主人公は著者の分身とみていい。「私」は、オーストラリアを拠点にしている「常打ち(じょううち)賭人」である。要するに賭博でメシを食っている。そんな「私」がひいきのカシノで、若いが腕利きの女性ディーラー、ミーガンと知り合う。彼女の夢は「私」のような常打ち賭人になること。ある日彼女は、「私」にその夢の実現を相談する。私は博徒の苛酷さと無慈悲さを説き、やめさせようとするが、彼女は聞き入れない。常打ち賭人とは、「負けることを受容する」賭けをし、惨敗しても生き延びることに執着する人種なのだ。
私の心配をよそに、ミーガンは驚異的な勝ち星をあげていくが、そんな彼女の前に1人の男が立ちはだかる。ディーラー時代、彼女にしつこく言い寄った男だ。彼の挑戦を受けた彼女は、しかし一敗地に塗れ、身体をもてあそばれる。はたして、彼女はリベンジできるのか。「私」が仕掛けた乾坤一擲の勝負の行方は?
雑誌連載時のタイトルは「打たれ越し」。文字どおり「打たれ、打たれて、打たれ越せ」というフレーズが、文中に繰り返される。このリフレインが、読んでいる間も読了後も、パーカッションのリズムのように強烈に響いて、快感となってくるのだ。その勝負哲学のリズムに、身を任せてみるといい。(文月 達)
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