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レクイエムは魂を鎮める曲であり、泣き叫んだり強く訴えかける曲ではない。だから合唱も独唱も、オーケストラも、そしてオルガンも声高になることはほとんどなく、ささやくような音を中心に組み立てられている。
ところで、ささやき声、つまりウィスパー・ヴォイスというのはミステリアスな雰囲気を漂わせるものだ。そして場合によってはコケットなところもある。もちろんレクイエムにコケットという言葉は合わないし、不謹慎でもあるだろうけども、この曲で全編にわたって重要な役割を果たしているボーイ・ソプラノの甘く軽いささやきが、くすぐったいような感覚をもたらすことは否定できない。死という重い題材を扱いながら、むしろ明るさを感じさせるのは、このボーイ・ソプラノのウィスパー・ヴォイスに大きな要因があるのだ。
フォーレは、クネクネとした教会旋法的なメロディーの動きを巧みにあやつり、そこに近代的な響きをまぶしていく。深刻ぶった表情はほとんど見せず、洒落っ気さえ感じさせる。第5曲「アニュス・デイ」のイントロ部分は恋愛映画のサントラに使えそうだし、第7曲「イン・パラディズム」でのオルガンにいたっては、ラウンジ・ミュージックのファンを喜ばせそうだ。レクイエムは本来つらく悲しい気持ちを癒すためのものだが、楽しい気分のときも、このCDを取り出して聴いてみて悪いことはひとつもない。(松本泰樹)
内容(「CDジャーナル」データベースより)
典礼文から「怒りの日」をはずした構成は,死者のためというよりは残された人のためにともいえる,いつくしみに満ちた名曲。女声合唱とソプラノ・ソロに児童合唱とボーイ・ソプラノを用いた,実際の教会でのミサを思わせる静かで,敬虔な演奏だ。