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しかし、テクノロジーの進化は私たちに自由ばかりを与えるわけではない。イギリスでは1994年に「クリミナル・ジャスティス・アクト」が制定され、テクノやハウスなど「反復するビート」を含む音楽は違法とされ、100人を超えるパーティーやレイヴも同じく違法となった。テクノロジーの進化は、狭隘(きょうあい)な精神を生みだすことにもつながるのだ。だがもちろん、あらゆる文化はこういった偏狭さを乗り越えて育つものであり、ポスト「テクノ」の担い手たちにもそのような動きが見られることは頼もしい限りである。
テクノミュージックの未来を見つめることは、テクノロジーと文化のかかわりはもちろん、さらにはテクノロジーと人間、テクノロジーと社会との関係について考えることにもつながるのだということを明解に示した1冊。(深澤晴彦)
それでは、そのようなコンピューター利用は、音楽をどのように変えていくのだろうか。さらには、音楽を楽しむ「耳」をどのように変えていくのだろうか。この問題をさまざまな関係者が論じたのが本書だ。途中には1998年から2000年にかけてに行われたシンポジウムの議事録が挟み込まれ、現場の生の声を読むことができる。
身近な例でも、大抵のパソコンにはMIDIを使った音楽再生機能が付いているし、最近ではMP3ファイルによって録音した音楽そのものをパソコンで再生することもできるようになった。しかし本書を読むと、もっと本質的な部分でコンピューターが音楽の本質に影響を与えつつあることが理解できる。
音楽を聴くということは耳を訓練するということでもある。だから音楽が変質するということは、音楽を受容する私達の「耳」が変化するということにほかならない。本書の末尾近くでは、鼓膜を経ずに骨伝導で音情報を聴覚神経に流し込む技術が、音楽をどのように変えるかが議論されている。「魂の叫び」というようなナイーブな音楽観をはるかに超えて、技術と音楽は相互作用をしているのだ。
音楽に興味を持つ日経パソコン読者なら読む価値のある一冊である。
(ノンフィクションライター 松浦 晋也)
(日経パソコン 2002/02/18 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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