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哀しい映画である。貧しい長屋に住む浪人は、かつて父の世話を受けた男に士官を頼みに行くが、今日も門前払い。真面目で融通の利かない夫を持つ女房は、経緯をうすうす感じながら黙って耐える。長屋では首つり自殺があった。
楽しい映画である。その日暮らしの職人たちにとって、長屋はいわばワンダーランド。首つり自殺の供養を理由に今日も酒盛りが始まる。髪結いは嫁入りを迫られている質屋の娘を誘拐する。銭金のためでなく、意地を見せたかったのだ。ちゃっかり者の家主は、ここぞとばかりに質屋と交渉し、五十両で娘を無事に帰してやる。その五十両でまた今夜も酒盛りが始まる。
現在にも通じる、殺伐たる時代。タイトル通り紙風船のように儚い、人のこころの悲喜こもごもを、じっと見つめた天才・山中貞雄の視線の優しさ、温かさときたら。(斉藤守彦)
内容(「キネマ旬報社」データベースより)
小津安二郎、溝口健二と並び称されながらも、若くして戦病死した山中貞雄の遺作となった人間ドラマ。貧乏浪人・又十郎は亡父の世話で出世した藩の重役に仕官を頼むが、無碍に断られてしまう。そんな時、髪結いの新三から誘拐の協力を持ち掛けられる。