競走馬の血統を辿っていくと、優秀なものほど、かなり絞り込まれた系統樹になり、近親交配が頻繁であることがわかる。例えば、現在の全世界のサラブレッドの実に8割以上が、ノーザンダンサーという1頭の血統に属しているという「血の濃さ」に驚かされる。「血統が良すぎることは、悪いことでもある」と著者が言うように、近親交配が進むと、劣等性質が顕わになったり繁殖力が衰えたりする。血統の特性を理解した上での一種の雑種強勢効果を探って交配し、うまく育てれば、血統の良い面が開花するという。そのために、世界的なブリーディングの交流が行われているのだ。
本書では、名馬を取りまく血統の詳細かつ具体的な説明を経て、統計的分析を応用しつつ、血統を活性化させる方法論を示している。その活性源として、著者は、非主流血統、地域熟成血統、逞しい零細血統、北米異系超活性馬、高齢生殖能力種牡馬、卓越したBMS、高勝馬率種牡馬、名牝系という8つのファクターを挙げる。さらに、21世紀前半に繁栄しそうな系統について深い分析を行い、詳細な系統図が理解を助けてくれる。
欧米に比べて競走馬の血統の本格的研究が進んでいない日本において、著者の研究は快挙と言える。本書により、競馬新聞などの血統データを良く理解し、勝敗予想に役立てられるかもしれない。また、血統の面から、競馬を国際的視野で捉えることが可能になり、文化としての競馬を深く知ることにもつながるであろう。(松木晃一)
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