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20世紀を代表する名女流チェリスト、ジャクリーヌ・デュ・プレ(1945-1987)の残したレコーディングの代表作。夫バレンボイムのサポートで、古今屈指のチェロ協奏曲であるドヴォルザークの名品が録音されたのは、1970年11月11日、つまり不治の病である多発性硬化症を発症する直前、彼女のキャリアの絶頂期であった。ここでのデュ・プレは、いつもながら聴き手の胸に電流が走るような迫真の感動を与えてくれる。彼女のチェロを聴いて冷静でいることは、ほとんど不可能だ。クライマックスで軋みを立ててバリバリと弾き進む怒涛の勢い、ピアニシモでのめくるめく高速パッセージ、込めすぎるくらい痛切な気持ちのこもった歌。デュ・プレのチェロは、「演奏している」という次元をはるかに飛び越え、多少の乱れなどものともせず、音楽の本質を鷲掴みにせんとする気迫と確信だけが炎のように燃えさかっている。もちろん力任せではなく、第2楽章終盤のモノローグ風の部分や、第3楽章の終結部の前の静かに名残を惜しむ回顧的な雰囲気など、じっくりとテンポを落として沈思する。この辺の組み立ても素晴らしく、この曲の良さを味わいつくせる演奏となっている。カップリングされた「森の静けさ」はドヴォルザークののどかで人情味にあふれた詩的な雰囲気が満喫できる佳曲である。
惜しむらくは録音がやや古いこと。ARTリマスタリングの力を持ってしても、オーケストラのスケール感を再現するところにまでは至っていない。しかし、デュ・プレのチェロの生々しさは充分に捉えられている。(林田直樹)
内容(「CDジャーナル」データベースより)
最新リマスタリング技術を施したARTシリーズの第1期第2回発売として25点が登場。天才デュ・プレの生命力がほとばしるような熱演。ドヴォルザークの協奏曲の決定的名盤の1つ。