著者はかつて日本原子力研究所の研究員であった。本書のテーマはまさに専門分野である。世界各国における原発の状況をはじめ、日本の原発が抱える問題点、技術者たちの心情など、細部にわたる記述がこの物語を臨場感のあるものにしていると言えよう。また、本書では、極端に短い文章と語尾の重複によって、テロリストと対策本部の緊迫した情勢が巧みに表現されている。読む者を引き込むこの筆致は、『イントゥルーダー』で1999年度サントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞した著者ならではと納得できる。ただ、主人公の科学者と原発反対派女性との恋愛にいたる経緯には、いささか説得力に欠ける部分があるようだ。主義や立場が対極にあり、なおかつ「ひとまわり以上」も年の離れた男女が、それでも引かれ合う必然性の描写が欲しいところである。(冷水修子)
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