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「4つのバラード」は、精神の深淵にあえぎながら、遥か上方の青空を遠くながめるがごとき音楽。ブラームス21歳の年に書かれた作品だが、最晩年の作品と何ら遜色のない驚異的な深みに達している。グールドの演奏はベタベタせず、ペダルの使用を極力抑え、冷たくそっけないくらいに響きもリズムも乾いている。甘さや感傷性はゼロで、実に厳しい表情をした、格調高い音楽だ。ブラームス中期の傑作「2つのラプソディ」も、例えばアルゲリッチのピアニスティックで熱い演奏と較べると、ぎこちなく骨ばった、吹きすさぶ寒風のような演奏である。ピアノという楽器からは想像もつかぬ、このような寂寥感をグールドはよくも生み出そうとしたものだ。
5曲の「間奏曲」では、一転して静寂で甘美な憂愁に浸ることができる。コートの襟をたてて足早に冬の森を散歩する物静かな青年グールドの姿が目に浮かんでくるようだ。さらりとして淡い余韻なのに、これほど痛切で深い音楽もない。聴く人を無限の思索へと誘うという意味で、これらのブラームスはまぎれもなく超一級の演奏であり、孤高の鬼才グールドを知る上でも絶対に外してはならないマストアイテムである。(林田直樹)
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