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5つ星のうち 5.0
ウイリアム・フリードキン、最後の野心作, 2013/1/28
70年代は、その後のハリウッドを牽引する優れたフィルム・メ―カ―が多数輩出した事で知られている。
その中で、当時、「エクソシスト」や「フレンチコネクション」と言う時代を代表する傑作を放ち、名声を得ながら、その後低迷してしまったのが、ウイリアム・フリードキンである。
未だ現役で作品を発表しながらも、その名前が映画ファンの間で取り立たされる事は、今日では殆どなくなってしまったが、フリードキンが、最後にその才気を発揮したと思えるのが、85年製作の今作である。
既に、一部では、熱烈なファンを持つ今作だが、公開時はフリードキン人気にも翳りが出ており、キャストも地味だった為、さほど話題にもならなかったが、運良くロードショー公開時に鑑賞して、その面白さに唸ってしまった。
ドラマは、贋札造りの男に同僚を殺された捜査官の狂気にも似た捜査ぶりが、執拗なまでに描かれる。
捜査官の犯人逮捕に向けた執念は凄まじく、拘束中の鍵を握る男をリスク覚悟で強引に保釈させたり、贋札取引による犯人の現行犯逮捕を目論見、資金捻出の為、別の犯罪組織の裏金を強奪したりと、明らかに常軌を逸した行動の数々を、フリードキンは殺気と暴力を以て描き続ける。
それは、まるで、伝説にもなっている自身のサディステックな演出ぶりそのままに、、、。
主演の捜査官に、ウイリアム・L・ピーターゼン、贋札造りの男に、ウイレム・デフォー。
デフォーは、順序としては今作が確か日本初お目見えで、爬虫類の如きそのツラ構えが強烈に残っているのだが、再見してみると、主演のピーターゼンよりもマトモであった事が良く分かる(笑)。
ハリウッド映画お馴染みの陽光降り注ぐ健康的なカリフォルニアとはかけ離れたくすんで乾いた映像は、名手ロビー・ミュラー。ジョン・カサヴェテスの「グロリア」で、やはりNYのざらざらとした雑踏の雰囲気を醸し出した映像に続いて、猥雑なLAが活写される。
(タイトルバックに映し出される赤い夕陽の深さはどうだ!)
中盤に、「フレンチコネクション」も凌ぐほどの度肝を抜くカーチェイスが用意されているが、そう言えば、今作は、それまでのフリードキンの諸作品のエッセンスが盛り込まれたかのような印象を受ける。
目的の為には、法も逸脱する主人公の病的なまでに直情な精神は、「フレンチコネクション」や「クルージング」でのジーン・ハックマンやアル・パチーノと同様だし、所々に、「エクソシスト」の如きオカルトチックで悪魔的なムードが漂っている。
のっ引きならぬ状況に追い詰められ、死をイメージする男たちの苦悶の表情は、まるで「恐怖の報酬」のロイ・シャイダ―みたいだし、意味なく男性たちのオール・ヌードが挿入されているのは、もちろん、「真夜中のパーティ」や「クルージング」だ(笑)。
堅実で誠実な警察官ながら、主人公とコンビを組まされたばかりに、どんどんと窮地に追い込まれてしまうお気の毒な刑事にジョン・パントゥ。しかし、これとて、ラストに、フリードキンらしいオチがついている。
正に、不良性感度たっぷり、灯台もとくらしなのだ。
ピーターゼンは、今作と、「刑事グラハム」(トマス・ハリスの「レッド・ドラゴン」の最初の映画化)ぐらいしか印象に残っていないが、今作の“あのシーン”によって、我が生涯記憶に残る俳優となった。
(“あのシーン”がどれを指すのかは、観終わった方なら、多分同意して頂けるであろう)
クライム・アクションの傑作として、未見の方には是非お薦めしておきたい。
その際は、なお、ニック・ノルティ主演の同名邦題映画があるので、ご注意を!