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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
読みでがあった, 2012/10/31
税法を専門とする法科大学院教授(今は立命館から青山学院に移っているらしい)兼弁護士が、多くの人が何の気なしに毎月もらっているだろう「給与明細」を題材にして、現今の所得税のあらましにつき、明快に語っている。 記述はくどくなる一歩手前の論理性をキープし、具体例やたとえ話が多く、時折、脱線風にハッスルしたり、おやじ風の冗談を言ってみたり。飽きさせない書きぶりで、楽しく読み通すことができた。また、章ごとにポイントがまとめてあるのも親切。企業が正社員ではなく、派遣社員を増やす理由の一端に消費税が絡んでいるなんて、知らなかった。
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4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
雰囲気、出てます, 2012/10/21
著者の作品はなるだけ購入・通読することにしているが、今回のこれは異色の「鉄道怪談集」。著者上梓済みのこれまでの本格ミステリー群とは毛色がかなり違っているものの、見込んだ以上に面白く、第2集、第3集への期待を加味して標記の採点とした。 評者は怪談、ホラー、恐怖小説などの「怪奇ジャンル」はあまり知らず、本書のアイデアやタッチがどの「ランク」に位置しているのかは分からない。ただ、10編いずれも、描写がうまく、プロット展開も手慣れ、抒情性もあって、ほぼ全部に読み応えを覚えた。エキスポ70を生涯のピークと考える「万博中年」の末路を描いた「夢の国行き列車」(これは泣けます)、「三途ライナー」を寓話的に描いた「最果ての鉄橋」、そして雰囲気たっぷりの恐ろしげな標題作など、いずれも趣向が凝らしてあって、さすが、といったところだ。 それと、文庫本の表紙、ややキレイ過ぎる気もするが、なかなかにムードがありますね。鈴木久美とかいうデザイナー、うまい!
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5つ星のうち 3.0
今後に期待, 2012/10/18
「宇宙と生命」を巡る対談・鼎談が計5編。それぞれ、常識に捉われないテーマ・発想・着眼は面白く、会話はよく弾み、興味深いエピソードも多数語られている。例えば、地球上の生命は火星から到来した説(?)とか、弘法大師空海と水銀中毒の関係とか。とはいえ、生命とくに地球外生命にまつわる話題は「常識」から離れた世界に踏み込むほどに分かりづらく、評者のような門外漢にはいたずらに難解なだけの箇所が多かった。こうした奇想天外な対談・鼎談に普段あまり接していないからだろうとは思うが、「理解できた者」同士のテンションの高い対談・鼎談は時折、白々しくもあった。 全体のホスト役を務める長沼先生と高校柔道部の同期生だという高橋秀実さんの解説は、本文より分かりいいが、それでもどこか歯切れが悪く、コナレも悪い。つまらない文庫だとは言えないものの、それやこれやで、長沼先生のもっと具体的なリポートを読んだ方がいいのかもしれないと思った。ということで、今後に期待するとして、本書については☆は三つだけ。
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5つ星のうち 3.0
多少の参考になった。古過ぎるけど, 2012/10/16
消滅する前の社会保険庁職員が書いたという触れ込みの「年金指南」。8年前の刊行で内容的にさすがに古く、精読には及ばずの構えで、ざっと流し読みするにとどめた。とはいえ、公的年金の穴だらけのいい加減さはその後、どこまで改善されてきたのだろうか。その辺り、他のアプローチで勉強する必要があると思う。
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4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
面白いが、理屈が空回り?, 2012/10/4
「虐殺器官」にそれなりのインパクトを受け、「30代で夭折した作家」の最後の完成作品ということで期待して読んでみた。読後――。確かに読ませるし、「虐殺器官」と対になったSFだということも分かる。しかし結局のところ、評者には、理屈を前面に押し出して書き上げた空回り気味のSFという印象が残り、他の多くのレビュアーが記しているような、モニュメンタルな大傑作だとはちょっと言いがたいような気がした。 この辺り、好みの問題というべきかも知れず、あるいは近未来SFの近年の潮流・動向を知らないがゆえの偏波な見方かも知れない。なので、評価は中庸の☆三つとしておきたい。作品としての完成度はそれなりに高く、次へ次へと読ませる展開力もある、とも思われるので。
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5つ星のうち 4.0
めったにSF読まない身にも、面白かった, 2012/10/2
2000年代(ゼロ年代)に登場した最強のSF作家という評判に誘われ、前知識なしで読み始め、面白くなって最後まで読み通した。アマゾンをみると毀誉褒貶さまざまで、辛口の評を記しているのは全体にSFに詳しい方が多いような印象。こちらはSFには全然詳しくないので、本書のリアルでありながらアンチリアルな表現世界に素直に幻惑され、感心できる1冊となった。当然、次は「ハーモニー」にも手を出してみるつもりだ。 とはいえ、評者もやはり、☆5点にはしなかった。理由は、ラストに出てくる「ぼく」の行動がいかにも想定の範囲内だった、「ぼく」はどう考えてもアメリカ人には見えなかった、ジョン・ポールが語る「動機」は作り物とはいえ、不自然の度が過ぎる、といったあたり。着想、プロット、筆力いずれも水準を遙かに超えていると思われるので、全体としては堂々の☆4つではあるが。。。
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5つ星のうち 5.0
「昭和の人」の傑作評伝, 2012/9/30
非常に優れた評伝である。家族を主だったテーマにした小説群で有名な重松さんは、ノンフィクションでも佳作を数冊上梓されているが、本書はその中でも(評者が読んだ4冊の中でも)最上の傑作だと思う。 「昭和の人」そのままだった作詞家・作家の阿久悠さんの生涯を、相当な資料収集と丁寧な取材で再構成し、共感のこもったタッチで過不足なく描き切っている、といえばいいか。「野球と映画と流行歌」で民主主義を体感した少年時代から、歌のための5000もの詞の量産、作詞家から作家への「転身」、さらにがんで亡くなるまでを、メリハリの利いた構成で明快に再現。著者の小説・ノンフィクションで時折感じることだが、文章がうま過ぎることがどこか「予定調和」的な印象を残していることも否定できず、そこが(うま過ぎることに著者の責任はないが)やや残念。とはいえ、「昭和な歌」「昭和な人」「昭和な時代」を再確認したい向きには、最適・快適な1冊だと思う。
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26 人中、22人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
問題の所在は分かるが, 2012/9/30
日本の農業の強みは自然と調和した「技能集約型農業」にあるが、農地利用の歪みと消費者の「舌の劣化」などによって、その伝統と蓄積は消失の危機にある。ところが、マスコミや「識者」は問題の本質を理解せず、いたずらに農業を美化するばかりだ――。著者自身の要約(229頁)にしたがえば、この辺りが本書の主張の骨格ということになる。現代の農業および農村が抱える多数の問題群の所在について、それなりに整理された、筋の通った概観が得られる、といったところだ。 しかし率直に言って、「農業の現状を懸念」する筆致はひたすらエキセントリックで、アクが強い。農業をめぐる言説の「識者の罠」「ノスタルジーの罠」「経済学の罠」を指弾するのはいいが、自らはその三つの罠には陥ってはおらず、しかし「(日本農業の)耕作技能の崩壊をとめられなかったことについて自責の念に駆られる」などという自意識過剰のコメントも出てきたりして(232頁)、どこか奇矯な印象がつきまとう。もしかすると、この先生、相当に独りよがりではあるまいか。
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5つ星のうち 5.0
緊張を強いる, 2012/9/27
大宅ノンフィクション賞受賞の「路地」(被差別部落)をめぐる力作ルポ。文庫に入ったのを機に購入し、一気に読み終えた。評者は関西の生まれ育ちで、小中高校を通じ、同和(+在日)の同級生は多く、臨場感、既視感、無意識レベルを含む「差別する、または差別視する側の当事者感」を思い出しながらの、苦い気分の通読となった。 著者は路地出身のノンフィクション作家。ルーツである大阪をスタートし、それぞれ話題あるいはアングルを変えながら、北海道から沖縄まで、自ら現地を歩き、路地内外の住人と語り合い、過去と現在を押さえつつ、日本人の意識の底に残る差別感情をえぐり出し、解き明かし、相対化しようとしている。熟慮の末ともいうべき、平明で感情抑え気味の筆致に救われる思いをしたが、読む側に緊張を強いる1冊だったことは確かだ。文庫のための後書き、西村賢太氏の解説も、それぞれ読みでがあった。
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3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
抜群のバランス感覚, 2012/9/24
左右さまざまな面々が渾然となった組織の弱み、それがための意思決定の遅さ、裁判所と検察庁あるいは法務省との敵対など、日本弁護士連合会が持つ限界、制約、病理について、明快かつ情理を尽くして語り尽くそうとしている。法曹関係者特有の、理詰めであろうとするがゆえのまわりくどい文体からは遠く隔たった筆致で、本論に抵抗なく入っていける点も秀抜だった。 著者のスタンスは中立的かつマイルドで(新旧の左翼系弁護士に対する口調は、それなりに辛辣だが)、アクも嫌味もけれんみもなく、好感が持てる。司法試験の合格者大幅増と法科大学院の設置を受け入れさせられた半面、悲願だった法曹一元化で敗退を余儀なくされた日弁連のここ20年ほどの闘いについて、幅広い資料・証言収集とその解析に乗り出し、それが門外漢にも呑み込みやすい展開となって結実している。相当な力技だと思う。 時折顔をみせる、巧まざるユーモア、副詞「とても」の効果的な使い方など、繰り返すが、法曹関係者の文章としては、すっきりし、ユニークで、読みやすい。一言でいうなら、抜群のバランス感覚ということ。著者が心配するような「日弁連の衰退や分裂」は考えにくいものの、法律家の文章はつまらない、と敬遠する向きにも、十分に推奨できる啓発本だと思う。
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