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物語は、孤高の天才ピッチャー・原田巧が、山間の小さな町に引っ越してくる場面から始まる。新天地で待っていたのは、彼の才能を受け止めるキャッチャー・永倉豪との出会い。2人はお互いの力を認め合い、バッテリーを組む決意をするが、進学した中学校の部活では、監督が徹底管理の野球を強いていた。巧の才能と傲慢なまでの自信、野球の醍醐味を追求する真摯な気持ちが、部員たちを少しずつ変えていく――。
当初は児童書として出版され、権威ある児童文学賞も受賞した本書。その人気は世代の枠を越えて広がり、「本の雑誌」など各誌が絶賛。文庫化、コミック化、さらに2006年3月には、「陰陽師」を手がけた映画監督・滝田洋二郎の手で映画化もされている。
いわゆる「スポ根小説」ではない。著者・あさのあつこが描くのは、野球そのものというよりも、そこに関わる人びとの結びつきやつながり。中心となるのはバッテリー2人の交流だが、その友人、家族の関係にもスポットが当てられる。人物描写は、丁寧かつ秀逸。友情や努力といったわかりやすい部分だけでなく、中学生という年代に特有な、優しさの中に残酷さを秘めた複雑な心情、言いたいことを言葉にできないもどかしさを、深い部分まで掘り下げてみせる。
ひたすら最高のピッチャーになることを目指し、他人をふりまわし、傷つけ、そうすることで自分をも損なう巧。そんな彼に、祖父・洋三は言う。「支え合うとか助け合うとか、そんなかっこいいもんでもなくて、人間に興味がないやつには、他人のことわかりたいとか、自分のこと伝えたいとか思わんやつに野球はできんのじゃ」
バッテリーという一対一の濃密な関係を軸に、人と真摯に向き合うことの意味を問う。佐藤多佳子の『一瞬の風になれ』とともに、スポーツ青春小説の傑作と呼ぶにふさわしい作品だ。
(小尾慶一)
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出版社/著者からの内容紹介
そうだ、本気になれよ。関係ないこと全部すてて、おれの球だけを見ろよ。
中学入学を目前に控えた春休み、父の転勤で岡山の県境の街に引っ越してきた巧。ピッチャーとしての自分の才能を信じ、ストイックなまでにセルフトレーニングに励む巧の前に同級生の豪が現れ、バッテリーを組むが…。
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