英語学習初心者でも引きやすい英英辞典本格的に英語の勉強をするなら英英辞典を使うべきだとわかってはいる。しかし英英辞典を引くとなると何となく億劫で、面倒で、言葉の意味を理解するのに時間がかかる。そこでついつい英和辞典に手が伸びてしまう。誰もが経験することである。
EFL(外国語としての英語学習)上級者用英英辞典の代表的なもの(『LDOCE』、『OALD』、『COBUILD』、『CIDE』、MWD
)については前回、このコラムで触れた。ここ数年来、英語の学習者にさらに配慮した、引きやすい英英辞典が開発されている。今回は、億劫がらずに引くことができ、高校生の英語力があれば自由に使える最新の初級者~中級者用英英辞典を紹介する。
まず、ピアソン・エデュケーション社の『Longman Active Study Dictionary』(第3版1998年、『LASD』
と略記)。この辞典はEFL中級者用英英辞典のさきがけとなったもので初版が1983年。定義は『LDOCE』
と同じ語義解説用2000語を使っているが、『LDOCE』
よりずっと短くわかりやすい。『LDOCE』
でその定義に過去分詞の後置修飾を用いている場合、『LASD』
はそれを関係代名詞で開き、さらにその2000語の中でも比較的頻度数の少ないと思われる語の使用を避けてやさしく言い換えている(e.g. hybrid
の定義では breed の使用を避けた)。たとえば kite
。『LDOCE』
にはa light frame covered in coloured paper or plastic that you let fly in the air…とあるが、『LASD』
ではa toy that you fly in the air…。kite
の絵も隣に載せていて、わかりやすい。見出し語の色はロングマン・ブルー。学習上最も大切な3000語は、そのブルー地に白抜き文字で目立たせている。Learner’s Corpus に基づく語法注記も充実。4ページ毎に右下の位置に3行以内の簡単な英文法ノートが付いている。
また、同社は、最重要語(come, do, get, have, make など)の意味を矢印のネットワークを使って示し、挿絵も豊富な『Longman WordWise Dictionary』(初版2001年、『LWD』
と略記)を出版している。『LWD』
はEFL英英辞典の中で一番やさしく活字も大きい。重要2000語をマスターすれば、英語の80%は理解できるというデータに基づき、基礎語に十分なスペースを割き、解説にも工夫が凝らされている。
『Cambridge Learner’s Dictionary』(初版2001年、『CLD』
と略記)はすっきりしていて見やすい辞書だ。見出し語はグリーンがかったきれいなケンブリッジ・ブルー。学習上重要な語には鍵(key)マークをつけ、簡潔な定義と典型的な場面での生きた使用例、多くの挿絵、語法注記、学習コーナーを載せている。基本語の定義には [guidewords] (語義案内)を付け、文字通り、探そうとする意味の道案内をしている。求める語義に早くたどり着ける。ケンブリッジ大学出版局がEFL英語辞典を初めて出版したのはほんの数年前、『CIDE』
を世に送り出した1995年である。『CIDE』
は辞書作りの新しい方向を提示するような意気込みが前面に出すぎて検索するのに難がなかったわけではないが、その『CIDE』
と比べれば(記述レベルと使用対象者も異なるので比較することは本来できないが)、『CLD』
は外国語として英語を教える数多くの先生の意見を反映して、ずっと学習者に目を向けた使いやすい辞書になっている。
『Oxford Student’s Dictionary of English』(初版2001年、『OSDE』
と略記)と『Oxford wordpower dictionary』(初版1993年、第2版2000年、『OWD』
と略記)は、挿絵や学習コーナーの内容は違うが、辞書本体は用例も含めてほとんど同じである。オクスフォード・ブルーの見出し語のうち、重要語には★を付け、『OALD』
の語義解説用3000語を2500語にしぼっている。simple の項で This dictionary is written in simple English. の用例を載せているが、この文がそのまま『OSDE』
、『OWD』
の語義の定義、用例文にあてはまる。語法注記だけではなく、文法情報や関連する語をも網掛けにして囲み [note] のコラムとして取り上げている。たとえば weather の [note] には、 Rain
is drops of water that fall from the clouds. Snow
is frozen rain. It is soft and white and often settles on the ground. Sleet
is rain that is not completely frozen. Hail
is…のように天気に関する語をまとめて解説したコラムがある。頭の中でばらばらだった語がネットワーク状につながる。
また、『OWD』
の英語はそのまま残して訳語をつけた、英語/日本語併記の『ワードパワー英英和辞典』(2002年)が出版された。英英辞典と英和辞典が結びついた新発想の学習者辞典。「英英和」という命名に、今後、日本の辞書開発に新しい分野が拓かれる予感がする。
今回取り上げた学習者用英英辞典は、いずれも750ページ前後で収録語数は実質2万5000語程度(『LWD』
は1万7000語程度)。辞書の厚さも携帯に便利な大きさも、共通している。
執筆者プロフィール千葉 元信(ちば もとのぶ)
国立宮城工業高等専門学校総合科学系教授、東北大学非常勤講師。著書は『カレッジライトハウス英和辞典』(共著、研究社)、『実践的英語科教育法』(共著、成美堂)、『PRO-VISION English Course Ⅰ』、『Spectrum English Reading』(いずれも検定教科書、共著、桐原書店)、『PROSPECT』 vol.1~5(桐原書店)、『Reading Landmarks of the World 』(共著、三修社)、『新しい英文法の学び方・教え方』(共訳、ロングマン)、『英単語パワービルダー』(ロングマン)、『英単語ネットワークビルダー』(共編訳、ロングマン)など。2001年~2002年文部科学省在外研究員(ロンドン大学)。