内容紹介
私が石破氏と初めて会ったのは、自民党本部で開かれた「情報衛星に関するプロジェクトチーム」の席だった。当時は北朝鮮による弾道ミサイル・テポドン1号の発射直後で、衛星画像解析の世界的権威、坂田俊文東海大学教授とともにブリーフィングを行った。
石破氏の父・二朗氏(元自治大臣)とは、鳥取県知事と県紙・日本海新聞の記者の間柄でお世話になったが、石破氏とは初対面だった。次に会ったのは、栗栖弘臣元統合幕僚会議議長の追悼会の席だった。このとき石破氏は防衛庁長官をすでに2年ちかく務めており、防衛力のあり方検討会議などによって防衛庁改革を精力的に推進しているところだった。私のほうも小泉内閣の「押しかけブレーン」として自衛隊のイラク派遣などに深く関わり、いわば当事者の立場だった。 直後の8月30日、防衛庁の大臣室で1時間半、主にイラク派遣と米軍再編について二人きりで話し合った。正直私は舌を巻いた。兵器をはじめ、軍事に明るいことは知られていたが、安全保障に関する法律・制度と故事来歴について、日本に並ぶ者がいないのではないかと思うほどのレベルに達していた。
このあと武力攻撃事態対処法などについて私の考えを聞いてもらう機会があったが、石破氏は午後の3時間の時間確保を求め、場所も国会図書館の議員閲覧室を指定してきた。石破氏は、「ここなら必要な資料をすぐに持ってきてもらえますからね。国会図書館は議員活動のためにあるのに、使う人が少ないのは残念です」と苦笑していたが、ここでも私は政治家としての石破氏の真剣さを感じないではいられなかった。
石破氏はその後、福田内閣で防衛大臣に就任し、官僚機構の面従腹背ぶりを目の当たりにすることになる。政策などに通暁している政治家ほど官僚機構から嫌われ、疎まれるが、それだけでは一人前ではない。いかに大臣の主導で決まったものでも、怖がられる面がないことには実行は覚束ない。麻生内閣の農林水産大臣就任直後、官房長を更迭した石破氏には、防衛省での学習の跡が強く感じられた。
本書の対談を始めた直後、話題が自民党総裁選に及んだとき、どちらからともなく「どうして総裁選の候補者は世界の平和、国家の安全を国民に訴えないのだろう。平和と安全があって初めて、安定した経済活動も可能となり、繁栄を実現できるというのに、不思議なことですね」ということになった。翌々日、石破さんは自民党総裁選に立候補し、経済的繁栄の前提となる平和と安全について国民に強くアピールすることになる。総裁選出馬で石破氏に対する国民の評価が上昇したことは周知の通りだ。
中国の『三国志演義』に「男子三日会わざれば刮目して見よ」という言葉が出てくる。人の学業や仕事、人間性などがいかに向上したか、よく見なさいという意味である。初対面から6年後に会った石破氏は、政治家としてだけでなく、その言葉を思わせるに十分な軍事専門家に大化けしていた。
ひょっとしたら、大政治家の伝記に大化けするかもしれない。
本書は、ジャーナリスト・坂本衛氏が企画し、対談の構成・まとめを行ったものに、石破、小川が加筆したものである。
内容(「BOOK」データベースより)
戦争や平和について語らない、語れない不思議な国・日本の「戦争力」と「平和力」を検証する。