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ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック―拡散する「音楽」、解体する「人間」
 
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ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック―拡散する「音楽」、解体する「人間」 (単行本)

by 久保田 晃弘 (著), 椹木 野衣 (著), 佐々木 敦 (著)
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   近年、コンピュータやネットワーク分野における技術革新は驚くべきスピードで進んでいるが、その影響は当然のように音楽の世界にも波及している。今では、わずかな知識があれば誰でもノートパソコンの画面上で音楽を作ることができる。ステージに置かれた1台のパソコンの前に寝転び、数時間におよぶライブをこなすプロのミュージシャンもいる。飛行機のコックピットのような巨大な装置だった初期の電子楽器は、数十年を経て我々の片腕にすっぽり納まるまでになった。これはひとえにテクノロジーの進歩の産物といっていいだろう。

   しかし、テクノロジーの進化は私たちに自由ばかりを与えるわけではない。イギリスでは1994年に「クリミナル・ジャスティス・アクト」が制定され、テクノやハウスなど「反復するビート」を含む音楽は違法とされ、100人を超えるパーティーやレイヴも同じく違法となった。テクノロジーの進化は、狭隘(きょうあい)な精神を生みだすことにもつながるのだ。だがもちろん、あらゆる文化はこういった偏狭さを乗り越えて育つものであり、ポスト「テクノ」の担い手たちにもそのような動きが見られることは頼もしい限りである。

   テクノミュージックの未来を見つめることは、テクノロジーと文化のかかわりはもちろん、さらにはテクノロジーと人間、テクノロジーと社会との関係について考えることにもつながるのだということを明解に示した1冊。(深澤晴彦)



日経BP企画

ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック 拡散する〈音楽〉、解体する〈人間〉
 物理学的に、音楽は音――つまり空気の振動を組み合わせたものだ。このため、開発当初は「計算する機械」だったコンピューターは、すぐに音楽に使われるようになる。創生期のさまざまな実験を経て、1980年代に登場したテクノミュージックで、コンピューターは音楽にとって重要な要素として一般に認知されたといえるだろう。

 それでは、そのようなコンピューター利用は、音楽をどのように変えていくのだろうか。さらには、音楽を楽しむ「耳」をどのように変えていくのだろうか。この問題をさまざまな関係者が論じたのが本書だ。途中には1998年から2000年にかけてに行われたシンポジウムの議事録が挟み込まれ、現場の生の声を読むことができる。

 身近な例でも、大抵のパソコンにはMIDIを使った音楽再生機能が付いているし、最近ではMP3ファイルによって録音した音楽そのものをパソコンで再生することもできるようになった。しかし本書を読むと、もっと本質的な部分でコンピューターが音楽の本質に影響を与えつつあることが理解できる。

 音楽を聴くということは耳を訓練するということでもある。だから音楽が変質するということは、音楽を受容する私達の「耳」が変化するということにほかならない。本書の末尾近くでは、鼓膜を経ずに骨伝導で音情報を聴覚神経に流し込む技術が、音楽をどのように変えるかが議論されている。「魂の叫び」というようなナイーブな音楽観をはるかに超えて、技術と音楽は相互作用をしているのだ。

 音楽に興味を持つ日経パソコン読者なら読む価値のある一冊である。

(ノンフィクションライター 松浦 晋也)
(日経パソコン 2002/02/18 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)


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