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11種類が世に出ている大指揮者フルトヴェングラーの《英雄》のうち、最も内省的な深みがあり、情熱も兼ね備えた、バランスのとれた名演として高い定評を誇る1952年11月26、27日ウィーン・ムジークフェラインザールでのスタジオ録音盤である。爆発的なパワーを求める向きには、戦時中にライヴ録音されたいわゆるウラニアのエロイカの人気が高いが、この演奏の誇張のない深みと大人の風格は、何度繰り返し聴いても色あせない、味わい深さがある。EMIによる録音も鮮明で、弦の表情やホルンの丸みなど、香り高い雰囲気だ。
それにしても、これを聴いていると、フルトヴェングラーや当時のウィーン・フィルの抱いていた、ベートーヴェンに対する途方もない敬意と愛情に、改めて胸を打たれる。現代の演奏家にとって、ベートーヴェンはもう少し身近になっている。彼らの“畏れ多い”という気持ち、人生で最も大事な本質的な何かに取り組もうという姿勢は、次元が全然違う。そんなことさえ考えさせる巨大で神がかった演奏だ。(林田直樹)
内容(「CDジャーナル」データベースより)
EMIの過去の名盤が最新のリマスタリング技術で蘇る《ARTシリーズ》。今さら何の説明もいらないフルトヴェングラー&ウィーン・フィルによる「英雄」の世紀の名演。