本書に掲載された建築のうち最も古いものは、1958年の菊竹清訓設計によるスカイハウスである。終戦後の日本が近代化を杖として未来へと向かったころの小さな住宅建築である。日本が西洋の模倣を離れ、日本人の生活と近代化の調和へと目を向けた時期の象徴と言っても良いだろう。そこから高度成長を経てバブル崩壊へと至る日本の現代建築の展開のドキュメントとして、この本は読むことができる。そしてその本を手に取り出かけてみれば、実際にその建物が建っている姿を見ることができるのだ。その意味で本書の巻頭言にもあるとおり、東京は「現代建築博物館」であり、本書はその博物館を巡るガイドブックなのである。
本書に登場する建物の多くは、バブル経済に躍らされ東京の街の表情が激変した80年代に成立した個性的な建物である。『2』に掲載された建物の姿と見比べてみればデザインの背後にある体質の差のようなものがはっきりと伺えるだろう。今から考えればほとんど狂気の沙汰とも言うべき当時の状況が、そこにありありと現れている。ただ一種の気恥ずかしさと共に、そこに一寸の懐かしさを感じる向きも少なくないだろう。そんな時代もあった、そんな建物がカッコよく見えた時代があった、そういう歴史が東京の街には刻まれている。それはあなたが生活している現在の街に今も生きている歴史である。本書をひもといて、そんな身近な歴史を見つけてみてはどうだろうか。 (日埜直彦)
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