このCDについて
深い瞑想の底からゆっくり立ち上がり、次第にうねり、異様な熱気をこもらせながら、粘りに粘る旋律を経て、ついには気の遠くなるような怒涛のクライマックスに到達するこのチャイコフスキーを、冷静に聴きとおすことはまず不可能であろう。音楽の表情に応じて、ゲルギエフの指揮するテンポは信じがたいほど極端に変化するが、それはまるで生き物が動き回るかのように自然でしかも細やかである。
ウィーン・フィルは、このゲルギエフの猛烈な指揮に、ミスを連発し乱れまくり、息を切らせながらも、アンサンブルがほころぶ限界まで死に物狂いで立ち向かっていく。そして、一瞬たりとも世界一の美女であること(ウィーン・フィルであること)をやめようとしないところが凄い。特に弦は、野性的なゲルギエフの指揮によってぎりぎりまで追い詰められているのに、次のフレーズに向かう最後の瞬間まで甘くしなやかな曲線を描こうとする。そのウィーン・フィルらしい執念がたまらない。
1998年7月、ザルツブルク音楽祭のライヴ・レコーディング。勝利の大行進で終わる長大なフィナーレに続いて、客席のすさまじい興奮も収録されており、演奏会のその場に居合わせたような臨場感を満喫できる。(林田直樹)
内容(「CDジャーナル」データベースより)
ザルツブルクでの熱狂のライヴを収録。99年に発売され高い評価を受けた1枚が、2004年のウィーン・フィル来日を記念して再発売。ゲルギエフが{炎の指揮者}と呼ばれる所以が刻印されている。