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これでいいのださんが書き込んだレビュー (奈良県)
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安土城の幽霊 「信長の棺」異聞録 (文春文庫)
安土城の幽霊 「信長の棺」異聞録 (文春文庫)
加藤 廣著
エディション: 文庫
価格: ¥ 494

5つ星のうち 4.0 大きな虚構の一端として, 2013/6/19
 信長、秀吉、家康を主役または狂言回しにした中編歴史小説3編。いずれも読ませるが、副題に『「信長の棺」異聞録』とある通り、作者の小説デビュー作『信長の棺』、さらに『秀吉の枷』『明智左馬之助の恋』と続いた「本能寺3部作」の外伝・異伝の気配が濃厚にうかがえる。また『空白の桶狭間』のメインアイデアで、作者創作の「奇襲の真相」の一端も顔を出し、本書をこれら4作を下地にした「余話」として読めば、一段の興趣がありそうだ。評者はこの4作を読了後、本書を読んだので(4作を読んでいたから、文庫に入った本書に手を出したというべきか)、作者が壮大な作り話を踏まえながら、全体として齟齬を来さない外伝・異伝に仕上げている点に感じ入った。

 作者が『信長の棺』で小説デビューしたのは75歳。大いなる遅咲きということになるが、登場のスタイルがよく似た隆慶一郎氏のような器用さはない代わりに、着想とストーリーテリング、さらに読みやすさがうかがえ、これらを総合すれば、隆氏とはまた異なった鮮やかな仕事ぶりだと思う。

京都殺人地図 (文春文庫)
京都殺人地図 (文春文庫)
山村 美紗著
エディション: 文庫

5つ星のうち 3.0 古色蒼然, 2013/6/17
レビュー対象商品: 京都殺人地図 (文春文庫) (文庫)
 割と器用な女流作家だった、との印象が残っていたが、この8本の連作短編は全体に薄味で、見込んだほどの面白さはなかった。京都を舞台にした、ということでピックアップしたのに、京都の風情をめぐる書き込みや描写は少なく、しかも舞台は伏見区や山科、宇治、長岡京などの周辺部が目立つ。バブル前の、古色蒼然とした推理小説といったところ。長編ならもう少し雰囲気があるのかも知れない。

京都の平熱――哲学者の都市案内 (講談社学術文庫)
京都の平熱――哲学者の都市案内 (講談社学術文庫)
鷲田 清一著
エディション: 文庫
価格: ¥ 1,008

5つ星のうち 5.0 一筋縄ではいかぬ「両義性」, 2013/6/15
 故あって、硬軟取り混ぜた「京都本」を読み始めている。本書はそんな中での5冊目。京都育ち・団塊世代の哲学者が、市内東半分を周回する市バス206番を使い、寺社や祇園、大学、映画館、西陣などを移動して京都の今昔をめぐる多面的な考察を続けていく。高踏趣味が過ぎていささか晦渋な記述もなくはなかったものの、全編を通じ、おしなべて面白く読むことができた。

 伝統とアバンギャルド、歴史意識の希薄さと新しもの好きの風土、京都ブームに対する冷ややかな視点と、拭い去りがたい京都人の排他・優越意識など、1200年来、ずっと都市あるいは都だったこの街の外形と内実の「両義性」についてバランスを意識した紹介と思弁が繰り返されていく。

 京都近郊に生まれ育った評者が唯一意外だったのは、うどんのことは男女を問わず必ず「おうどん」と言わなければならない、という慣習について教示したくだり(163頁ほか)。つくづく自分は「鄙人」だと痛感させられる一方、単に「うどん」と呼んで何がいけないのか、「おうどん」なんてなよなよした気色の悪い方言やないか、カッコつけるんじゃねえ、とも思うが。

新規顧客をバッチリつかむ 士業のためのホームページのつくりかた
新規顧客をバッチリつかむ 士業のためのホームページのつくりかた
芝田弘美著
エディション: 単行本
価格: ¥ 2,310

5つ星のうち 3.0 少し不親切, 2013/6/11
 評者は今秋の開業をめざす、本書名さながらの境遇にある。なので、値が張るとは思いつつ、飛び付くような勢いで本書を手にし、一気に読み終えた。HP制作をめぐる初歩的な知識、士業にはどんなHPが効果的かなどが分かりやすく説明されていて、確かに参考になった。趣味や自己満足に走ったHPづくりは無益有害、みたいな忠告は、そっちの方に行ってしまいかねなかった評者の模索にクギを刺すものだった。

 そのうえで、不満が残った点を二つ。一つは、素人にはHPの自作は無理なので、HP制作会社にざっと「数十万円」ほどで外注するのが無難、とだけ記している点。随分素っ気ない話だ。デザインやページ建て・フレームを外注し、文章や写真などのコンテンツは自分で執筆・用意する場合、どれだけ費用が圧縮できるのかの説明もなかった。HP制作会社への発注を「誘導」するための記述ということなら、少し片寄っていて不親切だと思う。

 もう一つはそれに関連して、無料でHPが作れるという業界内のサービスをやや突き放して紹介する中で、例えば「jimdo」などに触れた箇所が見当たらなかったことだ(評者は「数十万円」が惜しいので、とりあえずjimdoでHPづくりに乗り出している)。この辺りにも、何がしかの片寄りを感じた。

成功する個人事業の始め方〈’12‐’13年版〉
成功する個人事業の始め方〈’12‐’13年版〉
萩原 広行著
エディション: 単行本
価格: ¥ 1,365

5つ星のうち 4.0 それなりに役立ちそう, 2013/6/10
 2013年秋に「個人事業」を始める予定の身にとっては、いろいろと参考になる1冊だった。とくに巻頭に「コピーしてご利用を」とある「現金出納仕訳帳」はそれなりに役立ちそうに思う。

 評者は日商簿記3級の試験を申し込みながら、テキストを終えた後でチェックした市販の「簿記3級模擬試験」の難しさに愕然・茫然とし、6月の試験を「不戦敗」でパスしたという、情けないポジションにある。本書はそんな「簿記知らず」の身にも個人事業の経理等について分かりやすく案内。「現金出納仕訳帳」以外にも、多数の書類・帳簿等のひな型が掲載されていて実用的な編集になっている。

梅棹忠夫の京都案内 (角川ソフィア文庫)
梅棹忠夫の京都案内 (角川ソフィア文庫)
梅棹 忠夫著
エディション: 文庫
価格: ¥ 700

5つ星のうち 4.0 京都中華思想, 2013/6/10
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
 執筆・加筆時期でいえば、1950年代から21世紀初頭まで。ざっと50年にわたる初稿執筆と推敲・改稿が繰り返された小文を編んだエッセイ集。生まれ育った「京都市」をめぐるこだわり・魅力・味わいどころ・自負について縦横に語っている。信じられないほどに幅広い文筆活動のごく一部でありながら、中身はそれなりに堅実かつ充実。博覧強記の見本のような1冊だ。

 とはいうものの、理想的・古典的な「京都本」とは必ずしも言い難いようにもみえる。著者自らも書いている。「他郷のひとには、かならずしもこころよくひびかない部分もあろうかと案じている。そこは、京都の人間の度しがたい中華思想のあらわれと、わらって見すごしていただきたい」(6頁)。動詞や形容詞をできる限りカナ書きにする、という著者特有の読みにくい文体表記もあり、それやこれやで、全体としては☆は四つ。

珈琲屋の人々 (双葉文庫)
珈琲屋の人々 (双葉文庫)
池永 陽著
エディション: 文庫
価格: ¥ 650

5つ星のうち 3.0 いま一つでした, 2013/6/5
レビュー対象商品: 珈琲屋の人々 (双葉文庫) (文庫)
 以前、作者の「コンビニ・ララバイ」を読んでそれなりに「うまい」と思った。なので、本書も書店でたまたま見かけて手にとり、所収の連作短編7本を通読した。下町の喫茶店と商店街、という舞台設定は悪くない。そこで繰り広げられる男女の愛憎ドラマも、読んでつまらなくはない。けれども、会話や描写のこなれがいま一つというか、無理に作っているというか。熱いコーヒーを飲みたくなる、という「余韻」は少しは残ったものの、通り一遍で読み進み、さて次、といった程度のあっさりした読了となった。

京都 (岩波新書)
京都 (岩波新書)
林屋 辰三郎著
エディション: 新書
価格: ¥ 882

5つ星のうち 5.0 51年前, 2013/6/3
レビュー対象商品: 京都 (岩波新書) (新書)
 発刊は1962年で、手にしたのは56刷。この間、改版はなかったようで、中身は刊行された当時の描写、地図、写真のまま。本書はいわば「京都本」の古典になっているのかも知れず、今昔の変貌に少しばかり驚きながら、記述の水準の高さに感銘を受けつつ、しみじみと読み終えた。

 林屋先生が本書を上梓された頃は、まだ市電が縦横に市内を走り、豪壮な新京都駅ビルはおろか、駅前の京都タワーもなかった。所収の古びた写真を見ていると、寺社も鴨川も街並みも、現在の様子とはそれなりに違う。それでも、市内とその周辺部の歴史を押さえながらの淡々とした叙述には、今に名残をとどめる要素も多く、1200年の歴史の基底にある、変わらぬ京都らしさを再確認できたような気がする。

 東寺の西に位置する「羅生門」を現地に再建しよう、と梅棹忠夫さんや多田道太郎さんらが提唱していた、なんて話、初めて知った。名神高速や国道1号線からの「京都の入口」にしよう、という構想だったらしい。実現していれば、京都駅以南の雰囲気は相当に違っていたのではないだろうか。

武士とはなにか  中世の王権を読み解く (角川ソフィア文庫)
武士とはなにか 中世の王権を読み解く (角川ソフィア文庫)
本郷 和人著
エディション: 文庫
価格: ¥ 740

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5つ星のうち 4.0 律儀に丁寧に, 2013/5/30
 日本列島における中世史をどう捉えるかーー。そんな目的意識に立ち、鎌倉・室町期の政治史・社会史を中心に据えて果断な推理を試みた歴史評論といったところ。過度に論理的であろうとするがゆえのいささか晦渋な記述、学会内の論争にこだわった、部外者にはすぐには理解しがたい叙述など、呑み込みにくい箇所もなくはない(その分、素人が手にしがちな文庫本らしくない、といえるかもしれない)。

 しかし、古文書の解読をベースにした律儀で丁寧な検証と筆致は最後まで揺らぐことなく続き、安心して通読することができる。著者いわく「鎌倉幕府の開設は1180年で、教科書に記された1192年より12年もさかのぼる」。十分な論証作業を経たうえでの仮説の提示ということだろうか。他にも興味深い着眼は多く、いろいろと示唆されるところが多かった。

大江戸釣客伝(下) (講談社文庫)
大江戸釣客伝(下) (講談社文庫)
夢枕 獏著
エディション: 文庫
価格: ¥ 710

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5つ星のうち 5.0 十分に満喫した, 2013/5/28
 下巻では、江戸・元禄期の釣り狂いの話から、赤穂浪士の討ち入り、将軍・綱吉の病死の模様など、上巻で予感されていたことが丁寧にゆっくりと語り継がれている。最後は主人公、津軽采女が生涯を閉じるところまで。文庫本でも上下でざっと800頁に及ぶ長編ながら、長いという感じはあまりせず、ひとところも退屈することなく読み終えることができた。佳きかな。

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