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死体に卵を産みつけるハエや、それらを食べようとする虫など、置き去りにされた死体周辺に集まる昆虫を分析して、死亡時刻を推定する「法医昆虫学」。その第一人者が、殺人捜査の実例から法医昆虫学の手法を紹介し、また、法医昆虫学というジャンルが認められるようになるまでの過程を明らかにした。
殺人現場における昆虫学者の基本的な仕事は、採取された昆虫の様子から、死後経過時間を決定することにある。しかし昆虫は、死んでから後に遺体を動かされたかどうかを知る重要な手がかりを与えることもある。また、生息場所が特徴的な昆虫が採取されると、犯行現場も推定できる。こういった調査の一部始終が非常に詳しく描かれているため、腐乱死体や、そこに群がるウジの様子など、文章から鮮明な絵を想像してしまい苦しめられることにもなりかねない。ただし、あちこちにちりばめられたユーモアあふれる表現やジョークが、陰うつになりがちな文章の救いになっているのも確かだ。
犯罪に対する法医昆虫学の威力と、この学問誕生の経緯が本書のおもしろさである。特に、まるで推理小説の謎解きのように鮮やかな法医昆虫学者の証言は、新しいミステリージャンルの出現を思わせるような驚きがある。だが本書は、現実の殺人事件にのっとったノンフィクションであり、ミステリーではない。ユーモアに包まれた言葉からは、学者としての高揚感より、犯罪に対するやりきれない思いが伝わってくる。(朝倉真弓)
内容(「BOOK」データベースより)
虫たちは決して殺人事件を見逃さない。驚くべき早さで死体を発見し、卵を産みつける。真の第一発見者である昆虫から手がかりを得るために、死体につく虫を丹念に集める昆虫学者がいる。彼らは現場から採集された標本を分析し、捜査官をも驚愕させる確度で死亡時刻を推定する。時には死後数年たった白骨死体であっても、昆虫の証拠から犯行の時期を推定できるのである。普通の昆虫学者だった著者が殺人現場へと乗り込み、「法医昆虫学」の第一人者となるまでに経験した数々の捜査を例に、このまったく新しい捜査法を紹介する。