このCDについて
クラシック界のみならず、日本中がその話題で沸き立った、小澤征爾の『ニューイヤー・コンサート2002』。日本でも年始の風物詩となりました。今作は、小澤征爾をはじめ、歴代の指揮者が勢ぞろい。ユニバーサルの3大レーベル、ドイツ・グラモフォン、デッカ、フィリップスから選りすぐった名演の数々です。
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この“聴き比べニューイヤー・コンサート”は想像以上におもしろい。異なる名指揮者たちをゲストに、近年のウィーン・フィルがどんな演奏を繰り広げたかがよくわかるからだ。
歴史ある「ニューイヤー・コンサート」は、毎年元旦にウィーン・フィルが新年の挨拶と喜びを世界中に伝える恒例行事。いまやNHKの衛星生放送で日本にもすっかりおなじみである。2002年は小澤が指揮台に立ったことで一気に盛り上がったのは記憶に新しい。ここで、これまでの栄光ある伝統を振り返り、近年の名指揮者たちの足跡を比較するぜいたくな編集企画盤が登場した。
アバドが少年合唱を入れて目の覚めるような効果をあげた「トリッチ・トラッチ・ポルカ」、カラヤンがバトルのソプラノをフューチャーした「春の声」、後打ちのリズムなら無敵の小澤が振った「常動曲」(昔流行ったテレビ番組『オーケストラがやってきた』のテーマ曲としか聴こえない)、こぼれるような笑みに満ちたボスコフスキー指揮「チク・タク・ポルカ」など、どれも聴き惚れるしかない、歴史に残る名演たちである。
聴いてつくづく感じるのは、どんな指揮者がやってきても、ウィーン・フィルはウィーン・フィルだということ。いつでも、匂いたつような優雅さ、甘く心地よいウィーン情緒だけは守られている。
結局のところ「ニューイヤー・コンサート」とは、ウィーン・フィルという世界一の美女が、毎年ゲスト・パートナーを替えながら艶やかにワルツを踊る場なのである。相手はいずれ劣らぬ男前ばかり、さまざまなエスコートに美女がいい気持ちになって舞うのも無理はない。
本ディスクには、マゼール(1981-1986)、カラヤン(1987)以降、指揮台に立ったマエストロのうち、クライバー、メータ、アーノンクールだけが収録されていないが、それでも十分、男前のパートナーたちのリードのお手並みを拝見するおもしろさが味わえる。唯一、1970年までウィーン・フィルのコンサートマスターだったボスコフスキーだけはこれらの指揮者たちとは違う。彼は1955年から1979年までほぼ毎年このコンサートを振り続け、美女の舞踊をより輝かせていった、この伝統の立役者である。
ところで、このディスクにはウィーン・フィルという美女のある本質が浮き彫りになっている。実はこの美女、とんでもない浮気者なのだ。しかしパートナーを替えるのがワルツの本質なのだとすれば、それもいたし方あるまい。私たちは美女の舞にひたすら見とれるのみである。(林田直樹)
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