「20世紀後半でもっとも魅力的な知の楽園の園がちらちらと見えても、まじめに科学の勉強をしたことがないのだから(中略)このまま永遠に中に入れないのだろうか? 現代という時代の色を決定するほどの、とてつもなく刺激的な思想が隠れているというのに、そんなちっぽけな理由で見逃してしまっていいのか」
科学への、このようないわば「人文学的」関心を抱く読者のために書かれたのがこの本である。そうそうたる顔ぶれの現役科学者や研究家へのインタビューをもとに、歴史上の12人の偉大な科学者の功績を評価している。よく練り上げられた本文の流れの上に、しっかり編集・再構成されたインタビューが乗せてあるので、情報は凝縮されていて冗漫なところは全くない。また、対立的な意見や異なった立場や視点からの意見を対比させることも心がけられている。
天才の意外な素顔や逸話の裏側の真相などの興味深いエピソードがふんだんに盛り込まれており、生き生きとした人間像が描かれているところは、さすが作家である。文系人間の人間的好奇心を十分に刺激され、数式や難解な理論にまみれることもなく、ここちよく「科学の園」のハイライトを楽しめる。
特に、偉大な科学者という媒体を用いて、今をときめく科学者や研究者たちそれぞれの「科学」観を語らせるという基底のテーマがきっちりとあるところが、この本を、平易で興味深いと同時にある種の格調の高さをも備えもつものにしている。この意味で科学の道を目指す青年にとっても示唆に富む本といえるだろう。ただし、専門家によって執筆された本ではないことに留意すべきである。正確で詳細な情報を必要としている専門家向けでは決してない。
厚い本だが各章ごとに独立しているので、断続的な読書時間しか取れない忙しい方にも、ベッドサイドにおいて眠る前にちょっとという方にもおすすめだ。(小野ヒデコ)
内容(「BOOK」データベースより)
実は、地動説の証拠をまったく掴んでいなかったガリレオ。両親と非常に不仲で、焼き殺したいとさえ書いていたニュートン。「革命に科学者は要らず」の言葉と共に断頭台の露と消えたラボアジェ。製本職人から、英国で最も偉大な自然哲学者へと上りつめたファラデー。橋がないことに気付かないほど、抽象世界を彷徨ったポアンカレ。不倫スキャンダルに関して、ノーベル賞委員会と争ったキュリー夫人。現代科学の巨人が贈る、12人の偉人の知られざる姿。
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