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hide-bonさんが書き込んだレビュー (名古屋市)
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ヒッチコック [DVD]
ヒッチコック [DVD]

2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 ヒッチと「サイコ」について私が知っているニ、三の事柄, 2013/5/5
レビュー対象商品: ヒッチコック [DVD] (DVD)
アルフレッド・ヒッチコックと「サイコ」に関する評伝や撮影ノートの類は、日本でも色々と出ていて、読む事が出来る。
今、手元にある「ヒッチコックー映画と生涯」や「ヒッチコック/トリュフォー」を紐解いても(どちらも素晴らしい名著であるが)、撮影当時の有り様や状況が、華麗な映像テクニックの数々と共に詳細に書かれているのだが、もちろん、この映画で描かれているエピソードのその総てが真実と言う訳ではない。
でも、今作は、サスペンスの神様と呼ばれ、大いなる賞賛を受けながら、自らもマザコンでブロンド女優への偏執的な愛情と猜疑心を持ち、混乱したアイデンティティへのトラウマから強迫観念に似た恐怖を抱いていたと言われる稀代の映画監督の苦悩と妄執、制御出来ない感情を、孤高と重圧の中で押しつぶされそうになる新作サイコパス映画を撮る不安感と恐怖心に重ねて描いた巧い構成となっている。
妄想世界での、「サイコ」のノーマン・ベイツのモデルの猟奇的殺人鬼エド・ケインの登場を通して、ヒッチコックの深刻な深層心理を炙り出す。

と同時に、今作は、ヒッチコックが、愛し合いながらも時に強要しあう関係であり、最良の作品の理解者にして、最も先鋭的な批評者でもあった妻アルマとの葛藤も平衡して描いている。
グレース・ケリー、ヴェラ・マイルズ、ティッピー・ヘドレン。ブロンドでヒッチコックが好んで起用し、慕い、固執し、愛し続けた女優たち。
ヒッチコックのブロンド好きは有名で、その作品群の中で生き残る(幸福になる)ヒロインは、総て劇中の髪の色で決まると揶揄された事もあった。
(例えば、「鳥」でのスザンヌ・プレシェットの、或いは、「ファミリー・プロット」でのカレン・ブラックの、そしてもちろん、「めまい」での“真の”キム・ノヴァックのケースを思い出して欲しい)
病的なまでなその偏愛ぶり、それだけに、妻アルマの良妻賢母ぶりが際立った訳だが、当然、彼女もひとりの女性として、複雑で穏やかならざる心境であった事も多かった。
そこら辺の事も頭に入れられて、鑑賞するとより面白味が増すのではないかと思う。

ジャネット・リーをスカーレット・ヨハンソン、ヴェラ・マイルズをジェシカ・ビール、そして、アンソニー・パーキンスをジェームズ・ダルシーが演じているが、これが、中々サマになっている(ビールはまるで似てないけど)。
ヨハンソンなんか、ヒッチコックが生きていたら、さぞ寵愛されたんじゃないか。
ノーマン・ベイツ役にロディ・マクドウォールは?、なんてエージェントからの話も出てくるが、かってマクドウォールのファンだった者からすると、そんな選択肢もあったのかと驚くが、やはりあの役はパーキンス以外あり得なかっただろう。

劇中でも描かれる映画史に残るシャワー・シーンだが、実際は、ヒッチコックは、あのシーンは才能ある芸術家にカット毎に絵コンテ作りをお願いし、その通りに撮ったらしい。
その才能ある芸術家とは、「サイコ」や「めまい」でタイトル・デザインを担当していたソール・バス。映画ファンの間では有名な話だ。

ラストには、TV「ヒッチコック劇場」でのヒッチコック自身のパロディも登場する今作。
虚々実々織り交ぜながら、バックステージ物としてはかなり楽しめる作品なので、映画ファンなら押さえておいて良い。
コメント コメント (2) | 固定リンク | 最新のコメント: May 7, 2013 12:52 PM JST


スーパーマン リターンズ 特別版 [DVD]
スーパーマン リターンズ 特別版 [DVD]
DVD ~ ブランドン・ラウス
出品者:MasterDVD
価格: ¥ 1,358

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5つ星のうち 4.0 「マン・オブ・スティール」、公開近し。忘れないで、今作の存在を(笑), 2013/5/5
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
クリストファー・ノーランの「ダークナイト」3部作が完結し、バット・フリークとしては喪失感を覚える日々だったが(笑)、間もなく、同じくノーランが製作を手掛けるDCコミックスを代表するもう一人のヒーロー、スーパーマンの新たな伝説が始まる。
スーパーマンの映画化と言えば、クリフトファー・リーヴがタイトルロールを演じた78年からの4部作が思い浮かぶし、今回は、それ以来のリボーンと思われる向きもあると思うが、御承知の通り、2006年にブライアン・シンガー監督で製作公開されている。
公開時はかなりの話題となり、日本でもそれなりにヒットしたと記憶しているが、何故かその後新シリーズ化される事もなく、忘却の彼方に追いやられてしまった感がある。
劇場で見逃し、DVDを購入、鑑賞したものの、今はやはりAVラックの片隅に埋もれたままになっていたソフトを引っ張り出し、久しぶりに再見してみた。
ジョン・ウイリアムズのお馴染みのテーマに、文字が飛び出してくるクレジット・タイトル。
オープニングのこのシーンを観ただけで、前シリーズへのリスペクトを強く感じさせるが、その後もクリプトン星やデイリー・プラネット社の会社ロゴやカエエルの両親として、マーロン・ブランドとスザンナ・ヨークが顔を見せる辺り、シンガー自身が子供の頃ワクワクしながら観たと告白しているだけあって、前シリーズのファンへの気配りも感じさせて、スタッフ、キャストは一新したものの、これは正統な続編と呼べるものだった。
もちろん、リチャード・ドナー作品から30年近い年月を経て、映像テクノロジーは格段と進歩し、遥かにスケールが大きいケレン味ある映像マジックが堪能出来るし、スーパーマンのパワーの凄まじさもより確認出来る。
前シリーズでは、コミカルで間延びしたユーモアと、時折流れるロマンチックな要素が魅力でもあったが(それは、製作から監督として第2、3作を撮ったリチャード・レスターのタッチである訳だが)、今作では、それらに加え、よりシリアスなドラマ性も感じさせる。
5年のブランクを経て地球に戻ったスーパーマンを待っていたのは、ロイス・レインの婚約と共に、更に彼女が一児の母親になっていたとの辛い現実と、宿敵レックス・ルーサーの釈放。
善良で心優しいスーパーマンは、苦悩、葛藤しながらも、自らの立場とロイスの心情を考え、身を引く事を決意するが、、、。
再見してみて、それなりに面白く観れたが、新たなシリーズが間もなく公開な今、なぜこんなに話題にされないのだろう?
DCコミックスのアメコミヒーロー映画の宿命か?
しかも、明朗健全なヒーローであるにも拘らず、「ダークナイト」みたいな重さがあるからなのか?
それとも、スーパーマンが、より人間性を帯びた事で矮小化され、その神話性が色褪せてしまったからなのか?
結局、主演のふたりのみならず、大物悪役のケビン・スペイシーまでもが、その後低迷しているというのも一因なのか?
ザック・スナイダ―が監督する新作は、予告編で観る限りでは、更に一段とパワーと迫力を感じるが、みなさん、今作の事は忘れないように、ね(笑)。

(付記)197分もの映像特典、中でも製作過程を詳細に記録したメイキングは壮観で、ハリウッドの大作映画が出来上がるまでの軌跡を隈なく知る事が出来る。
中でも、ブランドン・ドウス=スーパーマンが飛翔するまでのプロセスは、なんか感動したな。
この時代でも、CGではなく、やっぱりワイヤー・アクションだからね。
学生時代、劇場で、前シリーズ第1作の「スーパーマン」で、リーヴがマーゴット・ギターを救う為初めてスクリーンに飛翔した時の高揚感を思い出してしまった。

シネマの極道: 映画プロデューサー一代
シネマの極道: 映画プロデューサー一代
日下部 五朗著
エディション: 単行本
価格: ¥ 1,365

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5つ星のうち 5.0 実に痛快な1冊, 2013/5/1
プロデューサー日下部五朗の名前は、昔から存じ上げていた。
氏がプロデューサーを務め、大ヒットとなった「仁義なき戦い」以降、一時期、「キネマ旬報」に度々登場し、発言をされているのを読んだり、その後、「仁義なき戦い」シリーズを始め、東映やくざ実録路線を名画座で後追い体感した際、そのクレジットに、必ずと言って良いほどに、そのお名前を確認出来たからである。

本書の存在は、小林信彦の新刊「われわれはなぜ映画館にいるのか」の芝山幹郎との対談で話題にされているのを読んで、知った。
後日、書店に行き、「シネマの極道」と名付けられた本書を見つけ、手を取り、パラパラと巻頭を読み始めて驚いた。
なにしろ、いきなり、ソフィー・マルソーとのツー・ショットから始まる。しかも、場面はなんと83年度カンヌ映画祭授賞式だ。
大東映の屋台骨を陰で支えた功労者だが、失礼ながら、何故にカンヌ(これは誉めコトバです〜笑)と思ったら、そうか、この年「猶山節考」が日本からのノミネート作品に選ばれ、南仏まで行かれていたのか。
著者が語っておられるように、この年のカンヌは、同じくノミネートされていた「戦場のメリークリスマス」の軍団が潤沢な宣伝資金をバックに闊歩し、下馬評も高く、パルムドールを獲るのは確実と思われていた。
だから、御本人がまるで期待せず出掛けていって、熱心なロビー活動もせぬまま、あれよあれよという間に製作者として栄えある授賞式の壇上に上がるまでの夢の如きサプライズな顛末は痛いほど良く分かるし、「戦メリ」関係各位の皆さまには申し訳ないけれど、読んでいて、実に可笑しい。
で、立ち読みもそこそこに購入、改めて読み始めたら、オモシロくて、オモシロくて、一気に読み終わってしまった。

これは、実に、痛快な本である。

義理と人情、欲望と背信、憎悪と報復、路線は変われども、つまり、暴力と男気とお色気の東映路線に生き、右も左も関係ない通俗的に面白ければそれでいいとのスタンスに貫かれた社是の中で、当時のワンマン社長岡田茂、先輩大プロデューサー俊藤浩滋を筆頭に、様々な映画監督、大スターに、“その筋”の人たちまで、とにかく多種多様で難しくややこしい人間臭い方々と向き合い、付き合い、時に、おだて、騙し、危ない橋を渡り、恫喝し、恫喝されながらも、熱意と誠意を以て、大ヒット作や傑作たちを生み出していった稀代のプロデューサーの(御本人は社員プロデューサーと終始謙遜されているが)逸話の数々。

映画隆盛期で飛ぶ鳥を落とす勢いの花形であった東映に入社を果たしたものの、早々に映画監督の道は途絶え、廻されたのは助監督より更に過酷な進行役。
だが、著者は、そこで、社員プロデューサーとしての第一歩を艱難辛苦を以て学び始め、次第に頭角を現していく。

とにかく映画ファンには堪えられない裏話が盛り沢山で、「仁義なき戦い」シリーズはもちろん、「893愚連隊」、「緋牡丹博徒」シリーズ、「鬼龍院花子の生涯」等々、その誕生秘話がたっぷり明かされる。
社員プロデューサーであるがゆえ、社長の意見は絶対で、結果、「楢山節考」は岡田茂に嘘八百吹きまくって企画を通し、逆に、「県警対組織暴力」は、岡田茂の警察への私憤から鶴の一声で決まったらしい(笑)。
その一方で、深作欣二/笠原和夫の「実録・共産党」が一度頓挫した後、再び、角川映画で、「犬神家の一族」に続く第2弾として計画されていた事とか、「日本の黒幕」を降りた大島渚と山口組田岡一雄のドキュメンタリーを企画するも、田岡の死去で断念したとか、ホンマかいな、と思える話も披露される。
東映と言えばやくざ映画、実際、昔から、京都撮影所には本物のやくざが出入りしていた、なんてのは序の口で、実録路線にシフトしてからは、否応なしに、取材や映画化権承諾の過程でその筋との関係が深くなり、恫喝、監禁、指詰め強要などの体験もされたらしい。
千恵蔵、右太衛門、錦之介、鶴田浩二、高倉健、藤純子、菅原文太、千葉真一ら、お馴染みの大スターの素顔にも言及され、ゴシップ誌みたいな印象も受ける本書だが、一見豪快に見えるその映画人生の中に、映画人として、そして、映画製作者としての矜持が伝わって来る。

プロデューサー本では、ロバート・エヴァンス著「くたばれ!ハリウッド」以来の、しかし、こちらは、東映とカツドウヤ魂への気概を感じさせる1冊。
日本映画ファンは、是非、一読をお薦めしたい。

東宝 昭和の爆笑喜劇DVDマガジン 2013年 4/23号 [分冊百科]
東宝 昭和の爆笑喜劇DVDマガジン 2013年 4/23号 [分冊百科]

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5つ星のうち 5.0 これはお値打ち、いつ買うか?今でしょう!(笑), 2013/4/29
年々新たなシリーズが刊行されている講談社刊行のDVDマガジン。次はどんな企画が出てくるか秘かに注目しているものの、AVコレクターとして、書店で専用冊子に収められて販売されている映画ソフトにはやはり抵抗があり、今まで“燃える闘魂・新日本プロレス”物以外は購入する事はなかった。
でも、今回、クレージーキャッツや森繁社長シリーズらが“昭和の爆笑喜劇”シリーズとしてリリースされると知り、さすがにそそられる思いに駆られた。

そのラインナップたるや、クレージーの既存DVD化作品26本に社長シリーズ、駅前シリーズに、「てなもんや三度笠」や「コント55号」までが顔を揃える壮観さ。
しかも、他のレビュアー諸氏もこぞって賞賛する、前年TV「シャボン玉ホリデー」で人気爆発していたクレージーの記念すべき第一作にしてその後のクレージー喜劇の源泉となった傑作「ニッポン無責任時代」など、創刊号としてお約束の790円で手に入るのだからこれはお得。
東宝は、大手4社の中で唯一DVDの廉価化に消極的で、相も変わらず高額な単価設定となっているので、この価格はこの上なくコスト・パフォーマンスが高い。

作品については、今更言うまでもないだろう。
植木等扮する平均(たいら・ひとし)が、持ち前の調子良さと口の巧さ、機転でスイスイと会社や周りの難題をクリアしていく嘘みたいな展開に、クレージーの他のメンバーや東宝お姐さんトリオが絡む歌って踊れるお気楽コメディとなっている。
なんと言っても、植木のキャラが際立っていて、久しぶりに再見してみても、やっぱりC調で軽佻浮薄で超楽天的(笑)。正直、詐欺師まがりでお騒がせな事も色々とやらかしているのだが、どんな苦境に陥っても(と言うか、当人はそうは感じていないのだろうが〜笑)、底抜けに明るい切り替えの早さとあの高笑いを見ていると、まるで憎めないし、昭和のヴァイタリティを感じる。
ここら辺が、当時、高度経済成長期に生きる者たちに、笑いと共に羨望と共感を以て支持されたんだろうと思うし、公開後50年を経て、深刻な経済不況からようやく明るい兆しが見え始めた今日、どう受け入れられるか、ちょっと興味がある処だ。
(余談だが、青島幸男によれば、元々、植木の役柄設定は、もっと極悪非道でピカレスクであったらしいが、明朗健全路線の東宝がそれを許さなかったらしい)。

田波靖男と共に共同脚本としてクレジットされているのが、松木ひろし。
泉麻人が命名した“新人類”たる60年以降に生まれたテレビドラマ世代にとっては、後に、「気になる嫁さん」や「雑居時代」を始めとする石立鉄男ドラマや「池中玄太80キロ」の脚本家として忘れられない方である。

総天然色との謳い文句もまばゆい公開時ポスターに宣材コレクション、植木の付き人であった小松政夫の往年の淀長映画解説も嬉しい1冊だが、特典収録されている当時の世相ニュースでのロカビリー・ブームの女性たちの熱狂ぶりが凄い(笑)。
ライヴでの歓声ぶりなど序の口、ステージに駆けあがって歌手に抱きつく者、強引にキスを迫る者が後を絶たず、遂には歌手をステージ上から観客席まで引きずり降ろしてしまう者たちまで映し出される凄まじさで、これもやっぱり、昭和のヴァイタリティなのかと妙に納得する。

初DVD化作品も含まれる今シリーズ、講談社らしくいつかは“文芸映画特集”もやって貰いたいし、その際は、是非、70年代初頭の東宝の、庄司薫や柴田翔作品なんかも取り上げて欲しいのだけど、版権の関係で無理だろうか、、、。

マイ・ファ二ー・ヴァレンタイン ~スティング・アット・ザ・ムーヴィーズ
マイ・ファ二ー・ヴァレンタイン ~スティング・アット・ザ・ムーヴィーズ
出品者:玉光堂
価格: ¥ 2,419

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5つ星のうち 4.0 これほど映画に楽曲を提供しているロック・ミュージシャンが居ただろうか?, 2013/4/24
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
今やイギリスのみならず、全世界のミュージック・シーンの大御所であるスティング。ポリスのリーダーとして脚光を浴びていたのは我が学生時代だから、そのキャリアたるや堂々たるものであるが、ロック・ミュージシャンとしてのその素晴らしい業績については、自分は語る資格はない。

自分でも言及出来る事と言ったら、例えば、デビッド・リンチの魅惑的な失敗作「砂の惑星」での尖がった悪役としての怪演ぶりであったり、「ブライド」での自ら創造した人造美女ジェニファー・ビールズと恋に落ちてしまうフランケンシュタイン博士を演じた危うさであったり、つまり、思いのほか出演作が多い演技者としての部分についてである。
中でも、マイク・フィギスが監督し、ロジャー・ディーキンスがクールな映像を見せる「ストーミー・マンディ」でのジャズ・クラブのオーナー役は白眉で、全編ダークでハードヴァップなスプリットが漂うフィルムノワールの中で、主演のトミー・リー・ジョーンズやメラニー・グリフィスに負けない良い味を出していた。

さて、今アルバムは、そんなスティングが、映画の為に提供した楽曲たちを集めた1枚。
改めて、ラインナップを眺めてみると、ラヴストーリーからコメディ、サスペンスにアクション、ホラーに人間ドラマと、実にヴァラエティに富んだ作品が並ぶが、いわゆる世俗的に名作と呼ばれている映画は少ない。でも、これも、仕事を選ばない、じゃなかった(笑)、妙に権威主義ぶる事なく、どんなジャンルの映画にも惜しみなく素晴らしいパフォーマンスを捧げてくれる映画愛なのだと思いたい。
オープニングからエンドタイトル、主題歌から挿入歌まで、様々な使われ方をされているが、どんなシーンでも、彼の甘く渋い円熟した歌声が聴こえてくると、それだけでムーディになり、画面に艶が醸し出されるのがさすがだ。

スタンダードな名曲も多いが、収録されていて、個人的に嬉しかったのは、“Someone To Watch Over Me”と“VALPARAISO”。
それぞれ、リドリー・スコットの華麗なるフィルモグラフィ―の中では過小評価されているのが口惜しい「誰かに見られてる」と「白い嵐」のオープニングとエンディングで流れていた曲。

“ ♪ 私は森に迷い込んだ子羊みたい、誰か私を優しく見守って欲しい ♪ ”
夜のNY摩天楼に浮かび上がる高層ビルを俯瞰しながらオープニングに流れる前者なんか、それだけで観る者を眩惑させ、甘美な恋の迷宮に誘ってくれるし、本編では、エンディングに対で使われるロバート・フラック版も併せて、数多いガ―シュインの名曲の中でも屈指の陶酔感が味わえる映画になっていた。

スティング・ファンのみならずとも垂涎のアルバムだと思うし、映画ファンなら、押さえておいて良い1枚だ。
コメント コメント (2) | 固定リンク | 最新のコメント: Apr 26, 2013 4:11 PM JST


AGAIN アゲイン [DVD]
AGAIN アゲイン [DVD]
DVD ~ 宍戸錠
価格: ¥ 3,263

5 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 矢作俊彦による“極私的ザッツ・エンタテインメント”, 2013/4/24
レビュー対象商品: AGAIN アゲイン [DVD] (DVD)
1975年、1本の映画が話題になった。
その名を「ザッツ・エンタテインメント」。かってハリウッドで一世を風靡したMGMミュージカルの傑作たちが、アステア、ケリー、シナトラ、ミネリらの豪華スターのホストのもと、粋な構成と繋ぎで、お馴染みのナンバーと名場面と共に次々に紹介されるというそのアンソロジー映画は、全米のみならず、日本でも、シニア/ミドル・ファン層を中心に絶賛され、大ヒットした。
そして、その映画を鑑賞した映画ファンたちの間では、当然、自らの映画体験を基に、極私的夢の映画として、“それぞれのザッツ・エンタテインメント”を夢想していたと思うが、その“夢の映画”を具現化してしまった人物がいた。
御存知、矢作俊彦である。

日活アクションの大ファンであり、ハードボイルド作家としての自身の小説でもその匂いを発散させる矢作が、にっかつが創立70周年を記念して監督のみならず、脚本、構成まで担当し、撮り上げたのが今作。
チョイスされたのは、「紅の流れ星」、「嵐を呼ぶ男」、「ギターを持った渡り鳥」、「危いことなら銭になる」、「泥だらけの純情」、「拳銃は俺のパスポート」、「黒い賭博師」、「赤いハンカチ」などアクションのみならず、青春映画や文芸映画も交えての38本。
誰もが納得の傑作のみならず、知る人ぞ知るクセモノ作もラインナップされているのが、さすが一筋縄でいかない矢作らしい処だ。
宍戸錠がホスト役として、自身が演じてきた年老いた“エースのJoe”として、かっての仲間たちを捜し求めてさすらうと言うシチュエーションがニヤリとするし、個々の作品が未見でも楽しめると思う。
自分は、83年公開時、今アンソロジーでは意図的に?外された清順作品にハマっていたので、観ていて、なんで清順さんの映画が出てこないのか、釈然としなかったが、逆に、今作以降、日活アクションに興味を覚え、この後、一時期熱心に名画座で追いかけた事を思い出す。

昨年来、日活生誕100周年を機に、当時の作品が数多くDVDとして発売されているのに呼応したかの如く、絶好のタイミングでソフト化された今作。
かっての日活アクション・ファンなら、懐かしさで胸が熱くなるだろうし、まだ未知の者たちなら、日活アクションへの魅惑の扉を開ける契機となるのではないだろうか。

そして、また、それぞれが、新たな“夢の映画”を夢想していくのも、映画ファンの秘かな愉しみなんだろうな。
コメント コメント (2) | 固定リンク | 最新のコメント: Apr 26, 2013 3:17 AM JST


新編 われわれはなぜ映画館にいるのか
新編 われわれはなぜ映画館にいるのか
小林 信彦著
エディション: 単行本
価格: ¥ 2,940

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5つ星のうち 5.0 われわれはなぜ映画館にいるのか?, 2013/4/22
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
「キネマ旬報」と言えば、老舗中の老舗にして最も権威ある映画雑誌と評される事が一般的だが、一方で、正統的映画ファンたちのサロン的ムードと、業界の広報誌的な立ち位置がすっかり明確になったその紙面は、保守的で面白みに欠けると感じる映画ファンも少なくないのではないか。
自分も、今や年に一度の決算特別号しか購入しなくなったクチだが、そんなキネ旬が、かって刺激性とマニアック性を以て輝いていた時代があった。

それは、白井佳夫が編集長を務め、解任された70年代初めから半ばの時代、それこそ、権威中の権威で学術書みたいな肌触りの同誌を改革すべく、当時確固たる独自性を出していた「映画評論」の佐藤重臣、「映画批評」の松田政男の両編集長を常連ライターとして迎えただけでなく、それぞれの得意分野のマニアックさと反権力のスタンスも取り入れ、正に硬軟織り交ぜた紙面作りをしていた時代で、連載バカボンと呼ばれたその各連載記事には、例えば、山田宏一の「シネブラボー」があり、和田誠の「お楽しみはこれからだ」があり、石上三登志の「ぼくは駅馬車にのった」があり、竹中労の「日本映画縦断」があり、斎藤正治の「日活ロマンポルノ裁判ルポ」があった。

そして、作家小林信彦もまた、この時期キネ旬に連載を持ち始めた。それが、本書の第一章に収録されている「架空シネマテーク」である。

「仁義なき戦い」からマルクス兄弟、MGMミュージカル、ドン・シーゲルに黒澤明まで、全12回(内、今回収録分は10回)の短期連載であったが、映画へのマニアックな知識とディテールに拘り、その部分を切り取っての脚本、演出を論じてみせる洞察力と洒脱さは、自らが創作者であり、映画のみならず、文学、ミステリー、演劇、落語と、ショービズ&エンタメ文化への造詣の深さによるものだが、趣味人でピリッと効いた辛口批評は、その後も、「小林信彦のコラム」として受け継がれ、更に、キネ旬誌のみならず、様々な活字媒体で今日も続けられている。

“ビリー・ワイルダーの演出は一流だろうか?”とか、“ジョージ・ロイヒルの不思議な世界”とか伝説的な名編が復刻して読み返せるのが嬉しいが、個人的に今も忘れられないのが、“B級娯楽映画を観る楽しみ”のパート。
B級映画の定義付けとそれらへの愛情が横溢する考察の中で、小林がふと漏らした問いかけ。

それは、本書のタイトル名通り、“われわれはなぜ映画館にいるのか”と、それに連環した“人は幸せな時に映画を観るだろうか?”とのフレーズ。

70年半ばの時代の閉塞感と孤立感を感じさせる命題だが(そんな小難しい話ではないかも知れないが)、学生時代、一時期、真っ昼間の明るい時間から映画館に入り浸り、自分が何をすべきか、どこに進んでいくのか、孤独と鬱屈を感じながら、映画館の暗闇の中で映画と対峙していた者にとっては、胸を衝かれた問いかけであった。

本書には、他にも「映画評論」誌で、60年代から70年代に書かれたものを中心に、クリント・イーストウッド論や植木等との対談と言った近年に発表されたものを加え構成されている。

巻末の書き下ろしの「仁義なき戦い」シリーズと笠原和夫を巡る芝山幹郎との対談を楽しく読みながら、「仁義なき戦い」から40年、自分も小林信彦との出会いがその当時から始まっていた事を実感し、月日の流れと共に、今なお、映画への発言を続けている知識力と好奇心の旺盛ぶりに感服する。

刑事コロンボ傑作選(ホリスター将軍のコレクション/二枚のドガの絵) [DVD]
刑事コロンボ傑作選(ホリスター将軍のコレクション/二枚のドガの絵) [DVD]
DVD ~ コロンボ :ピーター・フォーク

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5つ星のうち 5.0 追悼、西沢利明, 2013/4/19
昭和の怪優三國連太郎が逝った少し前、もうひとり個性派の俳優が世を去った。

西沢利明、三國ほどには名声を博していた訳ではないが、永年テレビの世界を中心に活躍、恐らくある一定の年齢以上の方なら、名前は知らずとも顔を見れば、「ああ、あの俳優さん」と頷かれる事と思う。
ステレオ・タイプながら、クールなインテリ役を演じれば右に出る者は居ないほどサマになっていたし、時代劇やサスペンス・ドラマでの悪役ぶりは定評で、その姿を見つけた瞬間から、それだけで、こいつはワルだとの先入観を抱いたものだった(笑)。
声優としての仕事も多く、アンソニー・パーキンスやジャン・ルイ・トランティ二ョンも充てていた。
若い頃、月曜ロードショーで観た「Z」の検事役なんか、トランティ二ョンのクールさが、西沢の醸し出すムードと声と相俟って、実に素晴らしかったな。

で、「刑事コロンボ」である。
ところで、北村和夫、岸田今日子、高橋昌也、日下武史、中谷一郎、鈴木瑞穂、佐野浅夫、平田昭彦、滝田祐介、山田吾一、田口計、南美江らに共通する事項と言ったら、何が思い浮かぶか?
答えは、みな、「刑事コロンボ」シリーズの犯人役の吹き替えとして登場した事。
いわゆる声優ではない新劇、映画界の名優、個性派俳優たちが、実は、毎回小池コロンボと対峙し、丁丁発止の闘いを挑んでいたのである。
ここら辺も「刑事コロンボ」の魅力のひとつであり、原題より遥かにシャレた邦題の数々と共に、左近充洋を始めとする日本版NHKスタッフたちのセンスの良さが光っていたと今更ながら思う。

西沢は、シリーズ中、ふたりの犯人役の吹き替えを担当、述べ3つのエピソードに登場している。
ひとりは、「歌声の消えた海」と「さらば提督」のロバート・ヴォーンの、そして、もうひとりが、「二枚のドガの絵」のロス・マーティンの、としてである。
「さらば提督」は、ファンなら先刻御存知の通り、コロンボ・シリーズの中でも極めて特異なエピソードとして知られている。
つまり、倒叙ミステリーの方式を取っているシリーズの中で、唯一、犯人は誰か、とのミステリーの王道路線が取られ、コロンボが、最後に、容疑者全員を集め、犯人を名指す手の込んだ展開になっていたのだが、事前にメディアがその旨を大きく報じてしまっていた為に、折角の楽しみが半減してしまったのが懐かしいな(笑)。

「二枚のドガの絵」の犯人は、著名な美術評論家で大学で教鞭も取っているインテリ。
これが、遺産相続の対立から、大富豪で美術品コレクターである伯父を殺し、相続人である優しい叔母を犯人に仕立て上げようと画策、更に、思慕を抱いて殺人に協力した美大の女子大生まで撲殺すると言うシリーズ極めつけの悪人。
コロンボは、例によってのらりくらりと偏執的に犯人を追い込んでいくのだが、、、。
今作は、傑作が多いシリーズの中でも屈指の面白さと評されている。
それは、ラストの、コロンボが仕掛けるトリックの珍妙さと鮮やかさ、に拠るからだが、傲慢でエリート色ぷんぷん、自信満々の面持ちから一転、狼狽し、見苦しく取り乱すロス・マーティンの名演も大きな見ものであって、その歪み半べソとなった表情と共に、西沢の“名声技”もまた記憶に残るものであった。

謹んで、ご冥福をお祈りします。

戒厳令 [DVD]
戒厳令 [DVD]
DVD ~ 三國連太郎

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5つ星のうち 5.0 三國連太郎の凄み, 2013/4/17
レビュー対象商品: 戒厳令 [DVD] (DVD)
三國連太郎が亡くなった。

自分が物心ついた頃から、本当に、様々な作品で強烈な個性を発散し続けた俳優だった。
世間では、代表作として「釣りバカ日誌」シリーズも挙げられているが、三國が真価を発揮していたのは、もちろん昭和の憑霊の如くスクリーン上を徘徊、その身をフィルムに刻み込んだ怪物的俳優としてだったと思う。
「飢餓海峡」、「神々の深き欲望」、「復讐するは我にあり」、、、。日本映画史に残る傑作での名演ぶりが思い浮かぶが、個人的に、自分がまず三國を意識したのは、山本薩夫が、70年代に日活、東宝、松竹で撮った3本の作品、即ち、「戦争と人間」、「金環蝕」、「皇帝のいない八月」、でだ。
大陸浪人、悪徳政治家、古参陸将補。悪人だろうと善人だろうと、とても一筋縄ではいかない人間臭さとふてぶてしさ。
テレビ放映された「戦争と人間」を初見したのは10代半ばの頃だったが、当時、三國の顔と名前が一致しなかった者でも、あの豪華出演陣の中でも最も異彩を放っていた怪演ぶりに、思わず役柄をチェックし、三國の名前を記憶したものだ。
どんな役を演じても、三國にしか出せないファナティックでカリスマ的な存在感は、10代の映画ファンには極めて刺激的だった。

でも、一番のカリスマ的存在感と言えば、やはり、今作に於ける北一輝役であろう。

劇作家として著名な別役実が脚本を担当した「戒厳令」は、吉田喜重が、「エロス+虐殺」、「煉獄エロイカ」に続いてATGで発表した危険な革命家の挫折を題材にした不条理政治劇3部作として位置付けられているし、同時に、“観念的な芸術映画”と言う初期のATGの流れを汲んだ最後の傑作と呼ばれている。
過去2回鑑賞しているものの、難解で前衛的な吉田作品ゆえ、再見せず、レビューを書き込む事など到底出来ないが、クールな映像美の中、暗鬱と情念が湧き上がるような北一輝を、畏怖と怯えをも内に秘めながら、静謐に冷静に演じ切った三國の凄味だけは、今も脳裏に焼き付いている。
“天皇の軍隊”を利用して、“右”からの革命を目指しながら、結局“天皇の軍隊”に裏切られ、国家に殺された北一輝。
有名な、十字架に括りつけられて処刑される前の、「天皇陛下万歳!」を唱えるかと問いに、「私は死ぬ前には冗談は言わない事にしている」と目隠し越しに言い放ったその面構え。
凄すぎる役者である。

慎んで、ご冥福をお祈り致します。

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5つ星のうち 4.0 70年代アメリカ映画らしいタッチと、似て非なるムード, 2013/4/5
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映画「アルゴ」について語る時、やはり触れなければいけないのは、今年のアカデミー賞についてであろう。
賞レースの序盤戦では、「リンカーン」が絶対的有利との下馬評だった筈が、年が明け、各賞がどんどんと発表されているうち、それらの受賞の報と共に、「アルゴ」の評価は日に日に高まっていき、遂にオスカーまで獲得してしまった。
一部には、監督賞にノミネートすらされなかったベン・アフレックへの同情票が動いたなんて見方をされたが、いつになく政治的な背景を持つ硬質なノミネート作が顔を揃えた中、イランとの緊迫した関係下でのシビアな状況を、毎度お馴染みの軍事介入、武力行使ではなく、無血で解決した今作が支持されたのは、いかにもリベラル派が多いハリウッドらしい。
でも、作品賞のプレゼンターにオバマ大統領夫人までが登場したのは、些か悪ノリし過ぎで、ミシェル・オバマの登場は、才気ある毒舌司会者セス・マクファーレンから発せられるであろう差別ジョークとのバランスを取ったのかな、と思えたほどだ。
まぁ、「リンカーン」でも、「アルゴ」でも、「ゼロ・ダーク・シティ」でも、政治絡みではなくても「ジャンゴ」でも、民主党とオバマには、何らかの因果関係があった訳だから、どの作品が受賞しても、支障はなかったんだろうが、久しぶりに、政治色を感じる授賞式であった。

さて、作品についてであるが、既に、他のレビュアー諸氏が指摘されているように、題材となったイラン大使館人質事件が79年に勃発した故か、冒頭のWBのロゴマークからして当時のデザインが使用されているのを始めとして、随所に、我々が観て来た70年代アメリカ映画のタッチを感じる。
業界ネタも満載、登場人物たちのキャラも立っているとなれば、映画ファンにとっても、嬉しくなるのは当然で、CIA諜報部員が、6人の大使館員をカナダの映画クルーに見立てて、ロケハンしながらイラン国外へ脱出させる奇天烈な手段、しかも、実際のハリウッドの映画人(ジョン・チェンバース)まで巻き込み、実在の脚本を買い取り、スタッフ&キャストを決めて、豪華ホテルでの製作プレゼンにプレス発表まで仕組んでしまう手の込みようは、確かに、当時は、SF映画が隆盛を極め、「SW」の類似作品の企画が跋扈していた時代だから、これは信憑性がある(笑)。
かって、70年代を代表する硬派エンタメ映画であるピーター・ハイアムズの「カプリコン1」が、宇宙計画に頓挫したNASAが、窮余の策で、アリゾナの砂漠基地に、火星のセットを作り、宇宙飛行士たちに火星着陸と探査を演じさせ、それを世界中に実際の火星着陸として発信させると言う世紀の大捏造ショ―を描いてみせたが(モチロン、フィクションとして、であるが)、アメリカならやりかねない、そんな事もさもありなんと思わせるお話だ(笑)。

ネオ・ドキュメンタリー的な硬質感覚も70年代の懐かしさを感じさせる今作だが、“タッチ”は似ているものの、実は、その“ムード”は似て非なるもので、あの時代のアメリカ映画は、国家や権力に対して懐疑的であったり、批判的な物が主流であった。
今作を鑑賞しながら、自分もまた、アラン・J・パクラの「大統領の陰謀」を想起したが、実はもう一本脳裏をよぎった作品がある。
それは、シドニー・ポラックの「コンドル」。
あの映画も、中東の石油利権を背景に、CIAの一機関が舞台になっていたが、映画では、CIAは、はっきり得体の知れない巨悪として描かれていた。
あの時代のポリティカル・サスペンスで、CIAに好意的な作品は皆無に等しかったと思う。
製作のジョージ・クルーニーも、監督・主演のベン・アフレックも、今のハリウッドを代表するリベラルだが、彼らを以てしても、CIAに対してこのようなスタンスで映画を撮ってしまう事、時代の流れだよなぁ。
主人公が、作戦中止との組織命令に対して、苦悩し、最後は、命令に背いて作戦を強行するのは、“組織よりも個”の、あの時代の魂を感じたけど。

ベン・アフレックは、前作「ザ・タウン」でも、ジョン・フランケンハイマーを彷彿させるシャープなアクション映画をモノにしたが、今作でも、パクラのような硬派サスペンスもお手のモノである事が分かった。
あの時代のアメリカ映画を愛するひとりとして、次は、どんな作品を手掛けるのか、期待大だ。

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