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センセイの鞄
 
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センセイの鞄 (単行本)

川上 弘美 (著)
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   川上弘美といえば、生き物とモノ、時間と空間などさまざまなものの境目が溶け、混じり合うような、エロチックで不思議な世界を描いた作品が特徴的だ。

   本書では、日常を静かに淡々と過ごしていた2人がゆっくりと近づき、季節の移り変わりとともに、互いの関係を育んでいく大人の恋愛を描いている。恋愛といっても、勢いにまかせた情熱のそれとは違う。穏やかな情愛というほうが、しっくりくるような愛だ。あのどろりとした「川上ワールド」を期待する読者はちょっともの足りなさを覚えるかもしれない。

   およそ恋愛とは結びつかないはずの2人―― 38歳のツキコさんと70代のセンセイは、近所の駅前の一杯飲み屋で居合わせて以来の仲だ。お互い1人で酒を飲み、さかなの好みがよく似ている。
 「『女のくせに手酌ですかキミは』センセイが叱る。『古いですねセンセイは』と口答えすると、『古くて結構毛だらけ』とつぶやきながらセンセイも自分の茶碗いっぱいに酒を注いだ」
   憎まれ口をたたき合いながら、2人は共に過ごすようになる。

   センセイはツキコさんの高校時代の国語の先生だ。背筋をしゃきんと伸ばし、ジャケットを着、いつも同じ黒いかばんを頑固に持っている。一方のツキコさんは独身でもてないわけではないのだが、同世代の男性に誘われてもぴんとこない。かつては恋人とさえ「ぬきさしならぬようになってしまう」のを恐れていた。そんなツキコさんが、しだいにセンセイを強く求めるようになっていく。

   30歳の年齢差を超えるというよりむしろ、センセイの老いをしっかりと見つめていくツキコさん。ツキコさんのまっすぐな思いをまぶしい気持ちで受け止めるセンセイ。進展しているのかなんなのか、じれったい、ゆったりとした2人のやりとりが、ほほえましく、安らかだ。

   川上の紡ぐ言葉と情景がやわらかで、温かく、人を愛することのせつなさがじんわりと伝わってくる作品だ。(七戸綾子)

内容(「BOOK」データベースより)

「センセイ」とわたしが、過ごした、あわあわと、そして色濃く流れゆく日々。川上弘美、待望の最新長篇恋愛小説。

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5つ星のうち 5.0 ツキコさんとセンセイ, 2004/6/1
久しぶりに、ゆったりとした幸せな「恋」の話を読んだという満足感が得られる本でした。最近は激しく恋い慕うもの、恋愛を通して女が自立していくもの、夫婦でダブル不倫しているものなどの恋愛小説を読み続けて、ちょっと疲れていましたから、ずごく新鮮に感じました。ツキコさんとセンセイの、これは恋愛小説というより、“恋物語”と呼びたいと思いました。なぜ、この本が出た時に手にとらなかったかと、少し後悔しました。ツキコさんとセンセイは、淡々と酒を呑み、おいしいさかなを食べ、静かに話し・・・端からみればそれは立派なデートのようなんだけど、本人たちはそう意識しないで会っている、そんな二人の行間から切なさや愛しさやためらいが立ちのぼり、こちらの胸に迫ります。贔屓の野球チームをめぐる小さないさかい、ツキコさんのかわいいやきもち、「ツキコさんデートをいたしましょう」というセンセイの申し込み・・・どれをとっても穏やかで細やかで、こんな恋があるんだなあ、とため息。でも、センセイの老いを見据えた、謙虚な態度には頭が下がります。ツキコさんがセンセイを強く想うようにみえて、実は何もかも受け止めているセンセイ。30歳近く年の離れた二人に訪れる、センセイの最晩年。それを引き受けさせるのをセンセイはどんなに思い悩んだことかと考えると、胸に突き上げるものがありました。センセイがいつも持っていた黒い鞄。何も入っていないけれど全てが入っている鞄。ツキコさんの、究極の恋愛を全うしてしまった喪失感に、最後、再び胸を突かれました。あわあわとしているようでいて、いくつもの選択の上に成り立っていたツキコさんとセンセイの恋は、並のものではなかったのですね。
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5つ星のうち 4.0 センセイ, 2002/2/16
「私」と「センセイ」の物語が,丁寧に丁寧に,季節に沿って緩やかに流れていきます。ストイックなほどの二人の駆け引きは,それでも,おたがいに,決して無理しているようには見せません。これを単純に「大人の恋愛」と表現していいのかどうかは分かりませんけれど,時間をかけて美しく積み上がった「センセイ」の存在は,「私」にとって永遠の財産になったように思います。世間に恋愛の模様は限りなく溢れていますが,今の時代に,この物語を読めることは素敵なことです。
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16 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 大切にしたいです。, 2002/1/30
ずっと恋愛小説は苦手でした。そこには当事者しか酔えない感情があるからです。けれども、この本の1ページを開いたときから、私は「月子さん」でした。他者と関わるのが苦手な、中年でも少女でもない月子さん。気付くとどんどん自分でも、センセイに伝わらない思いが膨らんでせつなくなっていました。失うことは恐いことです。その恐さのあまりに求めなくなっている自分がいました。わんわん泣きましたが、その後、すっきりと、「失っても失っても進んでいこう。」と思えました、心から。
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投稿日: 2006/10/6 投稿者: こみかん

5つ星のうち 4.0 俳句を前提としたお付き合い?
川上弘美の恋愛小説の秀作。ひとつひとつの章がなかなかに俳味があり、風景描写も伊勢物語のような源氏物語のような、い〜い眺めがあります。汽車土瓶だの、爪の立った卸金... 続きを読む
投稿日: 2006/6/27 投稿者: オハラ翔子

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投稿日: 2006/3/31 投稿者: ファーブル

5つ星のうち 5.0 温かな、それでいて悲しい。
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投稿日: 2005/7/22 投稿者: 美花絵留

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