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5つ星のうち 5.0
ただの擬似親子モノと思うなかれ, 2011/9/5
「生まれてきて大きゅうなっただけで うんとええこなんじゃけ。」
舞台は多分、広島県―。スナックを切り盛りする映子は、商売も順風満帆。
だが、若き日の過ちが原因で子供との関わりを断って一人で生きてきた。
そんな映子の元へ、友人の滋子が5歳の息子・大滋(タイジ)を連れてやってくる。
経済的に困窮している滋子から、タイジを押し付けられた映子。初めはタイジを遠ざけようとしていたが…。
それまで面識のなかった大人と子供が、突然一緒に暮らすハメになって……と聞くと、よくある擬似家族漫画を想像するだろう。
だが、今話題の『うさぎドロップ』のような内容を期待してはいけません。それだけストーリーも登場人物も濃くて強烈です。
作者は、底辺(それもどん底)で生きる人々を描くのがとても上手い。主人公の映子も相当な修羅場人生を歩んでいます。
「家族がほしい」―。家庭の温もりを知らずに育った映子は、孤独からそう願っただけなのに運命は残酷です。
彼女の過去に起こった出来事は、若さゆえの無知や思慮のなさが原因とはいえ泣けます。そして、非常にリアルで生々しく感じました。
辛い過去から自分を解放できず、刹那的な生活を送っていた映子。彼女の内面の不安定さが、時折読み手を不安にさせます。
映子と滋子の微妙な関係も気になります。子がいない映子は子供を持つ滋子に、生活苦の滋子は経済的に安定している映子に、
お互い強い羨望とコンプレックスを抱いている様に見えます。タイジの存在が、更に二人の関係に影響を及ぼしそうな予感がします。
タイジが可愛くて面白い♪ ぽっちゃり体型も愛嬌があって可笑しいですが、その健気な言動に幾度もホロリとさせられます。
どんなに邪険にしても笑顔で明るいタイジに、次第に癒されていく映子。純真でユニークな彼の存在が物語を面白くしています。
そして、忘れてはならないのが、姐御肌で強烈な小学生女子のぺーちゃん。親子ほど年の違う映子となかなかいいコンビです。
ぺーちゃんと映子のやり取りは漫才の様で笑えます。彼女達が話す広島弁が軽妙で良いです。会話のテンポが良くて楽しい。
先を暗示する様なラストですが、次巻で終わりなのかな? 続きが気になります。
設定はヘビーですが、切ない中にも優しさが散りばめられている物語です。心に響く台詞もたくさんあり、久々に秀逸な漫画に出会えた気がします。
あらすじに「奇跡の物語」と書いてあるので、これは映子たちの「再生と救済の物語」であると信じたいです。皆、幸せになってほしい。