このCDについて
《戦争シンフォニー》はサンクトペテルブルクを本拠に活躍するゲルギエフが「もっとも大切な作品のひとつ」と折にふれ語っている作品です。一般的には7番、8番、9番の3曲を「戦争シンフォニー」と呼びますが、この4番の交響曲が書かれた頃からすでにきな臭い戦争の予兆が始まっており、そうした空気がこの作品には込められている……とゲルギエフはとらえ、この作品を演奏しています。2004年度レコード・アカデミー大賞受賞。
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ショスタコーヴィチが一大飛躍をなしとげた真の独創的な傑作は、第4交響曲ではないかと、多くの人が気付き始めているのではないか。この作品はショスタコーヴィチの作品中とりわけ不幸な生い立ちをたどってきた。しかし、これまでの交響曲の伝統を継承しながら、これほど荒れ狂う楽想が、整然とした論理的形式のなかに封じ込められた作品が他にあっただろうか。当時のソ連共産党による政治的な抑圧によって初演が中止させられたいわくつきの作品というだけでなく、内容面から言っても真の大問題作であることは間違いない。
大活躍中の“カリスマ”指揮者ゲルギエフの今回の録音は、第4交響曲のそうした真価を明らかにする、演奏史に残る画期的な名演をなしとげている。あの手この手で襲いかかるクライマックスでは、鳥肌ものの迫力が聴く者の全身に襲いかかる。すさまじいパワーだが、美感が保たれており、常に音楽的な充実に満たされている。ゲルギエフは、この曲にマーラーよりもさらに痙攣的で病的な、特殊な魅力を見出しているのかもしれない。人生の真実とは、このようにいびつで偏執狂的なものなのか? 壮絶な闘いと苦悩と、部分的な平和と安逸と、ユーモアや愛らしさや夢想の世界と、すべてが渾然一体となっているものなのか? これは、戦争反対とか、人類愛とか、そんなわかり安い物語には置き換えられるものではない。
このディスクは、何度でも聴くに値する演奏だ。ゲルギエフは、もはやパワーと情念だけの指揮者ではない。(林田直樹)
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