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梵太さんが書き込んだレビュー (メリダ島)

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日本の弓術 (岩波文庫)
日本の弓術 (岩波文庫)
オイゲン ヘリゲル著
エディション: 文庫
価格: ¥ 504

5つ星のうち 3.0 哲学者の参与観察, 2013/5/21
レビュー対象商品: 日本の弓術 (岩波文庫) (文庫)
ドイツの哲学者が戦前の日本で弓術を学ぶお話。

本編は3章だてになっており、まず1章にて西洋思想における合理的な
理解の試み(言語と概念を論理的に組み立てること)が東洋の思想・
精神・価値を理解する上で不十分であることを指摘する。筆者は、東
洋の思想を理解するためには、外からの観察や説明にたよるのではな
く、実際に東洋人(日本人)と同じように学び、内側からの理解を目
指そとする。質的調査でいえば、フィールドワークや参与観察と言わ
れるような手法である。以上のような哲学的思索が少々馴染みのない
学術用語とともに展開されるが、読み飛ばしてしまっても構わないと
思う。
続く2章では、著者が弓術を学びはじめてからの稽古の様子が描かれる。
近年では、外国人研究者(主に社会人類学)が武道や茶道で弟子入り
する類のエスノグラフィーが見られるが、これはそうした事例のもっと
も古い記録になるだろう。著者の葛藤が述べられ非常に面白い。行き詰
りを何度も経験しながら、それを克服しようと努力する様子が筆者の
誠意と日本文化への敬意をよくあらわしている。
最後の3章では、冒頭で語られた内容を繰り返しながら、自分の経験を
振り返り日本の思想・精神についてまとめている。

本編のあとには稽古時に通訳を担当した小町谷操三氏の解説「ヘリゲル
君と弓」が収録されている。稽古の様子を本人が記した2章部分を補足
する内容になっており、こちらも面白い。

無我の境地という論理的・言語的に理解の困難な事柄に対して、それを
あるドイツ人が体験をもって理解しようとするドラマとして気軽に読む
のがおすすめである。

クリスマス・キャロル (新潮文庫)
クリスマス・キャロル (新潮文庫)
ディケンズ著
エディション: 文庫
価格: ¥ 389

5つ星のうち 4.0 クリスマスには不思議な事が起こる, 2013/5/20
あるクリスマスに、スクルージという偏屈でけったいなおじさんの元に、
幽霊があらわれた。幽霊は彼に過去・現在・未来をみせながら、人のこと
なんて歯牙にもかけない彼の生き方がどれほど不幸で悲惨か、貧しくも慎
ましく生きる人々の団らんがいかに喜びと気高さに満ちているかについて
諭すという物語。

スクルージという主人公は冒頭で本当に嫌味で金への執着の強い狭量な人
間として描かれる。彼がそうなってしまった理由までは語られないが、きっ
といろいろな苦労があったのだろう。ここまで極端ではないにしろ、生きて
いれば誰もが「人のことなんて構ってられない。自分のお金や時間を持ち出
して何の得があるのか」とついつい考えてしまう時期や瞬間を経験している
と思う。この物語の素朴ではあるが力強いメッセージは、そうした気持ちを
穏やかにしてくれるだろう。

この手のメッセージ性の強いストーリーは、ともすると説教くさくなりやす
い。しかし、本書はディケンズのユーモアたっぷりで生き生きとした人物描
写に引きこまれ、それをほとんど感じさせなかった。

教室内(スクール)カースト (光文社新書)
教室内(スクール)カースト (光文社新書)
鈴木 翔著
エディション: 新書
価格: ¥ 882

3 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 生徒の階層性はなぜ維持されるのか?, 2013/5/18
学校における生徒間の階層性とその構造についてまとめている。著者が
実施したインタビューデータを中心にしながらも、必要に応じて中学生
へのアンケート結果で補足する形をとっている。修士論文を加筆修正し
たものだという。

スクールカーストという用語でまとめている生徒グループ間の序列・階
層性は、多くの人が多かれ少なかれ学校生活で経験した事柄であろう。
一方で、それを正面から研究した事例は少なく、「いじめ」との関わり
などからも本研究の意義は小さくない。

評価の低いレビューもあるが、元になったのが修士論文であることや一般
向けに学術的な議論を省いてあることからすれば、やや手厳しいように
感じた。インフォーマントの数が少ないという指摘についても、スクール
カーストにおけるグループ間の力学や教師との関わりで言えば、理論的飽和
とまではいかないまでも、典型例をリアリティをもって提示できていると
感じた。

生徒間の序列に関しては、アメリカにおけるジョック・ナードは有名であ
るし、イギリスで言えばウィリス『ハマータウンの野郎ども』で生徒グル
ープ間の権力関係が描かれている。おそらくは、日本だけの状況ではない
のだろう。学級というものがない海外の学校においても階層性が見出され
るという点は興味深い。
アメリカの事例はEckert "Jocks and Burnouts: Social Categories and
identity in the high school"(1989)のようなまとまった研究もあり、
グループによって言葉づかいをはじめとする文化の違いが指摘されていた。
今後の研究が充実していき海外との比較ができるようになるのが楽しみで
ある。

アメリカとアメリカ人―文明論的エッセイ (平凡社ライブラリー)
アメリカとアメリカ人―文明論的エッセイ (平凡社ライブラリー)
ジョン スタインベック著
エディション: 単行本
価格: ¥ 945

5つ星のうち 4.0 現代的意義も大きい, 2013/5/16
ノーベル文学賞を受賞したアメリカの作家、スタインべックによる
エッセイ。亡くなる2年前、1966年に執筆したということで最晩年の
作品になる。

タイトルの通り、アメリカとアメリカ人に関する特徴や性格がまと
めてある。1960年代以前の歴史的経緯をふまえて、アメリカという
国家・国民が何を望み理想とし、何を嫌ったのかといった視点から
論じている。象徴的で社会全体をゆるがす出来事から、自らの幼少
時代の記憶まで幅広い内容に触れられており、読み物として面白か
った。著者がアメリカとアメリカ人にもつ愛着がしみじみと伝わって
きた。

アメリカについて本書は述べているものの、現代的な視点からみる
また違った見方もできる。世界でいち早く経済成長を遂げ、大量生
産・大量消費の社会を築いたアメリカ。スタインベック自身は、そう
した社会はアメリカ的気質の産物だとしているが、もはや今日では
そうとも言い切れない。アメリカのみならず、ひろく現代人について
著者は述べていると言えるだろう。
多様性の統一という問題にしても、アメリカ的な多民族国家とは異な
るとはいえ、EU諸国も移民と国家的な統一の問題を抱えており、日本
もまた近隣国からの訪問者あるいは在日外国人との軋轢が取りざたさ
れることから例外ではないと感じる。本書の出版は古いが現代におい
てもその含意は小さくない。

さらに興味深い点を付け加えるとするならば、より新しいアメリカの
書籍との比較である。私が知る限りとはいえ、現代社会論で取り上げ
られる1960年代のアメリカ社会は市民活動が活発で、多様性や異質性
を包摂する側面が強調され、ノスタルジックに言及される。対して現
代社会は、個人が連帯を失い、社会的弱者や異分子の排除へ向かって
いると批判される(べック『排除型社会』,パットナム『孤独なボー
リング』など)。本書は古き良き1960年代において書かれた書であるが、
ノスタルジックなフィルターないぶん手厳しい批判が多い。その対照的
な記述も興味深かった。

百年の孤独
百年の孤独
G. ガルシア=マルケス著
エディション: 単行本

5つ星のうち 5.0 突風のごとき百年, 2013/5/10
レビュー対象商品: 百年の孤独 (単行本)
これは、南米のマコンドという街を舞台にしたある一族の100年にお
よぶ物語である。

主要な登場人物や出来事はあるものの、多くのそして多岐にわたるエ
ピソードが次々に連なった構成になっている。牧歌的というよりも土
や汗、ときには血生臭さがあふれる日常的な描写に、幻想的/神秘的/
魔術的な要素がちりばめられている(マジック・レアリスムというら
しい)。この相対する要素が相補的に世界観を形成し、物語全体に叙
事詩的あるいは神話的な風格さえただよわせている。

悲喜交々のエピソードが、時間の前後を含みながら連なっていることで、
個々のエピソードに対して抱く感情もまだらに混じりあい不思議な気分
にさせられた。それもあって、400ページ超の長編小説で、しかも軽い
文体ではないにもかかわらず、私は案外すらすらと読めた。

この重厚で儚い物語は一読の価値がある。

社長をだせ! 日本一のクレーム男 (宝島SUGOI文庫)
社長をだせ! 日本一のクレーム男 (宝島SUGOI文庫)
川田 茂雄著
エディション: 文庫
価格: ¥ 660

5つ星のうち 2.0 コメディとして読む, 2013/4/19
大手カメラメーカーでサービスセンター所長を務めるなど、クレーム対応
の現場で働いた著者が、とあるクレーム爺さんについてまとめた本である。
本書は2010年に刊行された『社長をだせ!最後の戦い』を改訂および改題
したものである。

仮名ではあるが、神戸に水戸さんという大物クレーマーがいたという。著
者らが「世直し爺さん」と呼ぶように曲がったこと、筋の通らないことが
許せない性格である。そのため、消費者として企業にしばしばクレームを
出すらしく、その意見が重宝?されたことから大手カメラメーカーはもち
ろん、大手電機メーカーのご意見番みたいなポジションになったという。
水戸さんの自宅には頻繁にサービス担当の者が出入りし、新しいカタログ
や新商品を持ち込んで意見を聞いたりいていたらしい。

にわかには信じがたい話だが、水戸さんはひとり消費者団体のような位置
づけだったのかなぁと読んでいて感じた。水戸さんは悪意があって各企業
にクレームを申し立てているわけではないが、通常のクレーム対応をこえ
た要求をしていたようである。企業側は企業側でいろいろとアイデアをだ
してくれる水戸さんをいくぶん重宝していた節もあるので、持ちつ持たれつ
の関係が想像できる。こうした対応が各社できたのも、景気が良かった時代
だからこそかもしれない。

本書はクレーム対応の一般論でもなければ、クレームの典型例を示す内容
ではない。水戸さんという風変わりで昔堅気な爺さんと大手企業との押し
問答をまとめた物語である。著者は大まじめに執筆したのであろうが、現
代的な視点からすると頑固な爺さんと組織人であるサラリーマンのやりとり
は、ときに情熱的ではあるが全般的にコメディータッチである。そういう
読み物として割り切って読むとよいだろう。変にクレーム対応の現場が知り
たいとか、クレーマーの気質を理解したいといった真面目な期待から読む
と失敗するだろう。

終身刑の死角 (新書y)
終身刑の死角 (新書y)
河合 幹雄著
エディション: 新書

5つ星のうち 4.0 日本の刑事政策概観, 2013/4/18
レビュー対象商品: 終身刑の死角 (新書y) (新書)
本書は、法社会学者である著者が、日本の刑事政策とその運用に
関してまとめたものである。死刑制度の存置・廃止の議論から生
まれた「仮釈放なしの終身刑」導入の動きに対して、もっと内情
を知ってから判断してほしいという観点から当初は執筆し始めた
という。

犯罪を犯し自ら刑罰の対象者となる、あるいは法曹界に身を置く
といった事情がない限り、私たち一般人にとって刑事政策がどの
ような理念で運用され、またどの程度の成果を挙げているかにつ
いて馴染みは薄いだろう。死刑制度への賛否だけが象徴的にとり
あげられてしまい、それがよってたつ刑事政策全体へは関心が向
けられないことが多いようにも思う。戦後の量刑の傾向や刑務所
の様子などをまとめた本書は、非常に興味深く読めた。

また、「仮釈放なしの終身刑」導入に異議を申し立てるという前
提で書かれてはいるが、基本的には中立的な立場を貫いていると
感じた。不必要な政策・行政サイド叩きはもちろんのこと、加害
者・被害者への偏った肩入れも見られない。刑罰の問題では、と
きに正義を振りかざすかの如く感情的な議論をする者もいるが、
本書はそうした内容ではない。著者は自分の見解をもってはいる
だろうが、それを大上段に構えず、読者へ判断の材料を提供する
ことに徹しているように感じた。非常に好感がもてた。

ダークゾーン
ダークゾーン
貴志祐介著
エディション: 単行本
価格: ¥ 1,890

5つ星のうち 3.0 異世界バトル, 2013/4/13
レビュー対象商品: ダークゾーン (単行本)
趣味のひとつとして将棋を指しており、将棋関連の書籍として某所で
紹介されていたことから購入した。貴志祐介の小説ははじめて読んだ。

冒頭は突然ゲームのような世界の戦闘から始まる。登場人物たちは異
世界に紛れ込んだためか異形となり、2つの陣営での戦いを強制される。
とにかくなぜ戦わなければならないかの理由ははっきりとせず、主人公
の奨励会3段の塚田はとまどう。塚田は将棋でつちかった戦略と勝負勘
で陣営を指揮し、異世界での戦闘を進める。この塚田の思考をトレース
しながら物語は進むので、自分も敵陣営の動きや狙いを推測して、さな
がらゲームのプレイヤーのような視点から眺めていた。

本編の間には「断章」という形で主人公・塚田の現実世界にいたとき
の生活が思い返される。なぜ人々はこの異世界に放り込まれたのかとい
う根本的な謎もあって、差し迫る戦いとパラレルで少しずつ全体像が
明らかになっていく。

戦闘はゲームやファンタジー世界の雰囲気で進み、またテンポも良い
ため読みやすかった。

文庫 女子高生コンクリート詰め殺人事件 (草思社文庫)
文庫 女子高生コンクリート詰め殺人事件 (草思社文庫)
佐瀬稔著
エディション: 文庫
価格: ¥ 683

5つ星のうち 3.0 凶悪犯罪にいたる経緯がピンとこない, 2013/4/12
1989年に東京都足立区で起こった「女子高生コンクリート詰め殺人事件」
を題材にした本書は、事件発生時に少年だった加害者グループの人とな
りと事件までの経緯をまとめている。

もともと『うちの子が、なぜ!』(1990)というタイトルで出版されていたが、
文庫化にともない改題したようである。

彼らがどのような学校・家庭環境で育ったのかという点に関心をもって
本書を読んだのだが、どうにもピンとこない。事実、少年たちは暴力を
ともなう学校と不安定な家庭環境に育ったのは間違いないのだが、それ
が常軌を逸した凶悪犯罪に結びついた理由には到底思えなかった。
彼らの学校や家庭と同じような環境で育った人間は数多くいるだろう。
そのほぼすべてが殺人とは無関係に成人していく。また、恵まれては
いないが、されど凶悪犯罪を起こしえるほど異常な悲惨さでもなかった
ように感じた。

だからこそ改題前の『うちの子が、なぜ!』というように、まったくもって
なんで凶悪犯罪をおこしたのかわからず、恐ろしい。いちおう、社会的
には犯罪とその原因の理屈付けをしないといけないので、「各種暴力に
さらされた体験があった」や「親からの愛情が乏しく他人の感情の理解
に乏しい」などの説明におちついたんだろう。
私は恵まれなさによって情状酌量を訴えたり、未熟さからくる残酷を考
慮しろなどとは思わない。むしろ、改正前の少年法のなんと刑罰の甘い
ことかと思わされた。

アフリカで誕生した人類が日本人になるまで (ソフトバンク新書)
アフリカで誕生した人類が日本人になるまで (ソフトバンク新書)
溝口 優司著
エディション: 新書
価格: ¥ 767

2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0 肉体に刻まれたルーツ, 2013/3/29
人類(ホモ・サピエンス)はどこで生まれ、どのように世界に広がって
いったのかをわかりやすくまとめた本である。本論は3章に分けられて
おり、第1章と2章でアフリカから世界に広がったルートと、各地での
適応の様子が描かれる。そして、第3章で「日本人」のルーツに関して
掘り下げた解説をしている。

個人的にはルーツの話も興味深かったが、進化・適応の過程で生まれた
種々の変異について述べているところが面白かった。なぜ私たち、彼・
彼女らはそうした身体的特徴をもつのかについての解釈が、読み手の
想像力をかきたてる。自らのルーツが肉体に刻まれているような浪漫
を感じた。

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