この本は、ずばり、「パワードスーツ」の本である。
スタジオぬえに所属する、これまで見たこともない絵を次々と紡ぎだすメカデザイナー宮武一貴を横目に見ながらパワードスーツを描き続けてきた私は、宮武から『機甲天使ガブリエル』という未完に終わった物語を見せられたときこう考えた。これは「予言の書」なのだと。
ハインライン『宇宙の戦士』のパワードスーツを宮武と私の2人で世に送りだしてから8年後の1985年。宮武は『機甲天使ガブリエル』で様々なパワードスーツを考え出した。それはけっきょく商品化されることはなかったが、2008年、そのアイデアは今もぜんぜん旧くない。大学や企業や軍隊で実物のパワードスーツが生み出されつつあるこの時点でも参考になるアイデアが、ここにはある。
この本を出すことに決めたのは2007年10月。宮武の手書き文字で『ガブリエル』と書かれたB4版の黄ばんだ袋から取り出した、やはり黄ばんだ紙に鉛筆で描かれた大量のデザイン画を1枚いちまい確かめながら、私は、これはすごい本になるぞという高揚感を抑えきれなかった。宝島への地図でも見つけた冒険家か、自分がヒーローの伝記作家にでもなったような気持ちだった。
ここ数年で私の画集やデザイン集がたてつづけに出版されたように宮武の本も何冊か出ていたが、そのどれを見ても宮武はあまり自分で語ることはしていない。宮武自身に自分を語らせてみたい。若いときの10年ほどを机を並べて仕事をしたこの私が、それを本に仕上げるのだ。21世紀版『宇宙の戦士』である。
本書[コラム]に年号があるのは、ぬえが生みだしたパワードスーツの中で『ガブリエル』がどの時代に属するのかを明らかにするためだ。「予言の書」であると同時に、パワードスーツ「歴史書」であり、今一度、世に問う「企画書」でもある。
私が宮武のデザイン画をイラストに描き下ろしたページはすべて1つのルールの下に描かれている。印刷時にすべて1/12スケールに統一されているのだ。立体にしたいと考える人がいたとき、他の同比率のモデルと並べて想像できるようにしたかった。
ただし表紙だけは違う。表紙の女性は1/1サイズだ。スケールモデルではなく、実物大、いやそれこそ実物を想像してもらうことを期待してこれを描いた。
パワードスーツが好きなすべての人に、この本を贈る。
』(アンドロメダ)や劇場版『銀河鉄道999』(アルカディア号)の宇宙艦艇デザインなど、
SFアニメのメカニックデザインをはじめSF関連のイラストを多数手がけ、透視図解イラスト
の分野でも第一人者として活躍。
近年は、作品の世界観全体を創造するコンセプトデザイナーとして高い評価を得る。
加藤直之と共同で手がけた小説『宇宙の戦士』(ハヤカワ文庫版)のパワードスーツのデザイン
は、『機動戦士ガンダム』を始めとするリアルロボットアニメの誕生につながった。
著書:
『宮武一貴マクロス&オーガスデザインワークス』(MOVIC、2005)
『宮武一貴デザイン集 HIGHLY ORIGINAL WORKS』(幻冬舎コミックス、2007)
■加藤直之 Naoyuki KATOH
1952年生まれ。静岡県浜松市出身。
SF画家・イラストレーター。
日本のSFアート分野の第一人者。
日本SF作家クラブ会員。
スタジオぬえ所属。
スタジオぬえ創設者の1人で、1974年商業誌デビュー。同年早川SFコンテスト・アート部門1
位入賞を期に「SFマガジン」(早川書房)などSF関連の表紙絵・挿絵・口絵を描き始める。
日本SF大会(1979年第18回、2008年第39回)にて2度の星雲賞(アート部門)受賞。
ワ−ルドコン2007(世界SF大会・横浜)のアートショーで「ベストアーテスト」の1人に選ば
れる。
趣味は読書とサイクリングと仕事。
著書:
『加藤直之画集I-III』(朝日ソノラマ、1981~1987)
『SF画家加藤直之 美女・メカ・パワードスーツ』(ラピュータ、2006)
『SF画家加藤直之 時空間画抄』(ラピュータ、2007)
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