5つ星のうち 4.0
現代的意義も大きい, 2013/5/16
ノーベル文学賞を受賞したアメリカの作家、スタインべックによる
エッセイ。亡くなる2年前、1966年に執筆したということで最晩年の
作品になる。
タイトルの通り、アメリカとアメリカ人に関する特徴や性格がまと
めてある。1960年代以前の歴史的経緯をふまえて、アメリカという
国家・国民が何を望み理想とし、何を嫌ったのかといった視点から
論じている。象徴的で社会全体をゆるがす出来事から、自らの幼少
時代の記憶まで幅広い内容に触れられており、読み物として面白か
った。著者がアメリカとアメリカ人にもつ愛着がしみじみと伝わって
きた。
アメリカについて本書は述べているものの、現代的な視点からみる
また違った見方もできる。世界でいち早く経済成長を遂げ、大量生
産・大量消費の社会を築いたアメリカ。スタインベック自身は、そう
した社会はアメリカ的気質の産物だとしているが、もはや今日では
そうとも言い切れない。アメリカのみならず、ひろく現代人について
著者は述べていると言えるだろう。
多様性の統一という問題にしても、アメリカ的な多民族国家とは異な
るとはいえ、EU諸国も移民と国家的な統一の問題を抱えており、日本
もまた近隣国からの訪問者あるいは在日外国人との軋轢が取りざたさ
れることから例外ではないと感じる。本書の出版は古いが現代におい
てもその含意は小さくない。
さらに興味深い点を付け加えるとするならば、より新しいアメリカの
書籍との比較である。私が知る限りとはいえ、現代社会論で取り上げ
られる1960年代のアメリカ社会は市民活動が活発で、多様性や異質性
を包摂する側面が強調され、ノスタルジックに言及される。対して現
代社会は、個人が連帯を失い、社会的弱者や異分子の排除へ向かって
いると批判される(べック『排除型社会』,パットナム『孤独なボー
リング』など)。本書は古き良き1960年代において書かれた書であるが、
ノスタルジックなフィルターないぶん手厳しい批判が多い。その対照的
な記述も興味深かった。