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パレスチナ生まれの批評家、研究者として、常に世界の現実に批判的な目を向け、政治的発言、行動もいとわなかった著者による精神的自叙伝。
『オリエンタリズム』をはじめとする主著の多くは学術的な色彩が強いが、本書は英国BBC放送向けに行われた講演をまとめた内容だけに、比較的平易な用語でつづられている。それだけに、20世紀後半を代表する世界的哲人の膨大な業績のエッセンス、入門編として位置づけることもできる1冊である。
主要なテーマである知識人論に関する主張は明確だ。単に知識を持つ者のことではなく、自立的に自己を見つめる「永遠に呪われた亡命者」こそが知識人なのだと著者は説く。権力に迎合せず、狭い専門性に閉じこもることなく、少数派であることを受け入れる。そんな知識人の特徴が、「大衆」「アマチュア」「周辺的存在」などといったキーワードとともに展開されていく。こうしたスタンスは、米国市民でありながら、繰り返し米国政府のパレスチナ政策に異論を唱えてきた著者の生涯ともぴったり一致する。
重要なのは、知識、批判、議論を自己目的化してはならないという論点だ。常にマイノリティーの立場に立ちながら、その集団に属することなく、むしろマイノリティーを選別する境界線の存在を否定していくのが本書における著者の戦略である。自己と他者を分かつものの歴史的な本質は何か。その点から目をそらさない本書における著者の思考の粘り強さは、それ自体が理想的な知識人としてのモデルを体現している。(松田尚之)
内容(「BOOK」データベースより)
「知識人とは亡命者にして周辺的存在であり、またアマチュアであり、さらには権力に対して真実を語ろうとする言葉の使い手である。」著者独自の知識人論を縦横に語った講演。