本書には、この偉大な経営者の人柄と経営哲学、過去に実行した戦略などが、綿密な取材から描き出されている。著者のロバート・スレーターはタイム、ニューズウィークなどに25年以上勤務し、ウェルチの本も含めビジネス関連で多くの著書を持っている。それだけに、1冊を通じてこの経営者の偉大さや人間的魅力があますところなく表現されており、読みごたえがある。
本書は、ウェルチの人間性にスポットを当てた本だが、経営者にとっても役立つ示唆に富んでいる。「変化を恐れるな」「リーダーになれ、管理はするな―― 管理者は惑わせ、リーダーはやる気にさせる」「数字にこだわるな―― 数字はビジョンではない」などのメッセージは、いつの世も変わらない、経営者としての重要な心得であるといえよう。
経営体質改善のために大規模な人員削減や買収・売却をする彼の経営は、斬新だが、時に冷酷な印象も与える。しかし、本書を通じて著者が訴えたかったのは、確固たる信念を持ち、自らの経営理念を実現することの重要性ではないだろうか。国や企業が変わっても決して変わることのない、経営者としての資質や心構えを、本書は伝えてくれているのである。(土井英司)
時期によって変わってきているが,彼のキーワード(フレーズ)をいくつか本書からひろってみると,以下のものが例としてあげられるが,これらが"アヤ"をなして社の内外に織り込まれていくのが良くわかる。
▽「リーダーになれ,管理はするな」……社員側からすると「ボスの要素をつまみだせ」▽「ディレイヤリング」……組織の階層の削減,境界のないコラボレーション▽「大企業の体力と小企業の魂」……小さな会社のように身軽に動く▽「学習する文化」……最高のアイデアをみつけて実行すること,毎日学習するにはどうするか考える▽「ストレッチ」……些細な数字より夢に興奮したい▽「シックスシグマ」……単に品質向上ではなく,顧客との距離を縮める▽「ナンバーワン,ナンバーツー」……市場を支配できる企業の構築。
企業のリーダーに求められる資質は洋の東西を問わずそんなに変わらないはずだ。要は,自分の方針をどこまで徹底できるか,全社員がそれを理解させるかにかかっていると思われるが,ウェルチの能力は,20年前も優良企業だったGEをあえてリストラを行うところから始めた,変化に対する「柔軟な力」であり,CEOの仕事は「人」であると言い切って,教育投資を巨額に行い,コミュニケーションを執拗にとり続けたところにあるようだ。
巻末の索引に,「誠実さ」等の普通名詞が引用されているのも珍しいが,これもアナリストが「文化」を評価する会社に仕立て上げ,社内に語ると同時に株主に発信を怠らない(Letter to Share Owners)彼の姿勢が表われている。翻って,わが国企業の「営業報告書」はその内容の無味乾燥さはどうしようもない。ウェルチに習って改善する余地は十分にあろう。 (ミネベア 顧問 竹中 東聖)
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