本書は、こんにち(後期近代)の社会が、70年代までの安定的で同質的な
「包摂型社会」から、変動と分断を推し進める「排除型社会」へと移行したと捉
え、その構造とメカニズムを分析している。そしてこの悪夢のような現状をどの
ように克服するかを検討している。
いまや、逸脱や犯罪の原因を追求し更正させるといった包摂型の政策は重視さ
れなくなり、リスク評価を基準に、不審者の「奴ら」をあらかじめ排除・分
断・隔離するといった、保険統計的な犯罪予防政策が主流となった。本書はこの
ような排除型の政策を厳しく批判する----「シングルマザーやアンダークラ
ス、黒人や放浪する若者、麻薬常習者、クラック常習者などの、コミュニティで
弱い立場にある人々が、針で突つき回され、非難を浴びせられ、悪魔のように忌
み嫌われるようになった。このような新たな排除の世界にあって、本当に革新的
な政治をおこなおうと思えば、私たちを物質的な不安定と存在論的な不安の状態
に置いている根本原因、すなわち正義とコミュニティという基本問題を避けて通
ることはできない」。
だからといって、かつての包摂型の社会を懐かしんでも気休めにもならない。
ノスタルジーにふけり、かつての包摂型の政策をそのまま復活させることは、
いっそう息苦しい社会を招きかねないからである。わたしたちが取り組まなけれ
ばならない課題は、新たな形態のコミュニティ、市場の気まぐれに左右されない
雇用、八百長のない報酬配分----これらをどう実現するかなのである。
この排除型の社会にあわせて生きていくしかない...などと、決して諦めては
いけない(これこそ著者が最も強調している点である)。
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