Amazon.co.jp
破天荒な形式に盛り込まれたベートーヴェンの力作2つの真価を、巨匠アーノンクールが浮き彫りにした画期的名演である。アーノンクールの指揮する音楽は、よく知っている曲であっても、次の瞬間に何が起こるかわからないようなスリリングな雰囲気があるものだが、これはそうした美点が最大限に発揮された演奏である。ヨーロッパ室内管弦楽団の響きは透明なばかりではなく荒々しさも緻密さもあり、ニュアンスは無限に豊かだ。三重協奏曲は、構えのみ大きく中身が伴わないなどと不当に評価されてきた作品だが、この演奏で聴くと、それが全くの無理解に基づくものだったということがわかる。これは、「皇帝」や「ヴァイオリン協奏曲」にも全くひけをとらない、不安と紙一重の神秘の彼方から響いてくる意志の音楽なのだ。
3人のソリストも申し分ない。特にチェロのクレメンス・ハーゲンは、バリバリと鬼気迫る勢いがタダモノではない。隠れた可憐な名作・ピアノと管弦楽のためのロンドを間に挟み、後半の合唱幻想曲はさらに素晴らしい。合唱幻想曲は、たった19分間の中で、ピアノの深刻なソロに始まり、オーケストラが加わり、さらには合唱も参加するという劇的な構造を持ち、「歓喜の歌」の原型とも考えられる旋律を含む、実に興味深い作品である。エマールのギラギラと冴えるピアノも素晴らしく、終結部近くでの高潮は手に汗握る圧倒的なもので、狂気さえ感じさせる。新たな霊感に満ちたベートーヴェン体験を約束してくれる1枚として、強くオススメしたい。(林田直樹)
内容(「CDジャーナル」データベースより)
次々と話題作を送り出しているエマールとアーノンクールが、三重協奏曲を録音。ツェートマイアーとクレメンス・ハーゲン、2人の名手を迎えての演奏で、ファン必携のアルバムだ。