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みずからの胸の内をさらけ出し、感傷過多に陥ることなくリスナーの心を揺さぶることができるシンガーソングライターは少ない。そのうえ、赤の他人の苦境にリスナーの関心を向けさせることができるとなると、さらに少なくなる。スザンヌ・ヴェガは、児童虐待をテーマにした88年の大ヒット曲「Luka」で、そんな離れわざをやってのけたばかりか、女性による知的なフォーク・ミュージックのルネッサンスがその後10年にわたって巻き起こるきっかけを切り開いたのだった。
この全21トラックのアンソロジーは、「それ以前」と「それ以降」のヴェガのキャリアをカヴァーしている。クールな視点、鋭い洞察力、超然とした姿勢が光る年代記だ。これまで見落とされがちだったが、休むことを知らない音楽的発明精神がヴェガの原動力となっている。クラブ向けミックス(ここでの「Tom's Diner」は、もともと「海賊盤」にあたるDJミックス・ヴァージョンで、DNAの手によるものだが、ヴェガの英断により本作に収録)、ラテン・ジャズ(「Caramel」)、エレクトロニック・パーカッションを駆使したリズムの実験(「Blood Makes Noise」、「99.9F」、そして映画『デッド・マン・ウォーキング』のサウンドトラックからの「Woman on the Tier」)、新古典主義(「Small Blue Thing」)、切れ味鋭いポップ・センス(「I'll Never Be Your Maggie May」、「Book of Dreams」)。かくも多彩な展開を見れば、ヴェガが発明の人であることは否定の余地がない。だが、本作で聴ける要素が、いずれも明らかにボブ・ディラン、レナード・コーエン、ウッディ・ガスリーといった巨人たちにルーツを持つことは、いっそうの注目に値する。
レア・トラックとしては、映画『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』のサウンドトラックからの「Left of Center」、ライヴ音源による「Queen and the Soldier」、アメリカではリリースされなかった「Rosemary」がある。また、全曲の歌詞と、ヴェガの同胞でありパティ・スミスのギタリストであるレニー・ケイの手による洞察に満ちた回想録を掲載。(Jerry McCulley, Amazon.com)
内容(「CDジャーナル」データベースより)
レニー・ケイに見出された初期から、当時の伴侶ミッシェル・フレームとチャド・ブレイクによるオルタナ期までのヒットを収録。「レフト・オブ・センター」はオリジナル作品には未収録の隠れた名曲。