1970年に生まれ、コマーシャリズムと消費文化が社会の隅々にまで浸透した80年代に最も多感な時期を過ごしたベック。「偽りの繁栄」に浮かれ、無理にでも背伸びをすることが主流だった時代に、彼は常にメインストリームではなく周縁にいた。お仕着せの文化におぼれるのでなく等身大で生きる者は、必然的に社会の片隅へ追いやられるという時代だった。
彼は15歳で「自主退学」し、18歳でグレイハウンドに飛び乗って生まれ故郷を後にする。日銭を稼いでなんとかしのぐ合間に、気の合う仲間を見つけてはジャム・セッションやパフォーマンスを繰り返す日々。もはや偶像となりつつあるアーティスト「ベック」の原点はここにある。だが当時のアメリカには「貧乏な白人」の居場所はなかった。自分の居場所を求めてさまよい、たまたま流れ着いた場所で数時間で仕上げた曲。それがあの「ルーザー」だった。
流れ流れた末に彼が行き着いた場所は「本来いるべきだった場所」だという。しかし、彼の旅はまだ終わってはいない。ベックは今後どこまで流れていくのか。そして私たちをどこに連れて行ってくれるのだろうか。(深澤晴彦)
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