日経BP企画
アダムの呪い 前作『イヴの七人の娘たち』で、すべての女性の先祖は最終的に全人類に共通のたった1人の母にまでさかのぼることができる、と示した著者。本書では男性の共通先祖を追い求める。女性のときはミトコンドリアDNAを用いたが、男性で用いるのはY染色体だ。冒頭、今回の研究にのめりこむきっかけが生き生きと描かれる。
オックスフォード大学分子医学研究所の遺伝学教授である著者は、製薬会社から講演を依頼されたのだが、会社の会長の姓が偶然、自分と同じ「サイクス」だったために、関係者に何度も親戚なのかと聞かれた。もしやと思いDNAを調べたところ、ぴったり一致したのだ。
このエピソードを入り口に、DNAの役割、染色体発見の歴史的経緯、ヒトの性別がどう決まるのか、なぜ2つの性があるのか、などの疑問に次々と答えていく。チャールズ・ダーウィンが唱えた進化論、「“種の存続のため”に進化は機能する」を、ウィリアム・ハミルトンが見事に覆して「自然選択では“遺伝子のために”進化が機能する」と証明してみせるあたりの記述は、息をもつかせぬスピード感に満ちている。タイトルがなぜ「アダムの呪い」なのかの謎解きは、ぜひ読んで楽しんでほしい。第一線の研究内容を平易な言葉で書いているので、最後まで飽きずに読めるだろう。
(日経バイオビジネス 2004/08/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
内容(「BOOK」データベースより)
それは一本の電話がきっかけだった。著者サイクスが自分と同じ姓をもつ赤の他人のDNAを調べると、父方の遠い先祖でつながっていた。そして、父親から息子に引き継がれる男性DNAをたどったとき、そこには驚くべき事実が待っていた。どうして男性が戦い好きでどうして暴力的で、どうして不安定なのか、すべての疑問はひとつの結末にたどりつく…滅亡のシナリオをもった遺伝子Yへと。遺伝子研究からあきらかになる自然が企てた究極の組み換え実験。あなたの体のなかにかくされた滅亡の遺伝子がいま解明される。