スイスのジュネーブでの多忙な日々を綴った日記や目の前に立ちはだかる問題に挑む姿勢からは、緒方氏の揺るぎない「人道主義」と決断に際しての徹底した「現場主義」がうかがえる。
事例の1つが90年代前半のクルド難民支援である。その際、旧来の「難民」の定義が障壁になったという。難民条約によれば「国境の外に出た民」となるが、フセイン政権の迫害によってイラクからトルコに向かった約40万人のクルド人は越境できずにイラク国内にとどまった。しかし悲惨な現状を目の当たりにした緒方氏らは、国連の行動規範を変えてまでの援助を決断、実行に移した。また旧ユーゴ紛争では「停戦下の活動」というUNHCRの常識を打ち破り、防弾チョッキを装着して戦闘地帯での支援に奔走する。
学者としての論理的かつ冷静な哲学と熱き使命感に支えられた行動力から、多くの教訓を学び取りたい1冊。
内容(「BOOK」データベースより)
本書は、著者の六十三歳で国連難民高等弁務官(UNHCR)としてジュネーブに赴任してから十年にわたる難民援助の活動を記録したエッセイ、日記、インタビュー、スピーチを選び、まとめたものである。史上空前の二千二百万人の難民を救済するために、どのような国際協力が行われたのか、そこにはどんな問題が起きたのか、次々と噴出する難問に現場で指揮をとる著者はどう判断し対応したのか。著者の仕事を通じて、本書は国際社会の現実を生き生きと伝えている。
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