リマークとは、日頃の思索の覚え書き程度の意味。詩か散文を思わせる構成で、日記調に日々のリマークがつづられる。テーマは「存在への問いかけ」。キーワードは、物質、存在、無、生と死、記憶、脳、認識、宇宙など。登場人物は、プラトン、デカルト、カント、ヴィトゲンシュタイン、バシュラールらである。この詩人哲学者は、イデアとロゴスへの問いかけから始める。そして、「分からないことが快なのである」と何度もつぶやく。わからないことにいら立ちを覚えてきたものは、ここではっと気づく。
「SeP.1998 08 いかなる問題もない/と感じられる/わからない/ということは、いかなる問題でもない//不可解は法悦に似ている//人間の知性が理解することが、いかほどの理解であり得るか(中略)//ぜんぜん、わからない/それもまた、善き哉」といった具合である。見かけは柔であるが、中身は相当に硬派である。
あとがきに、「リマーク」と名付けた認識メモを、学生の頃より某は書き付けていた。しかし、文筆を職業として文章を公にするようになると同時に、その習慣はパタッと止んだ。考えることそのものの側から、それをかくことの側へと、重心が移動したのである、と告白する。よって、本書は某の「考えることそのもの」の中身を読者にさらけ出そうとした意図があるものの、その時点ですでに作為に満ちたものになっているという矛盾をはらんでいる。が、おもしろく読めるし、アカデミアに安住する哲学者にはない迫力を感ぜずにはいられない。(澤田哲生)
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