デジタルコンテンツ流通を理解するためには、技術や法律、ビジネスモデル、業界慣行等必要となる知識が多岐にわたる。技術面に限っても、メタデータ、複製防止、DRMシステム、配信などさまざまな要素が絡み合う。入門者はどこから手をつけてよいか途方に暮れるだろうし、実務家といえども全容を把握するのは難しい。本書は監修者らが提唱しているコンテンツID(cID)を軸に、これらの話題を整理している。
技術レイヤを中心とした構成だが、権利の流れの話や法律面からみたIDの意義についてといった、複数レイヤにまたがる話題も充実している。本シリーズの特徴である図版がふんだんに使われており、たとえばコンテンツ流通にともなうエンティティ間の複雑な関係を追いかけて理解することも容易である。
むろん、デジタルコンテンツ流通は環境が整備される途上にあるため、本書で書かれたすべての内容が将来にわたって変わらず正しいということはないはずだ。しかし、2003年7月の出版時点の情報はひととおりカバーされており、応用編として各地で行われている実証実験を紹介し、現状をできるだけ幅広く捉えようとしている。先端分野を学ぶためには、変わらぬ基本をしっかりと押さえつつ変化を追いかけていくことが重要だが、本書はそのための格好の教科書である。今後、多くの人や書籍から参照される本となるだろう。(松井康範)
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