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4.0 out of 5 stars
女性だって性を楽しみ、言葉を楽しむ。, 2003/1/3
(引用歌はすべて『恋する肉体』より) タイトルは『恋する肉体』、帯文に「奔放で無垢なエロティック歌集」とある。一目瞭然、性愛をテーマとした短歌集である。 が。 帯もタイトルも、どうも中身を表していないように感じられる。 奔放で無垢というのは、セックスが禁欲や穢れという言葉と隣り合わせであった頃の感覚であろう。 こういう言い方はいやなんだが、タブーの消失した21世紀の恋愛風景と言ったほうがまだ正確だ。 この本にあるのは、豊かなセックスライフ、だと思う。 特にどの本だとは言わないが、これまで性愛を題材にした歌集に登場する女性は、ウェットだったと思う。好きな男がいて、揺れ動く気持ちがあって、その行き着く先に性がからむ。この本はそうではない。 著者は女性、主人公も女性。そして、主人公はアグレッシブに性に臨む。性技も大胆で多様。その場面に必ず存在するはずの男性の姿は限りなく希薄で、そのことから主人公自身が性を、そして恋愛つまり異性とのコミュニケーションを楽しんでいることが推し量れる。 目を閉じて舌を絡めてふと気付くあなたの顔が思い出せない もう一点強調すべきことがある。 この本の中で豊かなのは性生活だけではない。豊かな言葉が性の快楽を描写するのに惜しげなく用いられている。 軋んでる私の錆びた蝶番油を挿してあなたの舌で プツプツと弾ける音を響かせて私の石榴舌でこそげる 節目節目で隠喩が利いている。それは露骨な表現を避けるためだけとは思えない。そう表現したほうが深みや広がりが出ることが意識されて言葉は選ばれているようである。 忘恩の一角獣よ愛(こころ)あらばわれを犯せよ処女(をとめ)の我を 上の引用は「夜伽話」という童話を土台とした連作より。性愛の風景が連なるなかにこういう遊びが挟まれていて、またそれがよいアクセントになっている。 一冊の本としてたいへん面白く読めたのだが、よい歌の間をつなぐ歌に、広がりのない歌が少なくなかったのが残念なところ。
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