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hide-bonさんが書き込んだレビュー (名古屋市)
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デビルズ・ゾーン [DVD]
デビルズ・ゾーン [DVD]
DVD ~ チャック・コナーズ

1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 量産されたB級スプラッターとは一味違うシュールで奇妙なホラー映画, 2013/2/17
レビュー対象商品: デビルズ・ゾーン [DVD] (DVD)
チャック・コナーズ、かって、MBLとNBAのアメリカが世界に誇る二大プロ・スポーツの選手であり、引退後、TVシリーズ「ライフルマン」で全米のお茶の間の人気者になった俳優だが、日本でのオンエア当時、自分はまだ生まれていなかった。
コナーズを初めて意識したのは、73年公開の「ソイレント・グリーン」。自然破壊と人口増大に伴う食糧危機を打開する為取られた恐るべき真実を探る刑事チャールトン・ヘストンに付きまとう組織のヒットマンの役処であったが、見るからに爬虫類的な面相と完全にイッテしまっている目つきが強く印象に残った事を覚えている。
以来、「マット・ボンバー」に代表されるファナティックでアブないキャラは強烈であり、だから、角川映画「復活の日」でアメリカ海軍の原潜艦長にして人道的指揮官として登場した時も、それを額面通り受け止めれず、鑑賞中、ずっと信用出来ないままであった(笑)。
で、今作のコナーズは、異常性格、異常性愛の殺人鬼。こちらの先入観を裏切らない役柄で、安心して観ていられる(笑)。

映画は、片田舎に週末のドライブを楽しむ為訪れる男1人、女3人の若者たちが、ある男の誘いに応じて、彼の住みかであるマネキン館に招かれる処から始まる。
今では廃墟と化している館内は、歴史上の偉人たちの蝋人形に混じって、無表情なマネキンたちが置かれ、薄気味悪いムードを醸し出していた。
館で一夜を明かす事になった若者たちだが、深夜、マネキンの目が光り、けたたましい笑い声を上げ、動き出す辺りから、惨劇の幕は切って落とされ、ひとりまたひとりと毒牙に掛っていく、、、。

バカンスを楽しむ能天気な若者たち、人里離れた不気味な屋敷、動くマネキン、異装、サイコパス、仮面の殺人者、この種のB級ホラー映画ではすっかり定石のシチュエーションながら、不気味さと間延びしたユーモラスなタッチが異色で新鮮。
特典映像でのデビッド・シュモ―ラー監督のコメントを聴くと、今作が全米でR指定ではなく、PG指定にされた事に大層失望したらしいが、鮮血ほとばしる残酷描写が過多なスプラッター映画群に比べ、人形と暮らし、人形を愛す異常心理の中でのシュールな感覚こそ、今作の魅力なんじゃないかと思う。
その反面、“想像して下さい、生きたまま蝋人形にされる恐怖を、、、”と言うのが、DVDパッケージでの惹句だが、でも、こちらの想像、恐怖のイメージよりも、遥かにその描写があっさりしていたように、ブラックではあるが、あまり怖くないのが玉にキズか。

日本人形の髪の毛が伸びた、日本人形が人を襲う。日本人にとっては、恐怖のイメージだと思うが、これがマネキンとなると、怖さよりも物悲しさが勝ってしまう。
それは、マネキンがより擬人化されながら、身体の部位も完全に与えられず、個性も持たされない悲しみを宿しているからなのかも知れないが。

犠牲になる女性のひとりにタニア・ロバーツ、メルヘンチックで悪戯さを感じる音楽は、デパルマ一映画でお馴染みの名手ピノ・ドナジオ。
奇妙なタッチのホラーとして一見の価値はあるが、アマゾンでの取引価格2万円弱はいかにも高いよ。
コメント コメント (4) | 固定リンク | 最新のコメント: Feb 18, 2013 5:41 PM JST


鍵泥棒のメソッド [Blu-ray]
鍵泥棒のメソッド [Blu-ray]
DVD ~ 堺雅人
価格: ¥ 3,651

9 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 前2作ほど凝ってはいないが、その分ウエルメイドでより万人向き, 2013/2/10
内田けんじは、今、日本映画界で最も次回作が待たれる映画作家だ。
彼が発表した2本の作品、即ち、「運命じゃない人」と「アフタースクール」は、市井の人々が、非日常のトラブルに否応なしに巻き込まれ二転三転する先が読めないストーリーと、観客を騙すミスリードな展開に、心地良く幻惑されながらも、張り巡らされた伏線の数々がジグソー・パズルの如くぴたりと填まる幕切れの鮮やかさに、思わず唸ってしまうような遊び心溢れる傑作だった。
最新作である今作もまた、嬉しい事にそれらの手法を生かしたうえで、前2作には希薄だったスイートでウエルメイドな要素を色濃く感じる作品に仕上がっている。

今回の主人公は、売れない俳優、裏社会の凄腕ヒットマン、それに結婚適齢期の女編集者。
一見、何の関連性も見い出せない三人の男女なのだが、貧乏俳優が失意の中の首吊り自殺に失敗し、“ひと仕事”終えたヒットマンが、銭湯で石鹸に足を取られ転倒し記憶喪失に陥り、女編集者が何が何でも一刻も早く結婚すると宣言した瞬間から、三人は運命の糸に絡み取られ、翻弄されていく、、、。

「鍵泥棒のメソッド」、“メソッド演技”から名の由来を取ったいかにも小演劇っぽいタイトルを持つ今作、サスペンスフルながら、シチューエーション・ラブ・コメディと呼ぶのが相応しく、前2作での時系列が縦横無尽に行き来するような複雑で凝りに凝った構成は抑え気味な分、より分かりやすく、万人に楽しめる作品になっていると思う。
クライマックスは、ハリウッドの有名なコン・ゲーム映画の名作からの頂きだが、もちろんひと捻りあって、一筋縄では終わらぬ魅力がある。

香川照之が素晴らしい。伝説的凄腕ヒットマンとして登場、一転、記憶喪失し、貧乏役者としての自分に困惑しながらも、真面目に几帳面さを以て誠実に取り組もうとする切なくもオカシイ一人二役ぶりで、何しろファースト・シーンでは冷酷非情な悪人との印象しかなかったにも拘わらず、いつしかどんどんと観る者に好感を抱かせる善人に見えてくるという儲け役なのだが、俳優としての底力を感じさせる。

内田作品は必要良最小限の事前知識を入れただけで鑑賞される事をお薦めしたいのでこれ以上は言わずがハナ、なのだが、去年公開された日本映画の中では屈指のエンタメ映画、面白さは保証したい。

なお、登場人物たちのキャラクターに深みを与える(笑)劇中それぞれが書く文字は、パンフレットによれば、香川と広末涼子は代筆者が、堺雅人は、監督の演出プランにそって本人が書いているとの事である。

遊星からの物体X ファーストコンタクト [DVD]
遊星からの物体X ファーストコンタクト [DVD]
DVD ~ メアリー・エリザベス・ウィンステッド
価格: ¥ 2,982

4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 期待してなかったが、意外と健闘している, 2013/2/5
ジョン・カーペンターの「遊星からの物体X」は、大好きな映画だ。でも、第2弾である今作は、正直、観る前はあまり期待していなかった。

それは、今まで、創り手が一変した続編で、1作目のクオリティが保たれた事が殆ど記憶にない事、そんな稀有なケースも、2作目に起用された者たちが、一作目同様に才気溢れる面々の手による場合に限ってとの印象があるからだ。

増して、第1作が公開されて既に20年が経過し、それも、未知の領域である後日談ではなく、ファンであれば結末は先刻ご承知の前日談を描くと言うのだから、当方と同じ気持ちを持たれていた方は結構お見えになったんじゃないかな。

で、メディアの紹介や批評に触れる事もなく、地味な公開を経て、DVD化を期に鑑賞となったのだが、これが思わぬ健闘ぶり。

限定された空間、同一の設定、決められた結末の中、創作者としてのオリジナリティは放棄しましたとばかり、カーペンター版をそっくり踏襲したまるでリメイク作みたいなのだが、前作のファンなら、お約束の展開に、やってるやってるとニンマリされるんじゃないかと思う。

それに、サスペンスショッカ―の傑作であったリドリー・スコットの「エイリアン」を換骨奪胎、一転、続編では戦争アクションとして作り上げてしまったジェームズ・キャメロンみたいな人材は、中々居ないのだしね(笑)。

前作の良さを踏襲するならばと、登場人物を倍近くに増やし、次は誰がやられ、誰に乗り移っているのか興味を倍増、クリエーチャ―の造型も、前作に敬意を表しつつ、更にエスカレートしている。

これまた前作同様大きなポイントとなった人間とエイリアンとを判別する方法、今回も血液検査かと思いきや、ひとひねりあって取られた手法は、付け焼刃的であるがゆえに、単純にして妙。

アメリカ人女性を主人公の生物学者に据えたのも常套ながら賢明の選択で、ノルウェー語から英語への転換を、より無理なく演出してみせた。

皆さん、特に思い入れがあるカーペンター版との繋がり、自分もどう繋がっていくのか?、逃げる“犬”をヘリコプターで追跡しながらライフルを撃ち続ける人物は誰なのか?、推測しながら観ていたのだが、上手く繋げてみせたね。あの不気味なテーマ曲も流れるし(笑)。
コメント コメント (4) | 固定リンク | 最新のコメント: Feb 7, 2013 1:05 PM JST


白い恋人たち [DVD]
白い恋人たち [DVD]
DVD ~ クロード・ルルーシュ
価格: ¥ 3,946

7 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 フランシス・レイのテーマがあまりに有名だが、クロード・ルルーシュ作品です。, 2013/2/4
レビュー対象商品: 白い恋人たち [DVD] (DVD)
東京、グルノーブル、ミュウヘン。夏季、冬季の違いはあれ、64年から72年に掛け開催されたオリンピック大会の、映画との関わり合いと言ったら何か?
それは、かっては当たり前の如く大会毎に製作されていたオリンピックの記録映画に、それぞれ市川崑、クロード・ルルーシュ、ミロシュ・フォアマンら優れた映画監督らが起用され、記録映画の枠を超えた作家性の強い作品が作られた事だ。

「白い恋人たち」、今では、映画のタイトルではなく札幌の銘菓でしょ、と思わずボケてしまいたくなるほどだが、これは、68年冬季グルノ―ブルオリンピックを、「男と女」で大ブレークを果たしたルルーシュが映画化したもの。
日本だけではなく、世界的にも賞賛と物議を醸した市川崑の問題作「東京オリンピック」の流れを踏襲したかのような競技や勝者だけを追ったドラマだけでなく、そこに集う者たちの喜怒哀楽や躍動感を描いた作品だったと思うが、鮮明に記憶に残っているのは、やっぱりフランシス・レイのテーマ曲。

自分が外国映画を観始めた70年代前半は、映画音楽家と言えば、一般的には、まずは、フランシス・レイや二―ノ・ロータで、今作のメイン・テーマ「フランスの13日間」も、その美しく詩情的なメロディを、テレビ、ラジオ、CMや、街中の至る処で聴く事が出来たし、後に、今作がテレビ放映された時も、まずは、あの有名な旋律は、劇中どのように使われているのかが興味があり、チャンネルを合わせたものだった。
実際、映画では何度となく流れ、ドキュメンタリーながら、ナレーションが一切入らず、音楽と流麗なカメラワークでシークエンス毎に繋いでいく手法は、如何にもルルーシュらしい感覚だと思った。

大会で脚光を浴びた地元フランスのアルペンの英雄ジャン・クロード・カイリ―は、今作公開後俳優に転身。後に、「フレンチコネクション2」で、ジーン・ハックマンのポパイ・ドイル刑事と、ベルナール・ブレッソンのフランス人刑事の、米仏カルチャー・ギャップをユーモラスに表現したやり取りの中で、ジーン・ケリーと並んで俎上に挙げられたあのカイリ―である(笑)。

同じく68年、パリでは5月革命が起き、ゴダールやトリュフォーらと共に、ルルーシュもカンヌ映画祭を糾弾、映画祭を中止に追い込んだ。一方で、極めて商業主義的な映画を撮りながら節操がないと、随分批判を浴びたようだが、今、思えば、時流に乗った流行感覚に秀でた監督であった。
「冒険また冒険」、「男と女の詩」、「マイ・ラブ」、、、。70年以降のルルーシュ作品は、今日ではまるで観る事が出来ないが、今だからこそ、再見してみたいものだ。

11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち [DVD]
11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち [DVD]
DVD ~ 井浦新
価格: ¥ 3,654

8 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 三島由紀夫事件の全容や背景がコンパクトに纏められている, 2013/2/2
若松孝二が、三島由紀夫自決を題材に映画化する、そのニュースを聴いた時、如何にも若松監督らしい、と思った。
最近の発言で、監督は、イデオロギーに関係なく、本気で社会を変革しようとする若者の純粋さと熱情、一途さにシンパシ―を感じておられる旨の発言を繰り返しされていたし、年を重ねる毎に、どんどんと“社会派”と呼ばれるような作品を発表される中、今や忘れ去られつつある高度経済成長期の後の、70年前後の喧騒の昭和の熱さと情念をしっかりとフィルムに残したいと思われているよう感じていたからだ。
その一方で、三島由紀夫は、当時、文学者としても文化人としてもカリスマであり、民族主義者ながら極めつきのダンディであり、破天荒であり、つまりは時代の寵児であった事は間違いなく、若松はどんな斬り方をするのか、興味があった。

で、映画が始まって、そう言う事なのかと感じた。
三島自決から遡る事10年前の、社会党委員長浅沼稲次郎刺殺事件の暗殺者山口二矢の獄中自殺に始まり、それから数年後、学内で吹き荒れる学費値上げ反対ストを契機に日増しに高まる学生運動に憂慮する早大生森田必勝の日学同加入に繋がる導入部。
つまり、今作は、三島のみならず、その周辺にいた若者たちを描いた作品でもあったのだ。

67年、自らの私立軍隊である楯の会を設立させた三島は、隊員たちを引き連れて何度も自衛隊へ体験入隊、悲願である自衛隊の国防軍化に向けての第一歩を踏み出すが、激化する学生運動、新左翼の隆盛ぶりと、警察と自衛隊の力関係に、強い危機感と焦燥感を抱いていく、、、。

絶えず、“死”を意識していた三島そのままに、全編死の匂いが充満する今作、三島文学や思想性については深く描かれてはいないが、タイトル通り、70年11月25日の自決に至るまでの事件の流れが、コンパクトに纏められているので分かりやすく、あの事件の全容や背景を知る事が出来る。

有名な東大駒場キャンパスでの、東大全共闘との公開討議や、市ヶ谷駐屯地での決起を促す最期の演説についても、一部忠実に再現されているが、映画的な脚色ももちろんあって、例えば、決行日、市ヶ谷に向かう道中での、「昭和残侠伝」での花田秀次郎よろしく“唐獅子牡丹”を歌うのは史実通りだが、68、69年の10.21国際反戦デー当日に、三島が、楯の会隊員たちを集め、某所で会合を行っているシーンは事実とは異なるらしい。

椎根和の「平凡パンチの三島由紀夫」によれば、実際は、三島は、2年続けて、「平凡パンチ」の企画で現地に赴き、機動隊側から、デモ隊の動きをずっと見ていたとの記載がある。
同書によれば、69年当時、「平凡パンチ」誌上では、三島は、長嶋茂雄、三船敏郎、石原裕次郎らを抑え、日本のスーパースター第1位に選ばれていたという!(笑)。
その華麗なる文化人としての顔は、今作では封印されているのは、作品上やむを得ない処か。

周知の通り、映画監督若松孝二は不慮の事故により、昨年末亡くなられてしまった。
死の迎えるまでのこの1年間で3本もの新作を撮り上げ、更に、山口二矢を主人公にした作品、そして、福島第1原発事故と東電の責任を追及する反原発映画も視野に入れられていたと言う。
正に、生き急いでおられたかの如くの多作ぶりだが、その思いを胸に刻みつつ、遺作「千年の愉楽」を待ちたい。

L.A.大捜査線/狼たちの街 [Blu-ray]
L.A.大捜査線/狼たちの街 [Blu-ray]
DVD ~ ウィリアム・L・ピーターセン

1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 ウイリアム・フリードキン、最後の野心作, 2013/1/28
70年代は、その後のハリウッドを牽引する優れたフィルム・メ―カ―が多数輩出した事で知られている。
その中で、当時、「エクソシスト」や「フレンチコネクション」と言う時代を代表する傑作を放ち、名声を得ながら、その後低迷してしまったのが、ウイリアム・フリードキンである。
未だ現役で作品を発表しながらも、その名前が映画ファンの間で取り立たされる事は、今日では殆どなくなってしまったが、フリードキンが、最後にその才気を発揮したと思えるのが、85年製作の今作である。
既に、一部では、熱烈なファンを持つ今作だが、公開時はフリードキン人気にも翳りが出ており、キャストも地味だった為、さほど話題にもならなかったが、運良くロードショー公開時に鑑賞して、その面白さに唸ってしまった。

ドラマは、贋札造りの男に同僚を殺された捜査官の狂気にも似た捜査ぶりが、執拗なまでに描かれる。
捜査官の犯人逮捕に向けた執念は凄まじく、拘束中の鍵を握る男をリスク覚悟で強引に保釈させたり、贋札取引による犯人の現行犯逮捕を目論見、資金捻出の為、別の犯罪組織の裏金を強奪したりと、明らかに常軌を逸した行動の数々を、フリードキンは殺気と暴力を以て描き続ける。
それは、まるで、伝説にもなっている自身のサディステックな演出ぶりそのままに、、、。

主演の捜査官に、ウイリアム・L・ピーターゼン、贋札造りの男に、ウイレム・デフォー。
デフォーは、順序としては今作が確か日本初お目見えで、爬虫類の如きそのツラ構えが強烈に残っているのだが、再見してみると、主演のピーターゼンよりもマトモであった事が良く分かる(笑)。

ハリウッド映画お馴染みの陽光降り注ぐ健康的なカリフォルニアとはかけ離れたくすんで乾いた映像は、名手ロビー・ミュラー。ジョン・カサヴェテスの「グロリア」で、やはりNYのざらざらとした雑踏の雰囲気を醸し出した映像に続いて、猥雑なLAが活写される。
(タイトルバックに映し出される赤い夕陽の深さはどうだ!)

中盤に、「フレンチコネクション」も凌ぐほどの度肝を抜くカーチェイスが用意されているが、そう言えば、今作は、それまでのフリードキンの諸作品のエッセンスが盛り込まれたかのような印象を受ける。
目的の為には、法も逸脱する主人公の病的なまでに直情な精神は、「フレンチコネクション」や「クルージング」でのジーン・ハックマンやアル・パチーノと同様だし、所々に、「エクソシスト」の如きオカルトチックで悪魔的なムードが漂っている。
のっ引きならぬ状況に追い詰められ、死をイメージする男たちの苦悶の表情は、まるで「恐怖の報酬」のロイ・シャイダ―みたいだし、意味なく男性たちのオール・ヌードが挿入されているのは、もちろん、「真夜中のパーティ」や「クルージング」だ(笑)。

堅実で誠実な警察官ながら、主人公とコンビを組まされたばかりに、どんどんと窮地に追い込まれてしまうお気の毒な刑事にジョン・パントゥ。しかし、これとて、ラストに、フリードキンらしいオチがついている。
正に、不良性感度たっぷり、灯台もとくらしなのだ。

ピーターゼンは、今作と、「刑事グラハム」(トマス・ハリスの「レッド・ドラゴン」の最初の映画化)ぐらいしか印象に残っていないが、今作の“あのシーン”によって、我が生涯記憶に残る俳優となった。
(“あのシーン”がどれを指すのかは、観終わった方なら、多分同意して頂けるであろう)

クライム・アクションの傑作として、未見の方には是非お薦めしておきたい。
その際は、なお、ニック・ノルティ主演の同名邦題映画があるので、ご注意を!
コメント コメント (3) | 固定リンク | 最新のコメント: Jan 30, 2013 10:53 PM JST


絞死刑 [DVD]
絞死刑 [DVD]
DVD ~ 佐藤慶
価格: ¥ 4,096

4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 時代は移り変わったが、“68年の映画”にして、大島映画の代表作, 2013/1/26
レビュー対象商品: 絞死刑 [DVD] (DVD)
大島渚作品と初めて出会ったのは、79年有楽町日劇文化。ATG映画製作10周年記念プログラムの1本としてリバイバル公開されていた今作とであった。
上京して間もなく、名古屋とは比べ物にならないほどに刺激的な環境の中、アメリカ映画ばかりを観ていた者としても、背伸びして、理屈っぽく映画を語りたいとの小生意気な欲求を持っていた頃だったと思う。
で、死刑制度の賛否を問いつつ、いきなり刑務所内の死刑場から、受刑者に刑が執行されるまでのプロセスが克明に語られる恐るべき冒頭シーンから、その後、一転、思いの外コミカルに進められる展開に、笑いを噛み殺しながらも、最後は、その挑発的で反国家的なメッセージ性に打ちのめされてしまった。
映画館を出た後、銀座まで歩いて、キネ旬の「世界の映画作家.大島渚」を思わず購入し、巻末に採録されていたシナリオを読み返し、改めて、その斬新な手法と尖鋭なテーマ性に、日本にも、こんな映画があったのかと衝撃を受けたのを覚えている。

今作は、当時世間を騒がした実際の事件を題材に、「死刑制度」、「在日」、「性と想像力」、そして「天皇制」にまで踏み込んだ作品。
大島らしい観念的、論理的、官能的なイメージが蔓延するが、やはり特筆すべきなのは、刑を執行したものの失敗、心神喪失状態に陥った死刑囚を、正常な罪の意識を持った状態にしてから、再度刑を執行しようと右往左往する立ち会いの役人たちによるブラックコメディの部分であって、哄笑しながらも、次第に作品のテーマに向かい合わされ、刃を突きたてられた気分になる。
ATG1000万映画(これはATGと製作者側が、500万ずつ折半して資金を出し合うシステム)として始まった第1作として有名だが、低予算を逆手に取った美術監督戸田重昌のセットが見事。
自己を取り戻した死刑囚Rが、国家の象徴である検事の小松方正と対峙するラストは、68年という変革と喧騒の時代の、作り手たちの熱い高揚感が感じられる。
(パリでは5月革命が起こり、カンヌ映画祭をゴダールやトリュフォーが糾弾、中止に追い込んだ年でもあった)

大島渚の逝去で、久しぶりにマスメディアにその名前と功績が讃えられるこの頃だが、代表作として、「愛のコリーダ」や「戦場のメリークリスマス」ばかりが挙げられている。
確かに、センセーショナルな話題性からすれば、この2本なんだろうが、闘う映画監督大島渚の作家性が、最も色濃く顕現化しているのは、今作ではなかったか。
創造社は大島を中心に結成され、当時、映画界に於いて、最も先鋭化した前衛集団としての自負と畏敬が醸し出されていたらしいが、そのメンバーも、大島だけでなく、田村孟、佐々木守、戸浦六宏、渡辺文雄、佐藤慶、小松方正ら殆どが既に世を去り、長年の同志だった若松孝二も、昨年急死した。

時代は移り変わり、この当時、インテリ層に支持されていた事、信じられていた事が、懐疑的、否定的に捉えられる事が主流になった。
今回、再見してみると、確かに硬直感と空虚さを感じるが、それでも、自分は何をすべきか、誠実に映画に向き合う事の意味を模索しながら、世間からどんどん乖離していきながらも、怒りと拘りを胸に抱きながらその作品群を追い続けた事、やっぱり懐かしいし、生きていく上での、血となり、骨となった気がする。

謹んで、ご冥福をお祈り致します。

フューリー [DVD]
フューリー [DVD]
DVD ~ カーク・ダグラス

1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 デ・パルマ初期作品群の中では失敗作との位置付けながら、やっぱりカルト作, 2013/1/22
レビュー対象商品: フューリー [DVD] (DVD)
ジョセフ・ゴードン・レヴィット&ブルース・ウイルス共演の今話題のSFサスペンス「ルーパー」で、鍵を握る少年が、身の危険を察した時、憎悪と恐怖から、自身の持つ凄まじい超能力を発露させ、その対象である「組織」の男を浮遊させるだけでなく、全身の毛穴から血を噴出させたうえで惨殺させるシーンを観て、今作の事を思い出した。

「悪魔のシスター」、「ファントム・オブ・パラダイス」、そして「キャリー」とカルト作を連打していたブライアン・デ・パルマが、その才気を認められて、いよいよメジャーな大作を手掛ける事になったのが、77年製作の今作である。

ずば抜けた超能力を持つ息子を持つ米機密機関の敏腕情報部員が、その強大な力を政治的脅威として利用しようと目論む組織の同僚にして親友から、否応なしに息子と引き離され、命を狙われる。
以下、物語は、息子探しと復讐に取り憑かれた主人公の執念と、組織に囲われるもう一人の超能力者である少女の苦悩と孤独を交互に描きつつ、壮絶なクライマックスへと突入する。

当時、ハリウッドでは、ニューシネマの流れを汲んで、スピルバーグ、ルーカス、スコセッシ、ミリアスら若き才能が次々と台頭してきた頃であり、大プロデューサーであったフランク・ヤプランズとしても、大いなる期待を持って、デ・パルマを起用したと思う。
実際、スタッフ&キャストも強力で、カーク・ダグラス、ジョン・カサヴェテスに、デ・パルマ組のエイミー・アービング、チャールズ・ダーニング、ウイリアム・フィンレイ、デニス・クランツら、撮影リチャード・H・クライン、音楽ジョン・ウイリアムズ、特殊メイクアップにリック・ベイカー、ディック・スミスらが顔を揃えた。

サスペンス・アクション劇ではあるが、前作「キャリー」が、母子の凄まじい愛憎が描かれていたのに呼応すべく、今作では、父子のエディプス・コンプレックスをテーマに据えた激しい葛藤のドラマになっている。
「キャリー」の唯一の生き残り者として、ベッド上での“あの悪夢”に苛まれる少女を演じたアービング。今回もまた、ベッド上から目が覚めた後のラスト・シーンで、観る者を、再びトラウマに陥らせるような衝撃のショットが用意されている。

デ・パルマの華麗なる映像テクニックも相変わらずの冴えを見せるが、しかしながら、多くの登場人物が絡み合う複雑さと、あまりに無茶なシークエンスの連続で、何とも荒っぽく、粗雑さを感じさせるのも確か。
ダグラスが追っ手から逃げる為アパートメントに潜伏する件から、非番警官を巻き込んだその後のカーチェイスのシークエンスは、間延びしたユーモア感が感じられるが、全体の流れからすると如何にも無駄ではないか。
ダグラスと息子役のアンドリュー・スティーブンスの父子の愛情の深さも“紙一重”、巻頭、いきなりむんずと裸体で抱き合ってるふたりの抱擁など、ちょっと引いてしまうような描写だ。

この後、デ・パルマは、「アンタッチャブル」まで、スタイリッシュな傑作を連打していくし、デ・パルマのフィルモグラフィーの中では、決して重要視されていない位置付けなんだろうと思うが、でもね、何か、ヘンテコなんだけど、不思議と折に触れ、観たくなる作品。

「ルーパー」の監督であるライアン・ジョンソンも、きっと今作へのオマージュとして、あのシーンを撮ったのではないか。

映画パンフレット 5月の7日間(1963作品) 発行所:(株)大阪映画実業社(A4版) 監督 :ジョン・フランケンハイマー 出演: バート・ランカスター
映画パンフレット 5月の7日間(1963作品) 発行所:(株)大阪映画実業社(A4版) 監督 :ジョン・フランケンハイマー 出演: バート・ランカスター

2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 フランケンハイマー、ランカスター、ダグラスの顔合わせなのに、、、。, 2013/1/17
= 耐久性:5つ星のうち 4.0  = 楽しさ:5つ星のうち 4.0  = 教育的価値:5つ星のうち 4.0 
ロバート・アルドリッチ初の研究本であり、評伝である「アルドリッチ大全」の序文で、バート・ランカスターが、その作家性と業績を讃えて、敬意を表していて心打たれるのだが、一方で、ランカスターが、生前賞賛したかった映画作家は、他にも居た筈、との思いが脳裏をよぎった。

ジョン・フランケンハイマーは、アルドリッチ同様、30年間に渡って、ダイナミックで骨太なアクション映画を撮り続けた。中でも、ランカスターとは、監督デビュー作の「明日なき十代」以降、計5作もコンビを組んでいる。
ふたりには、痛快な逸話があって、監督第2作の「終身犯」の撮影時、既に大スターだったランカスターから、「こんな老いぼれたキャラを演じるのはまっぴら御免だから、もっと格好良く書き直せ」と命じられた時、「スターの我儘を聴いていて良い作品が出来るか!黙って監督の指示に従え!」と一喝して、一言も反論させなかったらしい(笑)。でも、その確固たる姿勢が、ランカスターに気に入られ、その後、「5月の7日間」、「大列車作戦」、「さすらいの大空」と黄金コンビは続くのである。
不屈の魂で信念に生きる執念の塊のようなお馴染みの主人公を、描き、演じてきたふたりの、正に作品世界そのままの気骨溢れる逸話だと思う。

今日、「終身犯」と「大列車作戦」については、DVDにて鑑賞する事が出来るが、豪華出演陣によるポリティカル・サスペンスでありながら、未だ商品ソフト化すらされていないのが、「5月の7日間」である。

舞台は60年代初頭、米ソ冷戦の最中、ハト派の大統領が調印したソビエトとの核廃絶条約は、米国民世論を二分化するだけに止まらず、対ソ強硬派のタカ派将軍に共和党代議士も加わっての、現政権転覆を企てるクーデター計画へと発展する。

当時は、キューバ危機を経て、米国内で、核の恐怖が現実的問題として深刻化していた時代で、共産主義への脅威と共に、為政者や軍部のファナティックな暴走が、核戦争のボタンを押すのではとの危機感が、識者の間では蔓延しており、リベラルなフランケンハイマーもまた、共産主義のマインド・コントロールの恐怖を描いた「影なき狙撃者」とのバランスを取ったかの如き、今作では、自国の恐怖を顕現化させてみせた。

ランカスターとカーク・ダグラス、当時のハリウッドを代表するタフガイふたりが、軍部の将軍と大佐として対峙する今作だが、決して肉弾戦になる訳ではなく、映画はミステリー劇の様相を見せる。
今作のランカスターは、アルドリッチの「合衆国最後の日」で演じたハト派退役将軍とは真逆で言わば悪役なのだが、リベラルのひ弱さを嗤い、国家の存亡を訴える軍人として存在感があった。
ダグラスは探偵的役回り、思想的には将軍に賛同するものの、大統領と上院の決定事項には軍部は従わなければならないとの立場を堅持する良識ある軍人、ランカスターのみならず、奸智長けた政府高官とも対峙していく。
そう言えば、ダグラスもまた、ある映画を撮影中、その新鋭監督を評して、当時「才能あるクソったれ!」と吐き捨てた逸話があった。ある映画とは「スパルタカス」、新鋭監督とは、もちろんスタンリー・キューブリックの事だ(笑)。

映画的には、ラストの、ランカスターと大統領役の名優フレドリック・マーチの対決が最大の見もので、今、見直すと、民主主義と合衆国憲法の理念から、迫力あるランカスターを辞職に追い込もうとするマーチの弾劾ぶりが、実に毅然としてみえるのは、我が国のリベラル政権の情けなさを見てしまったからなのか、、、。

前述以外にも、エヴァ・ガードナー、エドモンド・オブライエン、マーチン・バルサムらが共演する今作、同じくニューヨーク派のシドニー・ルメットの「未知への飛行」やオット―・プレミンジャーの「野望の系列」、そしてキューブリックの「博士の異常な愛情」など当時製作されたポリティカル・サスペンスの重要作として押さえておいて良い作品。

フランケンハイマー作品は、「フィクサー」も「セコンド」も、未だ商品ソフト化されないままだ。
どれも、これも、いつか、再見出来る事を!。

ロバート・アルドリッチ大全
ロバート・アルドリッチ大全
アラン・シルヴァー著
エディション: 単行本
価格: ¥ 4,410

10 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 アルドリッチの評論集、それだけで望外の喜び、なのだが、、、, 2012/12/31
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
ロバート・アルドリッチ、言わずと知れた50年代半ばから80年代初頭に掛けて、ハリウッドで、硬派な反骨精神溢れる男性派映画を中心に傑作を連打し、映画ファンたちを唸らせ、心踊らせた名匠。

アマゾンの映画ソフトのレビューでも、アルドリッチ作品に寄せられたレビュアーの方々の熱い叫びを拝読するにつけ、本当にアルドリッチ・ファンは多いんだなと実感するのだが、にも拘らず、その評伝について、日本では記憶にある限り刊行された事はなかった。
かの蓮實重彦や金井美恵子から山田宏一、川本三郎に黒沢清、井筒和幸、更に小西康陽、芝山幹郎ら、映画を語らせたら素晴らしい担い手たちが、様々な活字媒体で賞賛してきたのに、である。
それだけに、今回、没後30年に、期せずしてリバイバル公開中の「カリフォルニア・ドールズ」や「合衆国最後の日」に併せたかの如く、600ページ近くに及ぶ大全が刊行された事はファンとして望外の喜びだ。

まずはその堂々たる巨体と豪快な面構えが装丁一杯に拡がる表紙からして嬉しいじゃないか!
内容は、その生涯と長編論文、ロング・インタビューからなるアメリカで既刊済の“”What Ever Happened to Robert Aldrich?”を主軸に、詳細な全作品解説他が増補される構成で、より「大全」との名に相応しいヴォリュームとなっている。

一読後、まず感じたのが順調そのものと思えたその映画人生の中に、意外なほど不遇な事が多かったと言う事。
大手メジャーを移り渡り、幾多の作品の助監督を務めた後、映画監督デビュー、4作目の「ヴェラクレス」で頭角を現し、以後述べ30本の作品を撮り、自らのスタジオを経営する傍ら、全米監督協会会長の重責を果たし、同業者たちの待遇改善に奔走する。
政治的には筋金入りのリベラリストで、多くの映画人たちに慕われ、そして多くの素晴らしい作品を発表しながら、その一方で、製作会社との相次ぐ確執に興行的には成功とは言えない作品が大半であったという厳しい現実。
アルドリッチが自身の作品たちについて語る映画業界に対しての辛辣にして慨嘆なコメントの数々。この稀代の名監督を以てしても、映画が産み落とされるまでの過程での困難さが認識出来るし、痛切な思いを感じずにはいられない。

資料的価値の高さを感じさせる1冊で、訳者の宮本高晴、解説の桑野仁の両氏にも敬意を表したいのだが、ただし、アラン・シルヴァーによる長編論文は力作だが、いかにも学術的で怜悧。なにか、お勉強しているような感覚で居心地が悪い。

アルドリッチ研究本と言った趣が強い本書だが、個人的には、アルドリッチ映画を評する際は、愛する映画たちに対して臆面もなくその思いを捧げる熱いラブレターのようなものであって欲しい。
(本書の冒頭に掲げられた山田宏一の「永遠のロバート・アルドリッチ」の素晴らしさを見よ!)
かって、小西康陽は、アルドリッチ映画を評して、“身をよじるほどの面白さ”、“面白過ぎてくたくたになる”、“アルドリッチ映画の楽しみは、正しく生理的に記憶されるべきだ”と形容した。
同感である。
「ロンゲスト・ヤード」でも、「北国の帝王」でも、「特攻大作戦」でも、「飛べ!フェニックス」でも、そして「カリフォルニア・ドールズ」でも、僕たちはその悶絶するような面白さの中に映画的昂奮を覚えながら、しっかりと、フィルムの断片とそのスピリッツを心に刻み込み、脳裏に焼きつけてきた。

高揚感に溢れ、魂を鼓舞するようなそんな評論を、やっぱり読んでいたいと思うのだ。
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