内容紹介
かつては貧しい寒村だった長野県川上村。それが今や、日本一のレタス王国になりました。農家607軒の高原野菜の販売額は2007年に約155億円と、平均収入は2500万円を超えました。その農業従事者は30代が14.1%(全国平均は3.3%)、40代が22.6%(同6.1%)と、まさに働き盛りが農業に取り組んでいます。
日本は高度経済成長期を境に、急激に若者の農業離れが進み、今日では、多くの農山村が、過疎化、高齢化、後継者難などの問題を抱えています。農林水産省の2005年農林業センサスによると、農業の新規就業者のほとんどは定年退職を迎えた団塊の世代であり、65歳以上のいわゆる高齢者が増えているといいます。
川上村では農業後継者が育ち、家族も増え、出生率も全国トップクラスの高さで、逆に医療費は全国一を争うくらいの低さです。「健康な村」と言っていいでしょう。
後継者のいない産業はやがて衰退します。安全でおいしい食料は、やはり国産が一番です。さらに農山村が果たす役割に、「食料の供給」のほかに、「自然環境を守ること」と「現代生活に疲れた人々に癒しを与えること」があるのではないかと思います。そういう意味で、農山村は「屋根のない学校」であると同時に、「屋根のない病院」でもあるのです。
人、物、金のすべてが東京に集まる一極集中により、農山村ばかりか地方都市も疲弊し、東京と地方との経済格差が大きな問題となっています。この問題を解決するには、地方は、ミニ東京をつくるのではなく、特色ある地域づくりや他の産地に負けない特産品で活性化することが大切です。
そのためにはどうすればいいのか。地方の自治体の行政に携わっている方々の多くが頭を悩ませているのではないでしょうか。村営バスの運営や農村の情報化、さらにはヘルシーパーク構想や24時間オープンの図書館など、私が行ってきた「村づくり」を紹介することで、少しでもそうした方々の参考になれば幸いです。
私は農業に従事して53年、川上村長に初当選してから21年を迎えました。村の根幹である高原野菜のための土壌改良、新種開発、機械化、情報化、ブランド創り、そして輸出と、村民と共に多くの努力を積み重ねてきました。その「村づくり」の軌跡を一冊の本にまとめました。
地球温暖化をストップさせ、安全な食料を確保するためには、農業や林業の復活がカギになると思っています。二酸化炭素の削減も大切でしょうが、もっと大切なことは、農業や林業を現代に、いえ未来にわたって甦らせること――。 農業は私たちの命を守る「生命産業」であり、林業は自然環境や水を守る「生命維持産業」だからです。
著者について
藤原 忠彦(ふじわら ただひこ) 長野県川上村長。1938年長野県南佐久郡川上村生まれ。長野県立臼田高等学校中退。農業に従事した後、川上村役場職員に。企画課長を経て、1988年川上村長に就任。現在6期。21年目。長野県町村会長,全国町村会理事・行政部会長を務める。 全村のCATV導入など農業情報ネットワークシステムの構築や村営バスの運営、24時間図書館、森林文化の発信など先進的な村づくりで注目されている。 「都会の女子学生が、夏休みにアルバイトで川上村を訪れたのをきっかけに、川上村に嫁ぐことが多くなった」と目を細める。