アメリカン・ドリームの物語がいつも貧しい過去の境遇から始まるように、このロンガバーガーの物語も、恵まれているとはいえない生い立ちから始まる。バスケット作りの職人である父、12人兄弟の5番目、幼少期からのアルバイト、そして学習障害、吃音(きつおん)、てんかんの持病。周囲にからかわれて、小学校を3度、留年したともいう。
しかし、ロンガバーガーはそのハンディなど無縁であるかのように、ひたすら両親や街の人々への感謝を述べ、また、アルバイトやセールス員、軍役、レストラン経営などの仕事に喜々としてチャレンジした様子を物語っている。とくに、仕事の体験からは、商品を売り込むのではなく自分を売り込むこと、組織全体への指令に一貫性がなければ必ず混乱を招くこと、安さで勝負してくる競争相手はどこにでもいること、従業員の信頼を勝ち取るためには従業員への信頼を示すことなど、体得したさまざまなビジネスの真髄を論じている。
また、バスケット事業開始後のエピソードでは、企業経営者の観点から、知恵の出所、キャッシュフロー、変化、リーダーシップ、ビジョン、優秀な人材、インセンティブといった多数のテーマを論じている。これも独自に体得したノウハウとして新鮮である。本書の最後には、改めてそのノウハウを「18の経営指針」としてまとめている。
「私に提供できるものは自分の人柄しかなかった」と述べ、繰り返し従業員との信頼関係づくりの大切さを論じるロンガバーガー。その謙虚さと誠実さが周囲の人々を動かし、成功を呼び寄せたのでは…などと想像が膨らむ。(棚上 勉)
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