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どぎつい口紅。脂粉の匂い。猥褻(わいせつ)なくらいに露出した肌。そういうものを連想せずにはいられない。「女」の存在を露骨に感じるアルバムである。
子音や吐息を強調したヴォーカルが意味するものは、誘惑的で半開きな、女の肉感的な唇。世紀末的にどろどろと爛(ただ)れながら、不思議に抒情的なアレンジが意味するもの、それはずばり、サディスティックで妖艶な女の、あやうく、いびつな美しさである。
ジョビンのボサノヴァの名曲にグレゴリオ聖歌のイントロをぶつけた「Corcovado」、モーツァルトのトルコ行進曲と気づかないほど扇情的な抑揚をつけてべっとり歌う「fantasma che vaga」、パッヘルベルのカノンに虚無感漂う重厚なビートを刻印した「CIRCOLAR」。どれも、よくぞやってくれたというくらいに危険な香り漂うアレンジだ。
これらの露出狂的な“やり過ぎ”感はすべて確信犯。このエロスの暴力に屈するか、不感症を決めこむかは、聴き手しだいである。ただ一つ言えるのは、ここにあるのはただの見せびらかしではなく、せつないくらいに純粋な交感を求める意志ではないかということだ。書上自身の言葉を借りるなら「いやらしいけど不潔じゃない」「汚いけれど崇高で高貴」。このアンバランスで過剰な美は、書上だけの傑出したセンスの賜物(たまもの)であるばかりでなく、ある種、今の時代を映す鏡かもしれない。(林田直樹)
内容(「CDジャーナル」データベースより)
エキセントリック・オペラでそのサウンドを一手に担っていた彼女がついにソロ・デビュー!#個性的なクラシック・センスをベースに、チル・アウトやアンビエントな世界を演出している。