内容(「CDジャーナル」データベースより)
「天気のいい日は墓地を散歩する」と歌う6がいみじくも象徴するように,このカナダの元郵便夫が自作自演する日常のスケッチは今回もやっぱり少々変わっている。短編小説を耳で聴くような佳品が並ぶ2作目。次作のタイトルはどうするつもりかしら。★
内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)
カナダの中都市出身。64年生まれで、二児の父親。20代の時に自主制作盤を発表したものの、音楽だけでは食えず、家族を養うために6年間郵便配達夫をしていたことがある。このようにプロフィールはいささか冴えないが、才能は近年デビューした数多くの男性シンガー・ソングライターの中で群を抜いている。日本では約1年半遅れて昨年8月に発売されたメジャー第1弾はエルヴィス・コステロから「この先20年は聴き続けられる」と絶賛されたが、実際、それだけの価値のある秀作だった。
ビング・クロスビーの歌やアーヴィン・バーリングの曲、すなわちスタンダード・ナンバーやカントリーのチャーリー・リッチの曲などを聴いて育ったというだけあって、ロン・セクスミスの曲はスタンダード的な品格というか、ある種のエレガンスに満ちている。彼は、言うならば、歌の織物職人だ。俗世間の動きを気にせず、自分自身の感情を露にすることなく、ただ淡々と歌を織っていく。そうして織られた歌の色合いは地味だが、気品があり、普遍の輝きを放っている。また、このややくぐもった歌声の持ち主が紡ぎ出す歌は、哀調を帯びているが、感傷的過ぎず、重苦しくない。まるで“切ない”という大人だけが味わえる贅沢な快楽をかみしめながら、歌っているようだ,つまりここには憂愁はあるが、虚無や絶望の影はない。
前作に引き続き、今回もミッチェル・フルーム&チャド・ブレイクが制作に関わっている。よってサウンド・プロダクションは生音主体で、なおかつ音数は最小限に抑えられている。収録曲の大半は、淡いメランコリーが胸に染みる優美なバラード。(8)はホーンが織り込まれたR&B調のナンバーだが、決してきらびやかではなく、アルバム全体の雰囲気を乱してはいない。なお、(11)にはシェリル・クロウがアコーディオンで客演している。時の試練に耐えうる歌の織物。前作が20年なら、このアルバムはこの先25年は色祷せないだろう。 (渡辺亨) --- 1997年06月号