著者が描く、環境破壊の実態はすさまじい。
かつて放射性廃棄物を川や湖に流していたロシアのある地域では、住民はみな青白く、疲れやすさや関節痛、慢性的な鼻血を訴える。外国資本の工場建設と自動車の普及が進むタイは「胸が悪くなるほどの嫌な化学臭のするねっとりとした汚い空気」が充満している。衝撃的なのは、本書冒頭に出てくる中国の様子だ。ひどい日には顔の正面で腕を伸ばしても指が見えない。工場が垂れ流した化学物質で一面が白い泡状の水煙に覆われた川があるかと思えば、その川から10m足らずの畑で農夫が青菜を摘んでいる。
途上国住民に乏しい環境意識環境をめぐる南北間格差を痛感
これら深刻な環境破壊に対し、中国をはじめとする発展途上国の住民の間では経済成長のためならやむを得ないといった見方が主流のようだ。
環境をめぐる南北間の温度差を痛感せずにはいられない。確かに、日々の衣食住の問題に比べると地球環境問題の切迫感は薄いのだろう。だが、環境破壊は一国にとどまる問題ではない。すべての国が危機感・切迫感を共有し、足並みをそろえて行動しなくては、人が生きながらえる環境は守れない。
著者は最終章で問題解決の処方せんを示す。先進国はまず過剰消費をやめること、環境保全に役立つ技術を育成する政策を打ち出すこと、その技術を北から南へ伝達し、南の国々が環境に配慮しつつ経済発展できる手助けをすることなどだ。だが、地球温暖化防止ハーグ会議(COP6)決裂、米国の京都議定書離脱宣言など昨今の動きは、これらの処方せん実現が容易ではないことも物語っている。
我々が直面している危機がいかに大きく、その問題解決のためいかに力を結集して努力と工夫を重ねなくてはいけないかを生々しく伝える貴重な一冊である。
(経済ジャーナリスト 小林佳代)
(日経エコロジー 2001/07/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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