところだが、おなじハンガリー時代からの創設メンバー二人は健在で、演奏スタイルも不変といえる。

その演奏は93年盤よりもさらに厳しさを増し、どちらの楽曲もきわめて辛口に仕上げられている。その傾向は短調だけで構成される第14番にとりわけ顕著で、硬質なタッチと厳格なリズム、そして隈取りの深さはほとんど石造彫刻のよう。といっても決して無味乾燥ではなく、冷えきった身体に抱かれるような感触で聴く者の心に迫る演奏だ。第13番はもう少し救いがあるが、やはり甘さは控えめ。

この演奏を際立たせているのが、ハイペリオン(本作はデッカからの移籍第一弾)によるプロダクションであり、燻し銀を思わせる録音はかなり個性的。特にチェロの響きなどは、低域レンジの一部をカットしているように感じられ、それが独特のノスタルジックな肌触りに繋がっている。

聴く人によって好悪が分かれる演奏であり録音と思うが、個人的にはこのモノトーンの風合いが好みで、シューベルト作品に特有の「チョコレートリキュールのような甘さ」が尾を引かないところを評価している。ハンガリーのお菓子もウィーンのそれに劣らず甘いものの、ドライフルーツに特有の果実感があり、本作とデッカ録音との違いもそれに似ている気がする。

なお本盤では縮小されてしまったジャケットの絵画は、19-20世紀ハンガリーの画家アドルフ・ヒレミ=ヒルシェルの代表作「世界の終わりのアハシュエロス」。神話世界に画題を求めた作品で、シューベルト作品(が下敷きとした詩)との関係はないものの、この楽曲と演奏のイメージに見事に合致している。本盤を入手された方には、ネットで原画(''Ahasuerus at the End of the World ''で検索)を閲覧することをお勧めしたい。

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