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ドラゴンは踊れない (単行本)

アール・ラヴレイス (著), 中村 和恵 (翻訳)
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商品の説明

内容紹介

カリブ海はトリニダード・トバゴの首都
ポート・オブ・スペインの東に、
スラム街ラヴェンティルはある。
流れてきたごろつきども、
哀しくもたくましい女たちが
ごった煮のように暮らす場所。
ヤードに流れるカリプソのメロディー、
そしてスティールパンの響き。

定職ももたず、ひとりの部屋で、
オルドリックは年に一度のカーニヴァルで
自身が纏う壮麗なドラゴンの衣装をつくって
一年のほかの日を過ごしている。
ドラゴンにデビル、先住民、奴隷、
アフリカの神々や伝説の英雄たち・・・・・・
祝祭の日にマスカレードのキャラクターを演じることは、
それらを思い出すこと、伝えること、魂を吹き込むこと、
そして、その力を自分たちのものにすること。
祖先から受け継がれてきた
奴隷制時代の記憶が呼びさまされる。
自分たちのルーツを解釈し再演し、
抵抗の声をあげよ!

ところが、最近なにかが違う。
外国資本の大企業に飼い慣らされたスティールバンド、
抵抗の精神という根を引っこ抜かれたカーニヴァル!?
オルドリックとスラムのボス、フィッシュアイの
破滅的な抵抗が始まる。
そして、17歳のシルヴィアとのせつない繋がり・・・・・・

〈語りの天才〉ラヴレイスの、スピードとリズムに溢れた代表作。


内容(「BOOK」データベースより)

カリブ海はトリニダード・トバゴの首都ポート・オブ・スペインの東に、スラム街ラヴェンティルはある。流れてきたごろつきども、哀しくもたくましい女たちがごった煮のように暮らす場所。ヤードに流れるカリプソのメロディー、そしてスティールパンの響き。定職ももたず、ひとりの部屋で、オルドリックは年に一度のカーニヴァルで自身が纒う壮麗なドラゴンの衣装をつくって一年のほかの日を過ごしている。ドラゴンにデビル、先住民、奴隷、アフリカの神々や伝説の英雄たち…祝祭の日にマスカレードのキャラクターを演じることは、それらを思い出すこと、伝えること、魂を吹き込むこと、そして、その力を自分たちのものにすること。祖先から受け継がれてきた奴隷制時代の記憶が呼びさまされる。自分たちのルーツを解釈し再演し、抵抗の声をあげよ!ところが、最近なにかが違う。外国資本の大企業に飼い慣らされたスティールバンド、抵抗の精神という根を引っこ抜かれたカーニヴァル!?オルドリックとスラムのボス、フィッシュアイの破滅的な抵抗が始まる。そして、17歳のシルヴィアとのせつない繋がり…。“語りの天才”ラヴレイスの、スピードとリズムに溢れた代表作。

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5つ星のうち 5.0 たまらなく熱い人間讃歌, 2009/4/17
本書はまぎれもない傑作である。
ラヴレイスのドラゴンが、30年の時空を超えて
日本語で踊るときがとうとうきたわけだ。

アール・ラヴレイスは35年トリニダード(当時は英領植民地)出身の
男性アフリカ系作家。62年トリニダード・トバゴとして祖国が独立を果たす。
ブラックパワー・ムーヴメントが沸騰しつつあった66年、
名門黒人大学の米国ハワード大学へ留学。 79年本作を出版。

日本では知る人ぞ知る作家だが、英語圏文学ではカリブの代表的作家として
つねに名前が挙がる<語りの天才>である。
特筆すべきは、トリニダード出身で作家の先駆者CLR・ジェイムズに
<真のネイティヴ作家>といわれたように、
飽くまでもトリニダードにとどまりこの< 小さな場所>を描く点だ。
ジェイムズ、ジョージ・ラミング、VS・ナイポールら先輩世代はともかく、
ラヴレイスのあとの世代も活躍の場を英米などに求めトリニダードを去っている。

本書は、ポートオヴスペインに隣接する<丘>カルヴァリーヒルを舞台に、
カーニヴァルをめぐり繰り広げられる、貧しくも逞しい人びとの物語である。
愛の物語、親子の絆の物語、ドラゴンダンスの名手オルドリック・プロスペクトの
成長譚など、多彩な読みを可能にする人間讃歌だと思う。

時代設定でいうと50年代最後半から70年代初頭までの独立をはさんだ
<熱い季節>、つまりキューバ革命から公民権運動収束あたりまでを描く。
まるでE・ウィリアムズ『コロンブスからカストロまで』を引き継ぐように。
ただしこの建国の父がもちえなかった己の生を懸命に生きる民衆の視座で。
ヤード=路地庭の視線で。

序章を繙いてほしい。小題は<丘><カーニヴァル><カリプソ>。
トリニダード(国)のトリニダード(三位一体)だ。
本文と趣の異なる詩的文体なのだが、
そのリズムはまるで語り部が物語の前口上を語るようだ。
冒頭の偽キリストのコミカルな件から読者は、
ページを繰るのをとめられなくなるはずだ。

<丘>の住人にとってカーニヴァルこそが生そのものだ。
荒くれどもはクリスマス直後に街から姿を消しバンドの練習に籠もってしまう。
連中の魂である音楽と腕っ節を武器にした<丘>どうしの戦争の準備だ。
人生が賭かっているのだ。
そんなスラム生まれのスティールバンドやカリプソやマスカレードが、
やがて公式化・商品化し企業や金持ち連中に消費されてゆくさまを、
ラヴレイスは淡々と描く。

カリプソの歌詞に乗せてラストまで一気になだれこむあたりは、堪らない。

また、準主役たちの物語がやたらと面白く忘れがたい印象を残す。
シルヴィア、フィッシュアイ、フィロ…。脇役が脇役らしからぬ存在感を示し、
語りの展開をよりダイナミックにする。どの章も長篇のごとく奥深いのだ。
目撃者でないと決して描けないはずの生々しく膨大な細部がそれを実現している。

そして感嘆すべきは訳者の力量であろう。
詳細で的確な訳注および解説は、本書を一級の社会文化史資料とした。
めまぐるしい文体切替や訛りにも手がゆきとどき、本書のもつ疾走感と狂乱感、
そして格好悪い男の美学さえ、みごとに日本語に乗せえた。
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