内容(「CDジャーナル」データベースより)
坂本龍一にとって実に9年ぶりとなるオリジナル・アルバム。Sketch#Showやコーネリアス、デヴィッド・シルヴィアン、アート・リンゼイほか豪華ゲストを迎え、教授流ポップスを聴かせる。
内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)
ロマンティックで美しいアルバムだと素直に思う。深遠なロマンティシズムにあふれていて、確かな感動や余韻へ誘ってくれる凛乎たる作。待ちわびたポップ・フィールドへの帰還――とは言ってもサカモトのポップは形而上だから、美的感覚の振り子がたまたま穏やかな方向に振れてそれぞれに結んでいった音の像を、そう錯覚しているだけなのかもしれない。が、それはそれでここは素直に感じ入っていたいところ。ピアノ・ソロ、シンフォニー、オペラ、そしてアントニオ・カルロス・ジョビンを探訪するモレレンバウム夫妻との旅と、ここ数年はオーガニックな展開を主に試みてきている教授。連動させた独自のヒューマニズムやネイチャリズムを通じて世界との関係性を示してきた活動全般のひと区切りでもあるのでは、とも思う。それは「戦争と平和」「世界市民」「愛だけが憎しみを征す」といったタイトルにも象徴的だし。
純粋なオリジナル・アルバムとしては『SMOOCHY』以来、9年ぶりになるという新作。「シェルタリング・スカイ」のサンプリングを機に出会ったコリアン・ラッパーとのコラボレーション「undercooled」でクールの再生を唱えるところから始まる。二胡が綴る東洋的な旋律をsketch showと練り上げたプログラミングに乗せて、ナイーヴな韓国語のライムからささくれ立った小山田圭吾のソロを導く中で帯びてくるある種の郷愁。それはアート・リンゼイが作詞した「War&Peace」やデヴィッド・シルヴィアンと共作した「World Citizen」、モレレンバウム・プロジェクトから昇華した自身のボサ・ノヴァ「Ngo」でも基調としていて、客演を伴わないミニマルな数曲にも通底させている。そうか、先鋭の中に見つけられるこのポピュラーな情感に、ロマンティックな美しさを覚えてしまうのかもしれない――なんて浸っていられるのも束の間、おそらくそれは瞬間的な風向きでしかないだろうから。 (除川哲朗) --- 2004年03月号