第一章から第八章まで、風・時・光・波・地・壊・色・慈のテーマで構成してい
ます。
章見出しには、テーマのイメージを膨らませる一文を添えています。
ページを開くと、左ページに詩文、右ページに絵画作品が載っています。
相互にイメージを増幅させるような配置にしていますが、絵画作品単体として鑑
賞できる体裁と、文章表現としての独立性にも配慮した並列な鑑賞スタイルを目
指しています。
詩文は、そのイメージ世界に容易に入り込めるよう、日常的でカジュアルな言
葉を使っていますが、誰にでもあるどこか懐かしい記憶を呼び覚ますような内容
にしています。
ゆったりした時間を過ごせるように、書体は時間の重さを感じさせる隷書体の
ファミリーから選びました。
現在の秒刻みの人の時間が失っているものを取り戻すためです。
絵画作品は、モノトーンによる表現の可能性をシリーズ化したもので、画面全体
を占めるのは紙の上に鉛筆芯の細い直線だけで描かれた、特殊なドローイング作
品です。
彩色が限られた部分にありますが、色鉛筆を同じく直線で重ねています。
消しゴムは全く使用しないで、常に足し算としての制作をしました。
それは、暮らしている時間が後戻りできないように、制作も引き算をしないため
です。
ゆっくり見ていると、いろいろなイメージが湧き出るように描いています。
末尾のページでは技法と画材についても触れましたが、これは同じ技法分野と表
現方法が過去に無いからです。
装丁は読み手のストレスが開放され手肌にも馴染むように、手触りと優しく見え
る目触りの良さを配慮した用紙の選定をしました。
この本は(少し固い言い方ですが)、人の想像力とイメージの展開力を再発見し、
時間の中に閉じ込められた自己表現力を開放するトリガー(引き金)となればとの
思いから作りました。
一般的な画集とは少し異なりますので、絵画作品の制作年・タイトル・サイズ・
画材データは載せていません。
自分の居場所を失いかけた時、手にとっていただければと思います。
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