田口ランディ、初の短編集

田口ランディ。小柄な身体と柔和な顔つきの裏に潜む鋭い洞察力、芯の強さと自己の弱さの微妙なバランス。それが本人を目の前にしたときの印象だ。コラムはもちろん、小説にも著者の個性は色濃く反映される。長編小説のシリーズの合間に発表となる短編集ミッドナイト・コールでは、どんな人物像を見せてくれるのだろうか?(文中敬称略)


Amazon.co.jp: 初の短編集ですね。

田口ランディ: 短編集だということで意識していることは特にありません。文字数を気にして書いたことは一度もないですし。ずっとパソコンで書いていたからか、長編でも短編でも、だいたいの文字数を言ってもらえれば、ブロック単位で文字が見えてくるんです。だから、書いているうちにいつのまにかぴたっと収まっている。そういう書き方をしていますので、この短編集に関しては約束を果たせてよかったなと思っているだけです。

Amazon.co.jp: この短編集は、どういったいきさつで書かれることになったのですか?

ランディ: ゴールデンウィークのころだったと思います。まだ最初の小説コンセントも発売されていないころに、PHP研究所の編集の方が訪ねてきたんです。「企画は通したので、ぜひ、小説を書いてください」って。

Amazon.co.jp: 企画を通して? それはどんな企画だったんでしょう?

ランディ: 私もどんな企画かなと思って、聞いたんです。そうしたら「どんな小説でも書けるように、適当なタイトルもつけたんです」って。そのタイトルが「ミッドナイト・コール」。いいタイトルだなと思いました。

Amazon.co.jp: なるほど。

ランディ: 「ミッドナイト・コール」だから、「電話」に関する小説にしようと決めたんです。全編通して電話が出てきますよ。

Amazon.co.jp: 5月に依頼されて12月に発売ということは、小説を書くのに半年近くかかったということですか?

ランディ: いえ。私、書くのは早いんです。短編だったら、半日もあれば書けちゃうんじゃないですか?ただ、PHP研究所からお話をいただく前に、幻冬舎の小説を書くことが決まっていたので、少し時間をもらったんです。この短編集を書き上げたのはだいぶ前なんですけど、思ったよりも早くアンテナを書き上げてしまったので、発売日を少しずらしたというのもありますね。新人の小説が2冊同時に発売になっても誰も買わないでしょ?今は、約束が守れてほっとしています。

Amazon.co.jp: なぜ、長編小説と同時期に短編も引き受けたんですか?

ランディ: それはね。編集者の思いですよ。まだ小説を書いたこともない、ただインターネットで書き散らしている人のところに来て、「絶対に本にするから、小説を書いてくれ」。そう言って来た編集者がたまたまふたりいた、それだけのことですよ。企画まで通して、書いてくれって言ってくれている。確実に本にするって約束してくれている。だから、書いたんです。それまでも、「書いてみませんか」っていう話はいろいろな出版社からもらっていました。でもそれは、「書いてみて、それを読んで本を出すか決めましょう」そんな話ばかりだったんですよね。PHP研究所も、幻冬舎も、「本を出すから書いてほしい」と、強い気持ちで来てくれた。だから書いたんです。PHP研究所の編集の方には正直に言いましたよ「先に幻冬舎で長編を書く約束をしているから」と。「それでもいい」って言ってくれたから、この短編集を書くことになったんです。

Amazon.co.jp: 今まではインターネットで発表したコラムをまとめたものなどを出されてきましたが、今後は小説が中心になっていくんでしょうか?

ランディ: 向こう10年は小説でやっていきます。コラムというか、エッセイというか、自分ではノンフィクションだと思っているんですけど、それをやめるかどうかは考えていません。ただ、小説を書いていくことだけは決めています。

Amazon.co.jp: ずっと小説が書きたかったんですよね?これからはどういう小説を書いていかれるつもりですか?

ランディ: 物を書いて暮らしていこうと思っている人ならば、誰でも小説を書きたいと思っているんじゃないですか?これから何を書こうかということも決まっていません。ただ小説を書くということが決まっているだけです。

最近のマスコミにありがちなんですけど、小説を材料に「著者はこれこれこうだ」と分析するのはやめてほしいですね。小説はあくまでもフィクションの世界なので、著者とはまったく関係がないと思うんです。私がどうこうということではなく、ただ楽しんでもらえる小説を書いていくつもりでいます。

Amazon.co.jp: ミッドナイト・コールもそうですよね。

ランディ: ミッドナイト・コールは、20代後半から30代前半の女性が主人公の恋愛短編集で、どの短編にも「電話」が出てきます。主人公は女性ですが、男性でも女性でも楽しんでもらえる小説になっていると思います。


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