中心になるのは国防総省の部長を務めARPAネットに予算を付けたジョゼフ・C・R・リックライダーと、マサチューセッツ工科大学(MIT)リンカーン研究所に勤めるウェスリー・クラークという2人の科学者だ。従来、リックライダーが「銀河間コンピュータネットワーク」という魅惑的な言葉で、現在のインターネットのコンセプトを提示したとされてきた。しかし著者は綿密な調査の末、リックライダーはむしろ「巨大な1台の中央コンピュータの計算能力を沢山のユーザーが分け合って使う」システムを考えていたことを明らかにする。「グラフィック・ディスプレイを利用し、人間にとって使いやすいインタフェースを持つ小さなコンピュータ」という現在のパソコンにつながる構想を持っていたのはクラークのほうだったのだ。
この2人が影響しあい、さらにはリックライダーの跡を継いで国防総省における研究予算分配を担当したロバート・テイラーが、リックライダーのメモを良い意味で「誤読」したことから両者の思想が融合してインターネットの基本構想が立ち上がったと、著者は結論づける。
欧米の研究書を孫写しすることなく、自らオリジナル資料にあたって一つひとつ事実をねばり強く発掘していく姿勢には感服する。地味な本だが、インターネットの歴史を知りたいならはずせない一冊だ。過去を知り、未来を考えるために読もう。
(ノンフィクションライター 松浦晋也)
(日経パソコン 2003/3/31 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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