おかげで拉致問題についてはかなり輪郭がつかめてきたように思うが、それでも北朝鮮はわれわれにとって何が何やら訳の分からない国である。そんな北朝鮮について、拉致問題以外でわが国と重大な関わりのある3つの問題、すなわち核開発、韓国への南進、日本国内での「朝銀(朝銀信用組合)破綻」を要領よく論じた本が出た。
『テロ国家・北朝鮮に騙だまされるな』の著者は「現代コリア」誌の編集長として、韓国・北朝鮮事情に広くかつ深く通じているだけでなく、自ら拉致被害者救出運動に身を投じたバイタリティーにあふれる活動家でもある。
拉致事件が国民的関心事となった今、著者はあえて、日朝間にほかにも深刻な問題があることについて、国民の認識を促す必要を感じたのだろう。
米ブッシュ大統領が北朝鮮を「悪の枢軸」と断じたのは、ジュネーブ米朝合意に違反して核開発を続けている証拠を握ったからである。既に原爆に使うプルトニウムを保有し、ノドンの実用化に続いて大陸間弾道弾テポドンを開発中である。ミサイルに搭載する核弾頭も、既に開発を終えたらしい。北朝鮮は国土が狭く核実験ができないので、ミサイル技術が欲しい核保有国パキスタンと協力関係を結び、パキスタン領内で実験を行って実験データを手にしたようでもある。
1990年代は、わが国では失われた10年と言われたが、北朝鮮では核開発の10年であったわけだ。国民を飢えさせながら核開発を続ける国を近隣に持つのである。危険このうえないことだ。
著者はまた、北朝鮮が韓国に向けて地下に何本もトンネルを掘っている可能性があること、さらに北側の工作員が韓国の中枢にまで触手を伸ばしている恐れがあると指摘する。韓朝間の平和が案外脆いものかもしれないと考えると、ぞっとする思いである。
さらに、わが国が国内金融政策として朝銀の破綻に公的資金をつぎ込むことは、朝銀の北朝鮮に対する資金援助を穴埋めする結果にならないかという指摘がある。国内金融のシステミックリスク対策と北朝鮮問題は別のこととは思うが、言われてみればちょっと引っかかりを感じないこともない。
北朝鮮問題について一歩進んだ知識を持ちたい読者には、見逃せない1冊である。
( 尾崎 護)
(日経ビジネス 2002/12/09 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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